実際に診療を行う中で、様々なご質問をお受けしており、回答を行っています。
実際お受けした質問など、よくお聞きするご質問と回答を、項目ごとにまとめています。
以下の質問項目について、タップ(もしくはクリック)していただきますと、回答が出てきます。
落ち込む、眠れない、急に不安になるなど、こころの症状は様々です。また、「仮面うつ病」や「自律神経失調症」のように、むしろからだの症状が強く出ることもあります。こころの不調がある時、からだの不調があるが、ストレスが影響したり、内科などで異常が見られないときは、ご受診いただけるかと思います。
現在のところ当院では中学生以上の方を対象としています。小学生以下の方は、専門の治療機関の受診を、ご検討いただければと思います。
平日に関しては、枠が満員でない限り、当日受診が可能です。(なお、土曜の枠は限られており、なるべく平日の受診をお願いいたします)空き状況など、まずはお電話もしくはメールでのご相談をお願いいたします。
当院では、大人の発達障害(ADHDなど)についての診察が行えます。診察等を行って診断を行い、必要時には薬の治療等をご相談させていただきます。
中学生以上の方について、診察を行うことが可能です。(ただし、心理検査は、関連機関の紹介で必要時行う形になります)特に中学生、思春期の時期には、二次障害や不登校のリスクが高まり、症状が目立つことも多いとされるため、可能性が示唆される場合にはご連絡ください。
心療内科は「ストレス・精神的な要因から体の症状が出るご病気への治療」を、精神科は「こころに強く症状が出るご病気への治療」を行います。ただし、「仮面うつ病」では、うつ病だが体の症状が主に出るように、この2つの科の分野は重なるところが多く見られます。当院は心療内科・精神科の双方を標榜しているため、必要に応じ心身両面からのアプローチを行ってまいります。
保険証の持参を必ずお願いいたします。それに加え、各種制度(自立支援医療、ひとり親など)をご利用の際はその受給者証、他の科で薬が出ている場合はそれがわかるもの(お薬手帳など)、他院から紹介の時は可能なら紹介状のご持参をお願いいたします。また、病状などの把握のため、病歴やこれまでの生活歴のメモ等がありますと助かります。(発達障害の診察の時には、通知表など、幼少期の客観的な様子がわかるものがあればお願いいたします)
当院には、エレベーターでご来院でき、車いすの方用のトイレもあるため、ご来院いただける状態にあります。
可能です。受診の際に、医療券をご持参ください。医療券がない場合は、代わりになるもの(連絡書、医療要否意見書、受給証(緊急時のみ))をご持参ください。こうしたものがない場合は、受診のために市町村への確認が必要になります。
可能です。受診の際に、保険証のほか、受給者証をご持参ください。この制度では、受診する医療機関と薬局の指定が必要です。他院から当院に受診変更される場合は、通院する医療機関の変更を、市町村の窓口で行ってください。
診察に関しては、初診時2300円ほど、再診時1500円ほどが予想されます。ただし、血液検査や診断書等は別料金となり、処方せんが出た場合は、処方に関して、薬局でのご負担が生じます。
本来は、スムーズな引継ぎのためにあることが望まれますが、諸事情で困難の場合は必須ではありません。ただし、薬の引き継ぎは非常に重要なので、飲んでいるお薬が客観的にわかるもの(お薬手帳等)は必ずご持参をお願いします。
初診の場合は診察時間は約30分(スタッフのご相談がある場合は約50-60分)になります。再診の時は病状にもよりますが5-10分が想定されます。
まず、専門のスタッフが、これまでの状況などにつきお聞きいたします(予診)。そのうえで、医師の診察に入ります。医師の診察では、予診の内容をもとに、より診断に結びつく情報をお聞きしつつ、客観的な状態なども観察していきます。そのうえで、現段階での見立て(どういった状態かなど)につきお伝えし、必要な治療法についてご提案します。(なお、初回で診断が確定する場合もありますが、診断まで数回かかる場合もあります)そのうえで、継続しての治療が必要かの見立てをお伝えし、必要な場合は次回の予約を取り、終了します。
当院では、月・水・金曜日は19:30まで診察、土曜日も17:00まで診察しています。特に再診のときは、そういった時間も含めて、ご検討いただければと思います。
基本的には、診断はアメリカの診断基準である「DSM-5」をもとにして行っていきます。ただし、同じ診断基準を満たす症状であっても、その人の性格傾向や環境など、さまざまな要素が、その人ごとに違います。診断基準を基にしつつも、その人にまつわる個性を総合的に考慮して、その人ごとの治療計画を立てていきます。
また、時にからだの病気が原因で診断基準を満たす症状が続く場合もあるため、必要時は血液検査等を行い、からだの病気の除外を行うことがあります。
たとえば、肝臓の不調でだるさ(倦怠感)がでる、低血糖で不安感が強くなるなど、体の病気で、こころの不調と同様の症状が出ることがあります。特に、甲状腺という臓器のホルモンの不調で、精神不調の症状が出ることを経験します。そのため、必要時は血液検査を当院で行ったり、提携医療機関で画像検査などを行うことで、体の不調の有無を確認、除外することがあります。
一方で、一見からだの病気と思えるようなからだの症状(頭痛、耳鳴、胃痛など)の背景に、こころの病気が隠れている場合があります。からだの症状が続くが、いくら検査しても異常が出ない場合は、こころの不調の可能性を想定することになります。
当院では、初診の時などに、基本的な記憶の検査をすることが可能です。その検査と、これまでの情報を総合して、診断を組み立てていきます。より精密な検査が必要な時は、提携医療機関で画像検査などを行うことが可能です。
精神療法と、薬物療法が2本の柱です。
精神療法というと、以前は精神分析のような、個人の内面や無意識に焦点をあてた治療を指していましたが、現代においては、認知行動療法のような、現在の行動や思考のパターンに焦点をあてたものや、職場との環境調整やケアシステム環境の構築など、こころの改善を目的とした、周囲への介入も含めた継続的・総合的な介入全般を指すといえると思われます。
薬物療法では、こころに効く薬での治療を行います。脳の不調を直接整える薬、緊張を緩和して、間接的に休養をもたらし改善を図る薬など、さまざまな薬があります。
精神療法と薬物療法はとかく「どちらが優れているか」「どちらが正しいか」といった文脈で比較されることがありますが、当院としては、この2つは対立するものではなく、必要に応じ組み合わせ、補い合ってより患者さんに効果を出していけるものと考えています。
「場合による」というのが答えになるかと思います。認知行動療法は、その人の今の考え方や行動のパターンを見直し改善することから、こころの不調の改善を図る方法です。副作用は少なく、適用できる範囲も広いことが長所で、軽症の方の治療や、うつ病などの再燃予防には特に有効です。
一方で、地道な取り組みの継続が要点のため、すぐの強い効果は望みにくく、症状が強い時や(統合失調症など)脳の不調への薬の介入が必要な時は、認知行動療法のみでの治療は望ましくないことがあります。
なお、認知行動療法と薬物療法は対立するものではなく、薬物療法で土台を整えてから認知行動療法的なアプローチを必要時行うと、相乗的な効果が期待できることが多いと考えます。
当院は入院設備を持たない無床診療所のため、当院への休養入院は行えません。入院が必要な状態と判断した場合は、提携している病院との連携を図っていきます。(ただし、提携先のベッド状態に依存する面があるため、期間がかかることがあります。入院を要する状態になる危険の高い方は、入院のバックアップ体制のある病院の受診をお勧めいたします)
①こころの不調のため、自分や他者を傷つける恐れが強い場合
②食事がとれない状態が続くなど、家では健康の確保が困難な場合
③家では休養や服薬ができず、外来環境での治療が困難な場合
などが、入院環境での治療が望まれるケースです。
なお、パーソナリティ障害などによって、反復して健康の確保が難しくなる状態の場合は、不調時のバックアップ体制が重要になるため、入院での緊急対処が行える病院での治療が望ましいと思われます。
①現在、入院治療が必要な状態の場合
②今後、入院治療が必要になる可能性が高い場合
③情動不安定など、不調時の入院での緊急対応が必要な場合
などに関しては、安定した治療継続・改善のため、病院での治療が望まれます。
うつ病をはじめとしたこころの不調には、まずは休養を確保して、ストレスを減らすことがしばしば重要になります。その方法としてしばしば休職が必要になります。
診断書の作成やその後の計画的な療養・リハビリ、傷病手当の書類の作成など、総合的な対応が必要ですが、当院での対応が可能です。
また、休職の際は、確実な回復と(復帰後再発しないための)リハビリが重要ですが、当院では外来診察のほか、リワークプログラム(こころリワーク)を行っており、リハビリ、再燃予防も含めた総合的な対策を取ることができると考えます。
はい。当院では、リワークプログラム(こころリワーク)を行っています。継続的に参加することで「生活・勤務と類似のリズムや活動の練習」「再燃予防のためのストレス対処技術の獲得」「似た悩みの方と交流することでの、客観的な病状や対策の把握」などを模索することができるのではないかと存じます。
うつ病等で休職・退職された方が仕事に復帰するための集団で行うリハビリのプログラムです。当院では1日3時間、最大週5回で行います。集団で、特にストレス対処などに特化した活動を行うことにより、復帰のための活動の準備をするとともに、復帰後のストレス対処の方法論の獲得を図ります。「安定した状態での復職」のほか、「再燃リスクの減少」「ストレス耐性の改善」などを合わせて目標とします。
当院の「こころリワーク」では、特に次の2つに重点を置いています。
①復帰後にも生きる「ストレスマネジメント」の習得
リワークプログラムにおいて、活動を増やすなど「復帰準備性」を整えることはもちろん重要です。一方、当院でもう一つ大事と考えるのは「復帰後の再燃予防」そのための技術としての「ストレス対処技術」の獲得です。集団認知行動療法やストレスマネジメントなど、復帰後の社会場面で「以下にストレスにうまく対処するか」その技術を学ぶための心理プログラムを重視しています。
②速やかなリワークへの導入
リワークプログラムでは、時間をかけて集中的に心理・身体的なリハビリを行うことができ、有効性の高さを実感するところです。一方で、リワークを勧められてから、事前検査等で長期間の「待機期間」が生じ、結果として復帰に時間がかかっているケースも見てきました。
その点を踏まえ、当院通院中の方に関しては、治療初期からリワーク導入を想定した見立てを行い、スムーズに(待機期間短く)参加開始できることを重視しています。
状態によって、続けての治療が必要かは決まってきます。初診の段階で、継続的な治療が必要かをまず判断し、提案させていただきます。そして継続の場合は、治療の結果十分改善があったときに、どのようなタイミングで治療終了を予定するか、検討していきます。
状態等によって個人差がありますが、治療初期は、こまめな状態観察と介入を要するため、1-2週ごとの通院が必要になることが多いです。状態が安定してきたら、次第に治療間隔が伸び、3-4週ごとの通院になっていきます。
引っ越しを行う場合は、引っ越し先での通院引継ぎが必要になります。その場合、スムーズな引継ぎのために、診療情報提供書を準備いたします。(円滑な引継ぎのため、通院先の事前の決定が必要になります。ご理解のほどお願いいたします)
薬を使わずに、精神療法等で治療を継続することは可能です。また、いわゆる「西洋薬」ではなく、漢方薬を使用していくことも可能です。ただし、状態によっては、しっかりと薬物療法を行った方が、状態の改善が見込める場合もあるため、その場合は、こちらから、薬物療法のご提案を行うことがあります。
状態・病名に応じて、様々な薬がありますが、診療所において処方することが多いのが、抗うつ薬と抗不安薬、睡眠薬です。抗うつ薬は、うつ病のほか、パニック障害や社会不安障害などに用いられます。効果が出るまで2-3週かかりますが、継続することで徐々に効果が出てきます。
一方で、抗不安薬や睡眠薬は、使用してすぐ効果がでますが、抗うつ薬のように脳の状態そのものには作用しない「対症療法」であり、長期使用の際の依存に注意を払うことが必要です。
薬によって、相性はありますが副作用が出る場合があります。具体的には、抗うつ薬では初期におなかの不調(吐き気など)が、抗不安薬では眠気などが出ることがあります。当院では、必要最小限の処方を心がけていきつつ、必要な薬に関してはメリット・デメリットをご提案・ご同意を確認のうえ、開始していきます。
抗不安薬などの「依存」の問題を心配されてのことと思います。確かに、漫然と長期使用すると依存のリスクがありますが、必要性を認識の上、必要最低限使用することで、リスクをなるべく減らすことができると考えます。また、不安場面への脱感作など、薬以外の方法論も並行していくことにより、減薬を図ることが行いやすくなると考えます。
抗うつ薬は、その性質上、徐々に増減して慣らしていくことが重要で、急にやめると「離脱症状」が出現することがあります。これが、他の薬への「依存」と同じ文脈で語られてしまうことがあります。ただ、この二つには違いがあります。
離脱症状はあくまで「体の反応」であり、「精神的な依存」を伴いません。そのため、(個人差はありますが)ゆっくり、計画的に減薬することで、多くの場合やめていくことが可能です。たとえばパニック障害などでは、不安に慣らすことを繰り返して薬の必要性を減らしてから減薬・中止していきます。
妊娠中に薬を使っている場合、一定の影響の可能性が示唆されています。(これは、こころの薬のみならず、高血圧の薬などでも同様です)特にてんかんや躁うつ病で使う薬については(リチウム・バルプロ酸など)リスクが高いとされ、特に慎重な判断が必要です。
そのため、可能な限り、漢方薬など、リスクが少ないとされる処方をまずはお勧めします。ただし、状態によっては、薬の必要性が、リスクを上回る場合もあります。その際は、服用のリスク・ベネフィットをご説明の上、ご相談させていただきたく思います。
最近、特に高齢者の方での多剤併用のリスクのことが、注目されています。どうしても加齢に伴って様々な不調が出るため結果として薬が増えますが、増えすぎると今度は副作用や相互作用で不調になるリスクが増えてしまいます。
こうした方については、なおのこと慎重に、最低限の処方を心がけています。必要性が高い場合のみ、最小限使用の方針です。内科等で処方を受けている方はお薬手帳等をご持参いただければと思います。その処方状況も参考にして、治療計画を立ててまいります。
主にうつ状態(うつ病・適応障害)で休職もしくは退職された方が対象になります。うつ状態は、治療等で改善・復帰することも重要ですが、復帰後再燃せずに仕事を継続することもまた重要です。復帰後安定して仕事を継続できる「復帰準備性」を整えつつ、復帰後の「ストレス対処能力」を高め、より安定した状態での復帰後の仕事継続を目指します。
(なお、期間は2-4か月が目安のため、退職後、より長期のリハビリが必要な時は、「就労移行支援事業所」のご利用をお勧めします。)
「精神科デイケア」の枠組みにて、1日約6時間(9時―15時半)、週5回で行っています。慣れてくれば週5回の利用が望まれますが、はじめは、少な目の回数から慣らすことも可能です。ご相談ください。
初期は安定して慣らすため週2-3回ほどから始めることが多いですが、慣れてきたら、復帰準備性の改善のため、週5回の利用をお勧めします。
デイケアの場合、1回あたり、3割負担ですとおよそ2200円、自立支援利用(1割負担)ですとおよそ710円になります。
様々な効果が期待できると考えますが、代表的なものは以下の3つになります。
①仕事に近い活動を継続的に行い、「復帰準備性」を高める
治療初期は休養が重要ですが、仕事復帰のためには、段階的に負荷を高めて慣らしていき、仕事の負荷に耐えられる状態を作る必要があります。(いわゆる「復帰準備性」)朝に来院して、日中活動する習慣をつけることで、仕事類似の負荷に慣らし、復帰準備性を高めていきます。
②ストレス対処技術を習得し、再燃リスク減少を図る
うつ状態の発症・悪化・再燃には、ストレスが大きく関与します。そのため、特に復帰後、「ストレスにうまく対処する技術」は非常に重要になります。当院では、集団認知行動療法や対人技能訓練、ストレスマネジメントなど、復帰後のストレスへの対処技術を、様々な角度から学習していき、対処技術習得から、再燃リスク減少を図ります。
③似た悩みを持つ人と困難を共有する
うつ状態になった場合、ご家族も含め、なかなか身近に悩みを共有しにくく「わかってもらえない」孤独感から、葛藤が強まることは少なくありません。リワークでは、同様の不調、悩みからリハビリを図る方が複数来られており、その悩みを共有したり、他の人の対処法をヒントにすることができることがあります。
確かに、ご自身で、図書館など、段階的に負荷を増やして行っていくのも選択肢になります。ただし、自力だけで、本調子ではない中で計画も含め行っていくことは負担が大きく、その点、枠組みがリワークで決まっていれば、継続しやすい面があろうと思います。
また、「ストレス対処技術獲得」「悩みの共有」に関しては、リワークだからこそ行える面があろうかと思います。
リワーク継続の中で、活動、精神状態を確認しています。その状態と会社等の状況を踏まえ、当院ではフォローアップ面談をスタッフが行い、復帰までのプランをご相談していくことになろうかと思います。
可能です。特にご本人が不調で、状態などを話しにくい状態にある場合や、未成年で、ご本人では話すことが難しい場合などは、なるべく同伴いただくことをお勧めします。一方、安定してくれば、ご本人のみで大丈夫な場合が多いです。
うつ病などこころの不調は、早期診断・早期対応が非常に重要です。一方で、以前よりは敷居が低くなったとはいえ、心療内科受診には葛藤がある方も多いかと思います。
しかし、昨今では原則全労働者で「ストレスチェック」が義務になったように、こころの健康は、生活習慣病同様、多くの方が気を使うテーマになってきています。まずは「こころの健康をチェックする」といった意味合いで、受診を勧められてはいかがでしょうか。
特にシニア世代の方ですと、心療内科と聞くと、以前の「精神病院」(長期入院、重症など)のイメージが強いことも時にあるようです。一方で、心身一如という言葉もあるように、こころとからだの症状は強く連動しています。「こころとからだの健康をチェックする」といった意味合いで、受診を勧められてはいかがでしょうか?
うつ病の治療では「休養」が非常に重要で、これは「頭を休ませる」ことを意味します。そのため、ご家族としては「ご本人が安心して頭を休ませられる」環境づくりが重要です。具体的には「気を使わせない」「心理的負担をかけない」関わりが重要です。
腫れ物に触るような形だとかえってご本人が気を使ってしまいますし、「頑張れ」等はげますことは不調時には心理的負担になります。普段とあまり変わらず、ただしプレッシャーはかけない環境を心がけ、本人が話したいときにしっかり聞ける状態を作ることが重要と考えます。
急性期(初期の強い不調)の時期は、なるべくリラックスして休養してもらうことが重要です。一方で、十分休養が終わり、安定はしたけども意欲、活動が戻らない場合に関しては、(無理がかからない範囲で)活動・リハビリを促した方が効果的な場合があります。(いわゆる「行動活性化」)
その場合は、負担をかけない範囲で「はげます」ことにもなろうかと思います。ただし、この部分は、本人の状態や特性等によって取るべき対応も変わってきますので、診察の中でご相談できればと思います。
守秘義務の観点から、必ず、ご本人の同意が必要になります。ご理解のほど、よろしくお願いします。
守秘義務の観点から、必ず、ご本人の同意が必要になります。ご理解のほど、よろしくお願いします。
まず、うつ病と言っても、「ストレス反応」の特徴が強いものから「脳の不調」が強いものまで、個人差が大きいところがあります。そして、これが明確な原因とまでは、決まってはいない状況です。ただし、次の2つが、原因を考えるうえで重要です。
①ストレスの影響
心理的側面から考えると、ストレスの影響が色濃いことが特徴です。うつ病・適応障害とも、ストレスが発症の誘因にも、悪化要因にもなり、休養(ストレスを減らす事)が改善の糸口になります。
②脳内物質(セロトニン)の不足
脳科学的な視点では、うつ状態の際に、セロトニンという脳内物質の不足が関連することが示唆されています。その観点から、「脳内のセロトニンを増やす薬」が抗うつ薬として使用されています。
関係は「非常に強い」と考えます。発症・悪化・再燃にストレスが強く影響しますし、改善のための基本は、ストレスを減らす「休養」です。そのため、治療・リハビリの際にも、「ストレスへの対策」が大事です。
ストレスを減らすための環境調整(必要時に職場や部署を変えるなど)、ストレス対処技術の習得(リワーク等)が、具体的には重要になります。
うつ病の定義上「2週以上持続する」となるため、うつ病には該当せず、仕事のストレスに反応しての「適応障害」になります。ただし、「1か月連続してのプロジェクト」など、持続するストレスで2週以上うつ症状が続いた場合は定義上「うつ病」になります。(ただし、ストレスの関与が大きく、対応は適応障害への対応に準じます)
この例にもあるように、診断も重要ですが、その人の状況を総合的に見て対策を判断することも、同様に重要と考えます。
以前のうつ病の方は「落ち込みがずっと続く」「まったく眠れなくなる」などの特徴があるとされてきましたが、最近のうつ病の方の中に「時間や環境で大きく状態が変わる」「むしろ過眠になる」など、違った症状の性質をもつ方が出てきています。これを総称して「新型うつ病」といいますが、専門家により意見がやや異なる面があります。
大まかにいうと、これまでのうつ病より「適応障害(ストレス反応)」の要素が強い方と言えるかと思います。そのため対策も、環境調整やストレスマネジメントといったより「適応障害の治療」的な対策が重要になると考えます。
うつ病の悪化と改善のキーワードは「ストレス」です。そして、(無理して)仕事を続けることは大きなストレスになり、うつ病の悪化につながります。そのため、(生活等を抜きにして)病状改善を図るためには、休職がしばしば適応になります。
ただし、生活状況等で休職が行いにくい場合もあり、また、業務負荷の軽減など、もう少し軽い対策でも改善を図れる状態の場合もあるため、病状と環境要素などを総合して、休職するかについて判断することになります。
適応障害の場合は、ストレスへの対策、具体的には環境調整とストレスマネジメントがまず重要です。そのため薬は絶対的な適応ではありません。ただし、ストレスマネジメントはすぐに習得することが難しいため、環境調整が重要でもそれを行えない場合は、「下支え」として、薬物療法を行うことが望ましいことがあります。
また、重度の不眠や不安など、治療に明らかに悪影響となる要素が強い場合は、その対策として薬物療法を行う場合があります。
(脳の不調が大きい)「うつ病」の場合、「必ず」とは言えませんが、抗うつ薬を用いたほうがいい場合が多いと考えます。休養など、他の方法のみでも改善を図れる可能性がありますが、(薬を使うより)かなり長期間を要することがありうること、また再燃予防の点で弱点があることより、抗うつ薬の使用を勧める場合が多いです。
なお、抗不安薬や睡眠薬は、必要な場合のみ、最小限用いる方向です。
抗うつ薬は、継続することで効果が出るほか、再燃予防の役割があります。そのため、減薬や中止は、十分安定した期間を経て行うことが望ましいとされます。特に2週間の安定だと、まだ十分改善しているか不明な点もありますので、自己中断は危険があるため、まずは担当医へのご相談をお勧めします。
初期は休養、中期以降は段階的なリハビリが重要です。
休職初期は、まずストレスを最小にするため休養に専念することが重要です。この時期は、だるさが目立ち動きにくかったり、過眠になることもありますが、それはあまり気にせず、休養に専念してください。考えすぎてしまうことが要注意です。その場合は、気分転換を行うなどして、再度「考えないで休養する」状態に戻してください。
中期以降は、段階的なリハビリが重要になります。まずは散歩をするなど、「体を動かす」リハビリから、徐々に行うことがいいでしょう。「少し疲れる」を目安に、徐々に負荷を増やしていきます。活動が戻ってきたら、しだいに読書など「頭を使う」作業も取り入れていきます。ここで十分な準備ができてから、後期には通勤練習や職場との面談など、復帰に必要な作業を取り入れていきます。
なお、リワークプログラムでは、中期以降の活動につき、段階的に行えるようになっているため、それを利用するのも一つの方法になります。
「リワーク」とは、復職のために、一定時間通所して活動を行うリハビリのプログラムです。これを継続して行い、慣らすことで、仕事のストレスに耐えられる「復帰準備性」獲得を目指します。
また、当院では、プログラム内容として、認知行動療法などのストレス対処技術のプログラムを多く入れることにより、復職後に重要になるストレス対処技術の獲得を図ります。
リワークというと、とかく休職を繰り返す方への「義務」のように扱われることも耳にしますが、当院ではより前向きに、復職を目指す幅広い方に「復帰準備性」と「ストレス対処技術」の双方を獲得するための枠組みとして、リワークを提供させていただければと思います。
抗うつ薬は、治療効果以外に「再燃予防」の役割もあるため、使用しつつ復帰することが望まれます。またほかの薬に関しても、復帰のストレスがかかった時期での減薬は危険が大きいため、まずは使用した状態での復帰を想定します。
一般には、復帰後半年は同じ量で継続し、その後可能なら減薬を図ることが、再燃予防の観点から望ましいとされます。
再燃予防を目標とした、継続的な状態のチェックと必要な助言を行っていきます。もし再燃の兆候があった場合は、そこですぐ対処することで、再燃を防げる場合があります。
半年以上経過し、安定が続く場合は、状況によっては減薬等を徐々に進めていくことになります。初発の場合、状態が許せば、減薬を継続して、最終的には服薬のない状態を目指します。(なお、再燃の場合は、その後の再燃予防のため、服薬を継続した方がいいとの見解があります)
統計により数字は様々ですが、確かに、復職後の際休職率など、再発を示唆する確率は低いとは言えない状態があります。ただし、治療の実感としては、再燃の要素として、急な負荷の増加や薬の自己中断など、「対策すれば防げる」場合も少なくありません。
計画的・継続的に治療を行い、環境の調整を並行しつつストレス対処技術をしっかり獲得することで、再発リスクはだいぶ減らせるとの実感があります。
場合にもよりますが、関連が見られる場合は多くあります。脳梗塞後のうつ病のように、直接の関連が示唆されることもあれば、慢性疾患(リウマチ、糖尿病など)後のうつ病のように、慢性的なストレスとの関係が考えられることもあります。
また、肝臓の不調での倦怠感や、甲状腺の機能の不調からの不安感など、からだの原因により、うつ病類似の状態が引き起こされる場合もあります。
いくつか、示唆される傾向はありますが、確定したものまではない、との見解です。体調不良やストレスはリスクになるとされるので、予防策としては、ストレス対処の方法論を身につけること、および(身体科での治療も含め)なるべく体調を良好に保つことなどが有効と思われます。
調査によっては「対人援助職がなりやすい」「システムエンジニア(SE)がなりやすい」等の結果がありますが、調査によって差があり、一概には言えません。
ただし一般論として「負荷が大きい」こと以外に、「やりがいを感じられない」場合に、強くストレスを自覚する傾向が言われています。そのため、うつ病の予防のために「相性の合う仕事を探すこと」もしくは「仕事の中に、やりがいを見出すこと」は有効であるかもしれません。
うつ病は「早期発見、早期対応」が重要です。重くないうちに対処を行えれば、短期間に、負担の少ない方法で改善を図れる可能性が高くなります。
ここでいう対処法は、薬以外にも、環境の見直しやストレス対処法の模索なども含まれるため、早めに受診して、現状把握と対策を行うことが、重要になるのではと考えます。
うつ病は、第一にご自身が苦しむご病気ですが、他の方との環境にも影響が出てくることがあります。夫婦関係や職場での人間関係に影響したり、仕事内容自体にも影響が出てくることがあります。
早めに受診・治療することで、ご自身のみならず、周囲にも、いい影響がもたらされることがあります。
うつ病の症状の中には、自分では気づきにくく、周囲から、言動の変化などの形で見えてくるものもあります。自覚症状がないから、軽症とは限らない面もあるため、ご家族などとご相談のうえ、受診されると何か今後へのヒントがあるかもしれません。
うつ病と症状に類似点があるこころの病です。症状は似ていますが、うつ病の逆の状態(躁状態と言われ、何でもできるなどと感じ、活動しすぎる)の時期があることが違いです。典型的な躁うつ病は見分けやすいですが、躁状態が軽度の場合は、うつ病と症状がかなり類似するため、見分けにくいことがあります。
一方で、メカニズムについてはうつ病との違いが言われており、うつ病の薬(抗うつ薬)はあまり相性が良くないことが多く、気分安定薬と言われる別の薬が有効とされるため、その区別は重要です。
うつ病と診断を受けて治療をしたが、改善がなかったり不安定になる場合には、躁うつ病の可能性があるとされます。その場合は、医師と相談し、診断について再度検討することがいいでしょう。
うつ病の治療では「休養」が非常に重要で、これは「頭を休ませる」ことを意味します。そのため、ご家族としては「ご本人が安心して頭を休ませられる」環境づくりが重要です。具体的には「気を使わせない」「心理的負担をかけない」関わりが重要です。
腫れ物に触るような形だとかえってご本人が気を使ってしまいますし、「頑張れ」等はげますことは不調時には心理的負担になります。普段とあまり変わらず、ただしプレッシャーはかけない環境を心がけ、本人が話したいときにしっかり聞ける状態を作ることが重要と考えます。
うつ病の中には、精神的な症状よりも、身体的な違和感が目立つ状態の場合があります。(いわゆる「仮面うつ病」)一方で、からだの不調でも、同様の症状は起こるため、どちらが要因かを検討することが必要です。
これらの症状があるが、からだの検査を行っても異常や原因が見当たらない場合は、こころの不調からの症状の可能性が高くなります。心身両面で調べつつ、こころの不調の影響が示唆されれば、その対策を取ることが重要です。
高齢化社会の進行に伴って、介護関連での悩みや落ち込みでのご相談が増えてきました。
介護はその性質上、長期間、成果(達成感)よりも必要性によって継続していきます。被介護者の病状の変化で、負担が次第に増えていく場合もあります。特に負担を抱え込んでしまった場合にストレスが増大し、適応障害やうつ病(介護うつ)に至ることがあります。
まずは必要に応じて介護保険制度などを活用し、負担を抱え込まず分散して、ストレスを減らすことが、不調にいたらず介護を継続するために重要です。しかしそれでも不調をきたしてしまうこともあります。その場合はなるべく早いうちに、ご相談いただければと思います。
「産後うつ」の啓発が、最近進んできています。
出産は多くの場合喜ばしいことですが、出産後数週すると、急に落ち込みなどが生じることがあり、「産後うつ」と言われます。出産後に大きなホルモンバランスの変化があり、その影響が示唆されています。一過性で自然に改善することも多い一方で、長期化したり、悪化が続く場合もあります。重症化する前に、早めの対処が重要と考えます。
もし産後の不調が自然に収まらず、長引きそうな状況があれば、早めにご相談をいただければと思います。
産後のもう一つの不調が、「育児継続に伴ううつ状態」です。こちらは「適応障害」いわばストレス反応の要素が強いものです。どうしてもしばしば育児はお母さんとお子さんの1対1の関係が固定してしまいがちであり、息抜きが難しいこともあり、ストレスが蓄積して、不調をきたす事があります。
まずは、子育て支援センターなど、子育てを支援する機関と相談し、負担をできるだけ分散することで、ストレスを減らし、不調なく継続可能な育児とすることが重要です。しかし対策を取っても、ストレスが勝ってしまうこともあります。その際は、症状が重くなる前に、ご相談をいただければと思います。
「うつ」の治療には、特に初期は休養が非常に大事です。一方、特に不安や「自分を責める気持ち」が強い場合は、自分で自分を追い詰め、なかなか気持ちが休まらないことが少なくありません。
それでもなお「休む」ことが重要です。ここでの「休む」は「頭を休ませる」ことを特に意味しており、いろいろ考えてしまうと、休養の効果は半減してしまいます。
対策は人によって違いますが、よくお勧めする方法は「考え事が出てきたら、他の(すぐできる)気分転換をする」ことになります。考え事が出てくるのは止められませんが、そこから「考え事の悪循環」に陥ることを止めることが目標になります。
なお、上記などの取り組みをしても「休めない」ほど症状が悪い、もしくは休養やくすりの治療を試みても症状の悪化が続く場合は、休養の場所を自宅から病院に変えること(休養入院)が必要になる場合があります。
性格面と、「こころの病」の両面があると思われます。ただし、「ある時期から不安が強くなった」「不安の強さで生活に大きな支障がある」場合は、治療で改善できる可能性もあるため、受診をご検討いただければと思います。
症状自体が「全くなくなる」こともありますが、「一部症状は残るが、改善する」ことが多いと思われます。しかし、それにより生活面の困難は大きく改善する場合もありますので、特に不安により生活に大きな支障がある場合は、受診をご検討いただければと思います。
これは「回避」といい、短期的には症状が出なくなりますが、克服はしておらず、同様の場面で再度不安が出ます。さらに、回避を続けると、似た場面でも強い不安が出ることがあり、次第に生活範囲が狭まってしまう恐れがあります。
生活面の治療としては、この回避の逆の、徐々に慣らす「脱感作」を行っていきます。
治療・克服のための方向性として、不安を感じる状況に、段階的に慣らしていく「系統的脱感作法」を用います。「少しきついが・耐えられる」不安に慣らすことをくりかえし、慣れたら不安の程度を徐々に強め、慣らすことを反復します。
ただし、体調不良などがある時に行うと逆効果になることもあるため、医師等の指導を受けつつ行うことが推奨されます。
不安の原因として、ホルモンを出す「甲状腺」の不調など、体の不調が隠れている場合があります。その場合、対策が変わってくるため、必要時に血液検査を行い、「体の原因が隠れていないこと」を確かめていきます。
不安が続くこと自体非常につらいことですが、さらに、不安があることで、本当はできる体験を「回避」してしまうことが実害になります。不安のために本来やりたいことができなくなったり、不安の範囲が広がり、生活が制限されてしまう場合があります。
一概にそうとも言えない面もあります。たとえば、外出自体に強い不安が生じ、回避すると、いわゆる「ひきこもり」状態になってしまうこともあります。(引きこもりの原因として社会不安症は少なくありません)重症化する前に、早期に対応できると、幸いです。
不安症の方の中には、「薬を服薬すること」「副作用の危険」などにも強い不安が生じ、治療が進みにくい場合があります。薬の服用の有無は、患者さん自身の「選択」でありますが、一方でその選択が、「回避」に影響されてしまうこともあります。
「長期的にいい方向はどちらか」「ご自身がどうなっていきたいか」を判断基準に、ご検討いただけますと幸いです。
一方で抗うつ薬など「すぐ効かない薬(初期には副作用のみ)」も、不安を引き起こすことがあり、即効性をご希望される場合もあります。(しばしばそれは、ベンゾジアゼピン系抗不安薬を意味します)ただしこれは時に、「不安の回避のための判断」であり、ともすると依存につながってしまう恐れがあります。
そのため、医師としても、そうした薬の処方には慎重でありますし(ただし、病状によっては有益性が勝ることも少なくありません)、受診される方にも、そうした薬には慎重であっていただければ幸いです。
不安症は、統合失調症などと違い、必ずしも「くすりの治療が絶対的」ではない面があり、漢方薬治療やカウンセリングも、治療の選択肢になってきます。一方で、カウンセリングに「くすりとは違う全能のもの」的なイメージを持たれる場合もあるようです。
これはこれで、やや偏った面があるかもしれません。費用面の問題があること(改善には一定期間必要)の他、相性もありますし、過去等を振り返ることの心的疲労や、一種の「カウンセリング依存」の状態のリスクも否定はできません。
それらの点を総合し、選択肢の一つとしてカウンセリングをご検討いただけますと幸いです。
近年の脳科学の研究によれば、パニック症も含む不安の発生に関し、うつ病と同様の「セロトニンの不足」等の病態が指摘されています。また、離脱症状への配慮は必要ですが、ベンゾジアゼピン系抗不安薬のような依存性はないとされます。
そのため、近年では、社会不安症など、各種の不安症に抗うつ薬(SSRI)を使用することが多くなっています。
直接の関係はないのですが、発達障害の二次障害として、うつと並び、社会不安を主とした「不安症状」が出現し、生活に影響することが少なくありません。こうした二次障害としての「不安症」に対し、抗うつ薬等が有効の場合があります。
心理学的にいえば「性格」が大きいのですが、脳科学的に見ると「セロトニン不足」等のメカニズムがあります。仮にセロトニン不足等があっても、「緊張するが慣れる」レベルであれば、治療は不要と思われますが、「話し合いに出られない」「人目を常に避ける」等、生活への支障が大きくなっていたなら、治療で改善をはかることが選択肢になります。
程度によると思われます。「個性」で流せる範囲、たとえばやる前は緊張するが実際には大丈夫等であれば治療は不要と思われます。一方で、生活上の困難が大きくなる場合、たとえば、会社に行けない、家から出られないなどがあった場合であれば、治療の必要性が高いと思われます。
不安場面に慣らす「脱感作」が対策の基本になります。これがうまくいく場合は、日常で回避せず慣らすことを繰り返して改善します。
しかし程度が強い場合は、この「脱感作」が自然には機能せず(人前で緊張から倒れ、さらに不安が強まるなど)土台としての薬の治療、診察が必要になるでしょう。
強迫性障害の主な症状として、「強迫観念」の他、戸締りや手洗いなどを繰り返す「確認行為」があります。
これは、前述の「回避」と近い面があり、それを行うと短期的には不安が減って楽になるのですが、次第に慣れてしまい、より回数や強さを出さないと不安が減らなくなります。結果、確認が増えていき、たとえば手洗い1時間など、生活に大きな支障が出現するに至ることがあります。
そのため、生活面の治療としては、脱感作の一種としての「曝露反応妨害法」すなわち、「あえて「確認しない」ことをして、おそう不安に徐々に慣らしていく」ことを継続して行います。
個人差はありますが、強迫性障害の場合、他の不安症と比べ、抗うつ薬など、効果を出すために、高容量(多い薬の量)が必要になることが少なくありません。また、後述の暴露反応妨害法も、一般の脱感作と比べ負担や難易度が高い傾向があると思われ、その土台をしっかり固めるためにも、充分量での薬の治療をお願いすることが多いと思われます。
あえて「確認行為をしない」ことを続ける「曝露反応妨害法」ですが、方向性は明確でわかりやすい一方、やりきることの難しさをしばしば聞きます。確認自体「そうしないと不安に耐えきれないから」行う面があり、なかなか気力等だけでは難しい場合もあります。
対策の1つ目としては、十分効果が出るまで十分な量の抗うつ薬を使い、曝露反応妨害法を実行できるところまで持っていくことがあります。もう一つとしては、心理士等のカウンセリングを活用することもあるかもしれません。カウンセリングでは、曝露反応妨害法について、慣らす課題の把握及び目標設定や、実践の振り返りと助言等を行います。
カウンセリングを受けてすぐ改善するものではないですが、難易度がともすると高い暴露反応妨害法をやり抜くいわば「コーチ」として、相談する方法はあろうかと思われます。
これだけではパニック障害ではありません。「発作を繰り返す」ことが要件になります。特殊な状況など、1回だけ「パニック発作」が起きて、その後は繰り返さない場合も少なくありません。ただし、予期不安が強い場合は、パニック障害の可能性を考えておく必要があるでしょう。
これは「回避」であり、改善でも治療でもありません。時間がたっても、電車に乗る場面で再燃してしまいます。基本的には脱感作など、「慣らしていく方向」での治療・対応が望まれます。ただし、「20時間飛行機に乗る」など、日常的でなく、今後経験しにくい場面であれば、あえて深追いする必要はないこともあるでしょう。
「心身の状態が悪い時」が起こりやすいと思われます。具体的には、ストレスが多い時、睡眠不足の時、体調不良の時、不安や緊張が強い時などがあるでしょう。こうした時は、満員電車など、余り負荷のかかることをしないことが望まれます。(これは「状況管理」であり「回避」ではありません)
うつ病とパニック障害には類似する点があるといわれ、うつ病の治療経過で社会不安やパニック発作を合併することは少なくありません。治療薬はほぼ共通(抗うつ薬)ですが、苦手場面への脱感作を併用することも対策になります。
その可能性が高いと思われます。パニック発作というと、電車などの「閉所」で起こることが多いですが、その他の場面で起きることもあります。夜、家で起きることも少なくありません。
ありえます。自律神経(交感神経)が強い緊張に至ることが続いた場合、立ちくらみや失神に至ることもあります。(電車で失神し救急搬送、からだの原因が否定的で、心療内科を受診、パニック症の診断になることを複数例経験します)
なお、治療が進んでくると、元の不安が減るため、ここまで強い発作が起きることは無くなってきます。
関係は強い可能性があります。内科や救急で「過呼吸症候群」と診断されることがあります。これは、呼吸の面に着目した診断ですが、もし他に強い不安緊張や、動機、めまいなどの他の自律神経症状も合併していれば、パニック発作の可能性が高く、これが繰り返されるなら、パニック障害の可能性が高いと思われます。(ただし、肺の病気などが隠れている可能性も完全には否定できず、必要時は内科の受診をお勧めします)
症状の程度によると思われます。漢方薬を使用し、不安の軽減を図る場合があります。また、脱感作が行える状態であれば、脱感作(+漢方薬)の継続で、十分発作予防を行えることもあります。
一方、脱感作が難しい状態(体調を整えても、すぐ発作が起きてしまうなど)の場合は、やはり抗うつ薬をお勧めすることになると思われます。
充分脱感作が機能している場合であれば、徐々に抗うつ薬を減らし、最終的には中止に持っていける場合は少なくありません。ただし、数か月は原則必要であり、また、減薬のタイミングは、症状が治まってから、しばらくたってからの方が、再燃予防の点からは良いと思われます。
パニック発作に対し、エビデンスが強いのは、やはりSSRIなどの抗うつ薬であり、漢方薬のエビデンスはそれと比べると弱いのが現状です。一方で副作用が少ない点は魅力的であり、予期不安を漢方薬で和らげ、その後脱感作などがうまくいき、発作が起きなくなったケースも経験しています。妊娠中なども含め、「副作用が少ない」ことが優先順位の第一に来る場合には、選択肢になると考えます。
抗不安薬を「頓服」として使う事があります。「お守り」として持っておき、発作が起こりそうなときに使います。一方、この抗不安薬は、即効性はあるのですが、あくまで対症療法(脳のバランスは調整しない)で、かつ依存の問題があります。また、抗不安薬を用いての「脱感作」は効果が半減するとされます。そのため、症状の強さにもよりますが、原則としては頓服は必要時のみ用い、抗うつ薬での治療を優先したいと考えます。
「疲労対策とセットにすること」「体調が悪い時は無理しない」の2つです。
脱感作はうまくいった時も、強い緊張にしばらくさらされるため非常に疲れます。そのため、脱感作後に、しっかり休養を確保し、状態を戻すことが重要です。その後体調が戻ったら脱感作を再度行います。
また、体調不良の時は発作が起きやすく、脱感作の途中で発作が起きる危険が上がります。そのため、体調不良時は無理して脱感作せず、体調が戻ってから脱感作を行うことが重要です。
「不安にさらし、慣らす」治療ですから、負担はかかります。特に症状が重い場合は、発作に至る危険もあり、難しい面があります。その場合は、まず「これなら何とか大丈夫」と思える軽い所から始めること、および土台としての抗うつ薬治療を並行して行うことが対策になると思われます。
「薬なしで、発作が起きないことがしばらく続く」ことを治る定義とするなら、多くの場合治るとの答えになります。ただし、治った後、(一般の人と比べると)再発する確率は高いことはあります。骨折のたとえと似ているので説明すると、骨折しても治療すれば再度つきますが、その場所はやや強度が弱く、再度骨折するリスクが(ほかの場所より)高いのと似ています。そのため、治った後の「再燃予防」が重要です。
「発作リスクの高い状態をなるべく作らない」ことです。
具体的には、特に閉所など苦手な場面に行くときは日頃からの心身の体調管理をしておくこと、体調不良の時は無理しないことです。一度発作が起きても、それだけで必ずしも「再燃」を意味しません。その後しばらく無理をせず、リラックスを心がけ状態を戻すと、その後発作が起きず再度安定が続くことも少なくありません。
それでも繰り返してしまう場合は、速やかに受診し、治療を再開しましょう。その場合でも、合う薬や治療法・予想経過などはすでに分かっているので、速やかに改善しやすいと思われます。
結果として、心療内科になることが多いと思われます。一番多いのが、内科で様々に検査をしても異常ないが、症状は続く場合で、この場合は、心理・ストレス面の影響が強いと推測され(原則、内科的原因は除外され)、心療内科の受診となります。
逆に最近では、他の精神的な症状などもあり、始めから心療内科を受診することもあります。ただしその場合は、内科的原因が隠れている可能性は否定できず、その除外のため、甲状腺疾患の除外など院内でできる血液検査をしたり、必要時は内科等での精密検査をお願いする場合があります。
「自律神経失調症の原因が、うつ病のことが少なくない」との関連性です。内科的要因が否定的な場合、よく状況をお聞きすると、他の精神的な症状やストレス要因があることが少なくないです。いわば「うつ病があり、その症状の一つとして「自律神経失調症の症状がある」」状態です。その場合は、うつ病の一連の治療をすることで、自律神経の症状も改善が期待できます。
学術的には不明な点も多いですが、実際の印象としては「いる」と推測します。
幼少期からストレスに敏感な方(以前でいう「神経症」、最近は「HSP」という言い方をすることもあるようです)は、その分、ストレスに反応して、自律神経的な症状も出やすいと推測されます。また、うつ病や適応障害の症状でも、精神面(落ち込み、無気力など)で出やすい方と、身体面(いわゆる「自律神経失調症」の症状など)の症状で出やすい方がいます。
症状が出やすいことは悪くとらえられがちですが、それをいわば「ストレスのサイン」として活用し、早めにストレス対策などを行える、という見方もできるかもしれません。
基本的には、原因としての「うつ」の治療を優先します。「うつ」の治療がうまく聞いて来れば、症状の一つとしての「自律神経失調症」も改善が見込まれます。なお、自律神経失調症の治療と、適応障害の治療は、「ストレスに着目する」という点で、類似する面が多いように思われます。
(安全なものの中で)ご自身に合うものを行うといいと思われます。「自律神経失調症を改善する」とされる方法を俯瞰すると、おおむね「ストレス対策」「リラックス対策」の方法に集約されるように思われます。ただしこれは一般論で、「ご自身に」合うかはまた別の話です。安全なものであれば、一度実践し、効果を振り返ると、「自分に合うかどうか」が見えてくると思われます。
更年期障害の症状の一つとして、いわば「自律神経失調症」の症状があります。逆の言い方をすると、「自律神経失調症(の症状)」の考えられる原因の1つとして、更年期障害(急激なホルモン変化)があるともいえます。更年期障害が原因の場合も少なくない一方で、実際はまだ更年期障害はないが、症状から「更年期障害では?」と心配される場合もあります。(ストレス等、更年期障害以外の原因でも、「更年期障害のような」自律神経症状群が出てくることがあります)
一つ目は「内科等では治療が難しいため」。内科等では、原因が明確であれば、的確な標準治療を行い、多くの場合改善につなげられますが、自律神経失調症のように原因不明の場合、対策がとりにくいことがあります。
もう一つは「こころの病が原因のことが少なくない」。「自律神経失調症」の原因として、うつ病、適応障害を主とした「こころの病」があることは少なくなく、かつその場合は、その「こころの病」の治療を行うことで、改善を見込める面があります。
あまりいいとは言えない、との意見です。お酒(アルコール)は、睡眠薬(ベンゾジアゼピン系)と類似していますが、一方で睡眠薬のように、睡眠に特化しているわけではありません。そのため、一般的には、充分量を飲めば寝つきはよくなる半面、睡眠の質は逆に悪くなり、また睡眠薬と比べても翌日残ってしまいやすくなります。
たとえば、塾に行くと勉強する気がするなど、場所と感情などが結びつくことは多くあります。不眠が続くと、ベッド→起きている場所とのイメージがついてしまい、さらに眠れない悪循環に至ってしまいます。この場合は、無理にベッドに行く代わりに、眠くなるまではほかの場所で他のことをして、眠くなってからベッドに入ることが有効です。これを繰り返すと、次第に、ベッド→寝る場所とのイメージが付き、自然に寝やすくなるでしょう。
睡眠は、リラックス(自律神経でいう副交感神経)と相性がいいです。そのため、無理に「寝ないといけない」と気負ってしまうと、緊張(交感神経)が強く働き、かえって寝にくくなってしまいます。
半々です。もし、その「気合」が、寝ないといけないという「気負い」につながると、緊張が増すなどして逆効果になってしまいます。一方で、睡眠を改善するための様々な生活面の取り組み(大変なものもあります)を継続する動機づけとしての「気合」は、プラスに働く可能性があります。
原則として、ベッドから出たほうがいいと思われます。寝ない状態でずっとベットにいると、ベット→眠れない、の条件づけになってしまい、今後も寝にくくなってしまう恐れがあります。逆にベッドから出てリラックスしつつ他のことを行い、眠くなったら再度ベッドに戻り、寝るのがコツと思われます。
あまりお勧めしにくいと思われます。昼寝は個人差はありますが、特に午後遅めになると、リズムが乱れ、かえって夜が寝にくくなります。そうすると、夜寝にくい→日中寝ることが次第に習慣になり、戻しにくくなります。対策としては、日中の眠くなる時間に、外出、体を動かすなど工夫して起きておき、夜にしっかり寝る方法があり得ます。
長期的に睡眠が不足することで、集中力の低下、日中の眠気などの症状が出現してきます。また、特にうつ病がある場合は、不眠を合併すると、一気に症状が悪化する恐れがあります。そのため、睡眠を日々確保することはとても重要です。
長期的な不眠の影響が大きい一方で、1日仮に寝られなかったとして、実は1日だけでは致命的な影響までは出ないともいえます。集中困難、体が動きにくいなどは出現しますが、特に慣れている仕事であれば、慣れも活用して、何とかやりくりできる場合もあります。そうした面からも、「仮に1日は眠れなくても何とかなる」ともいえるでしょう。
これは、特に「寝なければいけない」と気負ってしまう方にとって重要です。前述のように、「仮に1日なら眠れなくても何とかなる」と思えると、プレッシャーと緊張が和らぎ、結果として逆に眠りやすくなるでしょう。
ここ最近では、「オレキシン受容体阻害薬」など、作用のメカニズムが違うため、今までの睡眠薬のような依存性が目立たない薬が使用できるようになりました。「依存性の少なさ」を重視する際には、医師にその点をご相談ください。ただし、薬との相性もあり、不眠の種類や、他の症状などへの影響を考えると、一般の睡眠薬が適切とされる場合もあり得るでしょう。
うつ病の症状の一つとして「不眠」がありますし、「不眠が続く」ことが、うつ病発症・悪化の引き金になることもあり得ます。特に、うつ病において、不眠が持続すると、症状悪化の強いリスクになります。その場合は、うつ病自体の治療と併行して、不眠への対策をしっかり行うことが望まれます。
可能性はありますが、断言はできません。もの忘れは、認知症の主な症状の一つです。一方で、脳や体の病気や薬の副作用など、他の要因でももの忘れが発生することがあります。診察の際は採血や、専門医療機関での画像検査などを行い、できる範囲で、他の原因が隠れていないかを見ていきます。
可能性はありますが、違う可能性もあります。認知症と似た症状が出る病気の一つに「うつ病」があります。うつ病の症状で集中力、記憶力などが低下し、あたかも認知症の症状があるかのように見える事があります。特に今回のようなつらい出来事の後では、うつ病が発生しやすいこともあり、しっかり見分ける必要があります。診察の中で、こうした点も見ていきます。
認知症の病態は、大きく言うと、「脳の老化」と「脳及び血管の病変」の2つに分けられます。高齢者では前者が、若年性の方では後者の要素が、一般的には強いといえるでしょう。近年の報告では、前者の要素として「運動不足」「孤立」、後者の要素として「高血圧」「糖尿病」「喫煙」などが挙げられています。
明確な予防法に関しては、まだ確立されていないのが実情です。ただし、認知症を「脳の老化」「脳及び血管の病変」とみるならば、そこに対応する方法を取ることには、一定の有効性が推測されるでしょう。
「脳の老化」を防ぐには、日頃から運動し、会話も含め頭を使うことが有効になりえるでしょうし、「脳及び血管の病変」を防ぐ意味では、いわゆる「生活習慣病の予防」そのための運動、食事等の対策が意味を持つと思われます。
「脳の老化」を防ぐ方法として、「頭を使う」ことには一定の有効性が示唆され、その一つとして「脳トレ」が挙げられています。その意味では有効と思われるのですが、あくまで「対策の取り組みの一つ」であり、それだけをすれば防げるとは考えにくいと思われます。また、脳トレという方法でなくても、日頃から頭を使う事、対人交流や運動を行う習慣も、「頭を使う」意味では有効性が推測されます。
受診の意義としては「診断と治療」「体の原因の除外」がまず上がりますが、もう一つの意義として、「介護保険の活用」があると思われます。
認知症では様々な症状が出現し、そのケアを継続するために介護保険サービスは非常に重要です。ですが、その導入のためには「主治医の意見書」が必要であり、特に普段かかりつけ医がいない場合は、どうしても医師の受診が必要になります。経験として、かなり進んだ認知症の方で、受診、介護サービスとも導入されておらず、家族の方が疲弊されているケー スも拝見してきました。これはご本人、ご家族双方にとって非常につらいことです。
お互いが納得・継続できる療養の実現のためにも、見立て、方向性、介護体制を整えるため、早期に受診をされることをお勧めいたします。
まず第一歩として、「(住んでいる)市長村の窓口に行き、申し込む(申請する)」ことが必要です。どんなに重症で、手厚い介護が必要な方でも、申請しないと介護保険サービスは利用できません。
申請後は、書類の提出や家への訪問調査などが行われますが、その際に「主治医の診断書」が必要になります。かかりつけ医がいれば書いてもらえると思われますが、もしいない場合(未受診)は、何らかの形で「医師の診察」を受ける必要が出てきます。
これらの準備を経て会議により要介護度が決まり、手続き等を経て、介護サービスの利用が始まります。
もちろん、その人によって、合ったサービスやその組み合わせは異なってくるのが前提ですが、「デイサービス」に、週3回など定期的に通所できると、受けられるケアの量、日中活動や生活リズムの安定化、介護者の介護負荷の軽減など、多くの効果が出る場合が多いように思われます。また、介護者(ご家族)の疲弊を防ぐ意味では、「ショートステイ(短期入所)」が有効な場合があります。
介護保険の目的として「家族(介護者)に、過度の負担を負わせない」ことも含まれているとされており、通所系(デイサービスなど)、短期入所(ショートステイなど)は、同居家族がいても活用することができます。ただし、訪問介護などの「生活援助」と言われるサービスに関しては、原則として利用できないとされています。
基本的には、認知症の薬の作用は認知症の「進行を遅らせる」ことであり、改善したり、治したりするものではありません。そのうえで、病状の進行、症状の変化に合わせて、治療・及び介護サービス等を調整していくことになります。
ただし、うつ病や甲状腺の不調など「認知症に似た別の原因」があってのもの忘れ等の症状に関しては、それらの病気の治療により改善することがあります。
少なからぬ場合で、有効な場合があります。まず、漢方薬の抑肝散が、不安やイライラ等に効果がある場合があり、副作用も少ないため、しばしば用いられます。それでも収まらない興奮などに、少量の抗精神病薬等を用いると、改善が見られる場合があります。ただし、漢方薬よりも副作用や体への負担が大きいため、慎重に、少量から用いる必要があります。また、徘徊など、薬が効きにくいことが多い周辺症状もあります。
徘徊は、場合によっては事故や生命の危険のリスクも伴うため、対策が重要な周辺症状です。一方で、薬があまり効果が出ないことも多く、対策に苦慮することも少なくありません。
環境やストレスの影響がある場合があり、一部の方は、薬の治療でよくなる場合があります。また、デイサービスの活用や生活リズム改善など、環境・生活を整えることで改善する場合もあります。しかし一方でこれらが無効の場合もあり、安全確保のためにGPS装置などを用いる選択肢もあります。
ただし、これらの対策を行っても安全確保が難しい場合も残念ながらあり、その場合、安全を確保できる施設や病院に入ることも選択肢になるでしょう。
認知症が進行していくと、その分必要な介護ケアが増えてくるため、疲弊しやすくなる面があります。一方その場合は、要介護度が上がることも意味するため、介護サービスを拡大、見直しすることで、疲弊を防げないかを模索していきます。
また、興奮、暴力などの周辺症状がひどくなった場合は、「周辺症状の改善」を目的に、一時的に病院に入院し、改善後家に戻る選択肢もあります。
介護は長期戦です。その継続のためには、介護する人が「介護を続けられる」ことが何より重要です。しかし、ゴールの見えにくい介護に長期間従事した結果、一種の「燃え尽き」の状態となり、精神医学でいうところの「適応障害(ストレス反応)」「うつ病(脳の不調)」に陥ってしまうことがあります。
それを防ぐために、早期から介護サービスを適切に活用し、過度な負荷を防ぐ事が重要ですが、もし「燃え尽き」の状態になってしまった場合は、重症化を防ぐために、介護する人自信が心療内科を受診し、病状に対応した治療を受けることが望ましい場合があります。
原則として、介護サービスを病状や生活状況に応じて調整していき、介護の継続を図ります。しかし、どうしても限界が来てしまう場合もあります。その場合は、お互いの幸せのために、施設への入所を検討することもあるでしょう。
可能性はありますが、必ずしもそうではありません。「気分の波」といった時、ストレスに敏感(神経症圏、ADHDなど)なことにともなう気分変動など、一見すると躁うつ病と似た症状経過を取る場合があります。この点は診察において病歴等をお聞きする中で、見分けていくことになります。
月経前症候群(PMS)の方の中に、月経前に、落ち込み、イライラなどの気分変動が起こり、それが生理周期ごとに反復する方がいらっしゃいます。一方で、生理周期での変動以外にも、抑うつ、躁(もしくは軽躁)の波が見られ、躁うつ病の診断がつく方もいらっしゃいます。この点も、診察において病歴等をお聞きする中で、見分けていくことになります。
確かに、躁状態の方が、ストレスを契機にうつ状態に移行することもありますが、一方で、ストレスへの反応で一過性に落ち込みが出ているだけ(躁うつ病ではない)場合もあります。診察の中で、他の視点からの情報を多面的に集めていく中で、総合的に、診断につなげていくことになるでしょう。
うつ状態の時は自分でつらさを実感しやすい一方で、躁、もしくは軽躁状態の時は、むしろ「気分が晴れて、動ける」状態になっていることもあり、自覚的に不調を実感しにくいことが多くあります。
一方、普段からの様子を見ている方からすると、急に多弁になったり、お金の消費が激しくなるなど、しばしば明確な変化として見えていることがあります。
最終的には、自分で軽躁もしくは躁のサインに気づいて、活動を減らすなどの自己対処を取ることが望まれますが、途中段階としては、周囲の意見を参考にすることで、軽躁もしくは躁に気づき、対処する方法もあろうかと思われます。
躁うつ病(双極性障害)の中には、うつ状態と軽躁状態がある「双極性障害Ⅱ型」の方がいます。その中には、大半がうつ状態で、ほとんど軽躁が目立たない方や、軽躁の程度が軽く、普通の状態と区別がつきにくい方もいらっしゃいます。うつ病と、これらの「双極性障害Ⅱ型」の鑑別は時に難しい場合があります。こうした点を、病状理解の一助としていただけますと幸いです。
躁状態は、一般には「爽快気分(何でもできる)」の状態が想定されますが、中には、イライラが目立つ病態の方がいらっしゃいます。落ち込みが目立つ状態から、急に多弁かつイライラが目立つ状態になった場合は、躁うつ病の躁状態(不機嫌優位)が鑑別にあがるでしょう。
躁うつ病の中で、軽躁状態が短いもしくは軽度で目立たない方(双極性障害Ⅱ型)がおり、その症状と、うつ病の症状の見分けが難しい場合があります。この場合、経過観察、抗うつ薬の効果(双極性Ⅱ型ではしばしば無効、もしくは気分変動が強くなる)などを総合して、鑑別をすることがあります。
うつ病と比べ、躁うつ病の方が、治療期間が長期になったり、妊娠時の子供への影響が強い等、診断に慎重を期す必要がある面があるため、鑑別が難しい場合、まずは暫定的にうつ病の治療を行っていき、前述の特徴が明確になった段階で、躁うつ病に診断が変わり、治療方針を見直す場合があります。
躁うつ病では、主に躁状態もしくはうつ状態のことがありますが、その両者が混じった状態を、一時的に経験することがあります。これを「混合状態」といいます。程度にもよりますが、変動が短期間に強く出る場合は時に危険があるため、主治医の先生に、早めにご相談することをお勧めいたします。
「躁うつ病」の治療においては、躁状態・うつ状態の治療および再発予防のために、気分安定薬を(安定後も)継続して使う必要があるとされます。特に安定が続いたり軽躁状態になったときに「もう飲まなくて大丈夫」となり、薬を飲まなくなり、その後再発してしまう場合も経験しており、特に注意が必要と考えます。
治療者の立場としては、再燃予防のための服薬継続をお願いするところです。そのなかで、これはあくまでも例外的な話なのですが、「軽躁・うつとも、そこまで重度ではない(専門的には「気分循環症」に類した状態)」かつ、「仮に軽躁、うつが再燃しても、対人トラブルや自傷などの重い結果に陥る恐れが低い」場合に関し、「悪化の兆候があれば、すぐ服薬を再開する」ことを条件に、(特に妊娠希望など、服薬のリスクも大きいと思われる場合に)減薬等を模索できる余地はあるかもしれません。ただしこれは個別に専門的な判断が必要なことなので、あくまで主治医と相談することをお願いいたします。
特に炭酸リチウムやバルプロ酸といった「気分安定薬」は治療に重要な一方で、妊娠時の赤ちゃんへの影響に注意が必要な薬です。そのため、躁うつ病の方において「妊娠準備の時に薬をどうするか」は、慎重な検討が必要な課題です。
大まかな選択肢としては「同じ薬を継続する」「よりリスクの少ない薬に変える」「薬をいったん中止する」の3つがありますが、それぞれ一長一短であり、病状等から、慎重に、総合的に検討することが必要と思われます。
こういったご相談を聞くことは少なくありません。再燃なく落ち着いている状態の時、一般的には、「悪くはないが、(少なくとも以前の軽躁状態よりは)ぱっとしない」状態になるようです。一種の「以前の軽躁状態へのあこがれ」および「現状とのギャップ」から、治療や服薬への葛藤が生じやすいともいえるでしょう。
しかし、特に服薬を中断するなどして軽躁状態になった場合、そこでは落ち着かず、躁状態や混合状態に至る(再発)ことが予想されます。そのため、治療者の立場としては、まずは再発しないことを優先し、その中で、今の状態などについて、徐々に折り合い、意味付けをしていくことを方針としています。
ご自身の状態としては、安定時にしばしば「軽躁へのあこがれ」「現状への葛藤」が生じやすいことがあります。一方で、軽躁・躁状態は、ご自身の不快感よりも、周囲への影響の方がより目立つことが少なくありません。急な気分変動(言うことが変わる)や躁状態の巻き込みを経験した周囲の人の中には、疲弊し、ご本人から離れる選択をすることもあり得るかもしれません。これは長期的には非常につらいことであり、それを防ぐためにも、再燃予防のための治療の取り組みの継続が意味を持つと言えるかと思います。
統合失調症の症状として「幻聴」が有名ですが、そのほかにも「周囲に過敏になる」「狙われていると感じる」等様々な症状があり、幻聴がないだけでは、統合失調症の可能性は否定できません。診察では、幻聴以外にも、様々な症状・経過等をお聞きしたうえで、診断を組み立てていきます。
極度のストレス、不眠の持続など、負荷が強くかかった状態においては、統合失調症でなくても、一過性に幻聴が生じる可能性があるとされています。そのため、「特殊な状況で一回のみ幻聴があった」=「統合失調症」とはなりません。ただし、その後も幻聴が続いたり、他の症状が持続するなどある場合は、受診をご検討ください。
甲状腺の不調など、からだの不調が原因で、幻覚などが出てくる場合があります。そのため、必要時は、からだの原因の除外のため当院でも血液検査を行っており、場合によってはCT検査などご紹介を行う場合があります。
病状によります。外来で治療が成立する条件として、「くすりの治療を継続できること」「家の生活(休養など)で安全を確保できると思われること」があるかと思われます。この場合は、まずは外来で治療を開始し、改善するかを見ていく可能性が高いかと思われます。
一方で、「くすりの治療が継続できない場合」「安全確保が難しい場合」「外来で治療しても悪化が続く場合」などは、入院の治療が必要もしくは望ましい場合が多くなると思われます。
統合失調症においては、抗精神病薬を定期的に飲むことがが治療及び再燃予防に必要とされています。薬の作用によって脳の状態を保ち再燃を防いでいるので、安定している場合でも服薬を中断すると再燃するおそれが非常に高いです。(統合失調症で、精神科病院に再入院となる理由として多いのが、服薬の中断による再燃です)
確かに安定すると薬の効果がわかりにくく、かつ副作用は時に実感しやすいこともあり、服薬に葛藤が生じる場合もありますが、治療者としては服薬の継続をお願いするところです。
この時期で何よりも重要なのが「休養」です。刺激が加わると悪化し、薬の効果も打ち消してしまうため、なるべく休養に専念して「頭を休ませる」ことが必要です。病状等からどうしても休養できない場合は、入院の枠組みで治療することが望まれる場合もあります。
急性期の幻聴に関しては、病状と密接に絡んでいるため、服薬と休養で、安定を図ることが一番重要です。一方、安定しても幻聴が残り、苦慮される方もいらっしゃいます。
この対処法として、イギリス等では「幻聴への認知行動療法」の研究がされ、日本ではべてるの会などの「当事者研究」が有名ですが、様々な取り組みがなされています。様々な方法が提唱、実践されていますが、臨床の実感として一番重要なのは「幻聴と本当の声を見分ける」ことだと感じています。
区別がつかないと巻き込まれ不調になる一方、「幻」とわかれば、「幻聴と距離を取る」「受け流す」などの対処法が機能しやすくなります。これも臨床での経験になりますが、幻聴は続きつつも再燃せず経過する方に話を聞くと、次第に「幻聴が幻聴とわかり、受け流せるようになった」との話が複数ありました。
治療が進み回復期になると、上記のようなお話を聞くことがあります。統合失調症の症状には大まかにいうと陽性症状(幻聴など)と陰性症状(意欲低下など)の2つがあり、急性期には陽性症状が目立ち、薬等の治療でそれを改善し、回復期に至ります。その結果、急性期では目立たなかった陰性症状が目立ってくると考えるとわかりやすいと思われます。
急性期では休養が最重要でしたが、回復期に入ると、慎重にですが、リハビリ的な活動を徐々にはじめていき、陰性症状の対策としていきます。
大きくは、「服薬継続」と「ストレス対策」の2つです。前者に関しては、むしろ回復後に、「再燃予防のために薬を続ける」ことへの葛藤が生じやすく、その整理をしながら、服薬を続けることが重要になります。後者の具体例として、生活リズムの維持や、前触れを見つけて早めに休養することなどが有効になります。
特に昨今言われているリカバリー(社会復帰等)を想定すると、社会活動によるストレス自体は増えるため、よりストレス対処が再燃予防のために重要です。生活リズムと睡眠の維持、こまめなストレス対処、不調時の早期対応などを組み合わせて実践していくことが大事です。
症状の程度など、個人差が大きいですが、昨今ではサポート体制の改善もあり、仕事に復帰されている方も増えていると思われます。臨床の実感としても、いわゆる寛解状態(服薬継続の中で、症状が目立たなくなる)か、それに準じた状態であれば、多くの場合、仕事は可能になりうると思われます。
一方で、仕事を開始することは、「労働者」の役割を負うことでもあり、それに伴うストレスが増える事には注意が必要です。服薬を継続することに加え、仕事に伴う疲労やストレスに十分対処し、生活リズムや睡眠を維持するなど、万全の対策を継続してとっていくことが望まれます。
特に社会活動を想定した場合、「日中に活動して、夜にしっかり寝る」生活リズムの確立が非常に重要です。生活リズムの維持を前提として、無理のない範囲で、徐々に活動の負荷を増やし、慣らしていくことが重要と思われます。自主的に行う方法もありますが、デイケア等の通所施設を活用すると、こうしたリハビリ活動が行いやすくなることもあるでしょう。
日中に、活動するところに通所することは、社会活動の練習になると思われます。いくつかの種類がありますが、代表的なものは「デイケア」「作業所(就労支援B型)」「就労移行支援事業所」の3つがあります。
「デイケア」は主に精神科病院で行っていますが、定期的に通い、体を動かす、頭や手を使う等のリハビリ活動を行っていくものです。「作業所(就労支援B型)」は、より仕事に近い軽作業を定期的に行っていくものです。「就労移行支援事業所」は、おもに「障害者枠での就労」を目標に、2年を目安にリハビリを段階的に強めながら継続していくものです。
発達障害は、幼少期から明確で気づかれる場合も多い一方、幼少期や学生時代にはあまり症状が目立たず、仕事を始めてからミスが目立つ、同時に物事を行えないなどの特徴が目立って、気づかれる場合が少なからずあります。また、学生時代まで「生きづらさ」を感じながらも生活し、大人になってから発達障害の特徴を見て自分に合っていると思い、検査などをして診断がつく場合もあります。
ADHDと自閉症スペクトラムの双方の特徴を持つ方は少なからずいらっしゃいます。DSM-Ⅳの時は双方の合併は基準上認められませんでしたが、現在の基準DSM-5では合併が認められるようになり、実際双方の合併の診断となる方は少なからずいらっしゃいます。ただし、合併する中でも、片方の特性が目立つ(主)のこともあり様々であり、その人の特徴にあった対応が求められます。
たとえばインフルエンザでは、検査でウイルスが検出されるかで「ある」か「ない」か決まりますが、発達障害では、そのように白黒二択ではありません。「スペクトラム」という言葉の意味が示すように、「全く特徴のない方」から「特徴が非常に強い方」まで連続しており、「重度まではいかないが特徴はある」いわゆる「グレーゾーン」の方が多くいらっしゃいます。
特に、成人になり発達障害の可能性を考える方は、少なくとも大半は「重度ではなく」一方で「傾向はある(から気づく)」ため、多くの場合「グレーゾーン」の中に入り、その中で、症状の特性の強さや「生活への支障」の程度、心理検査結果などから、総合的に「診断まで付くかどうか」判定していくことになります。
あくまで「診断のための所見の一つ」です。
先の「インフルエンザ検査」のように、それだけで診断がつくものではありません。一方で、問診のみでは「主観的な自覚症状」に偏りがちな中、客観的に様々な問題を行うことで、発達障害の特徴の一つである「得意と苦手のばらつき」や、検査を行っている時の特徴(行動観察)など、客観的に見た情報を得ることができます。そのため、問診と検査を組み合わせることで、多角的な視点で分析することができます。
また、WAIS検査では、発達障害の有無の参考所見のみでなく、「何が得意で何が苦手か」の所見も得ることができ、自分の得意と苦手の特徴を知り、今後に生かしていける面もあります。
心理検査を行う目的の一つには、「自覚的な症状と、客観的な所見の整合性を見る」ことがあります。一度「自分は発達障害ではないか」と思って気になると、(実は違っても)様々な発達障害の症状が実際にあるように感じやすいことがあります。そのため、問診でお聞きするとともに、検査などの「客観的な視点」で見直すことで、最終的な診断を行います。
その結果として、自覚症状としてはあてはまっても、客観所見で該当する点が少ない場合など、「発達障害ではない」となる可能性があります。
ケースバイケースというのが、実状かと思われます。ご自身が特性により非常につらくなっている場合、もしくは業務に影響が強く出ている場合は、状況の打開および周囲への影響の緩和のために、言うことが望まれます。一方で、業務への影響やストレスがあまり大きくない場合は、言う必要性は低くなるでしょう。
なお、障害者枠で、障害を公開して就職をする場合は、職場の配慮を得られる可能性は高いことが期待できると思われ、この点は仕事を継続するうえでのメリットです。
状況等により異なると思われます。診断を受ける事には、メリット・デメリットの双方があります。
自分の特徴やつらさの背景(原因)を知り、改善の努力や生きやすい場を探すこと、必要なサポートを受けてストレスを減らし二次障害を受けることなど、メリットは多くあります。一方で、時に診断名から偏見を受けることがあったり、診断を受け入れきれず自己肯定感が下がるリスクなど、デメリットがあることも確かです。
メリット・デメリットの双方を踏まえ、(特に成人では)ご自身で納得したうえで、診断を受けに行くかどうかをご検討いただければ幸いです。
胃潰瘍など、治療法が明確な「病気」であれば、診断を受ければ、その後治療、改善にダイレクトにつながるため、診断を受けることに多くの場合迷いはないでしょう。一方発達障害は、特性自体は対処しても残る、いわゆる「障害」であるため、診断を受けたときに「その障害と付き合っていく」ことが、合わせて決まることになります。そのため、診断後に葛藤が出てくるのも無理はありません。特に、「発達障害は治らない」などの、必ずしも正しいとは言えないネガティブな意見(極端な事も少なくありません)に強く影響されると、診断や(診断を受けた)自分自身に後ろ向きな印象を持ってしまう恐れもあります。
診断を受けたからこそできることに、目を向けられるといいと思います。診断があるからこそ改善の取り組みができる面があります。就労移行支援など、診断を受けたからこそ受けられるサポートがあります。診断を受けたからこそ、より自分の特性に合う環境は何か、探すことができます。そうした、プラスの面を見つけるお手伝いが出来ますと、幸いです。
たとえばインフルエンザのように、薬を飲めばウイルスが消え、なる前のもとの状態に戻ることを「治る」と定義するならば、確かに「治る」とは言えません。不注意、こだわりなどのもとの特性自体は、続いていく個性であり、それが社会生活で大きな障壁となるなら「障害」と名付けられます。こうした特性とは、一生付き合う必要があります。
一方で、得意な部分や知識、反復練習などで、特性による弱点をカバーしたり、長所を生かすことで社会適応をあげる余地は、多くの場合十分にあります。特に、社会での不適応から生じる様々な「二次障害」は、大いに予防、改善の余地があります。
「良くなる」のですかと問われれば、こうした面を総合して、「良くなるでしょう」と答えます。
その人の特性等によって、異なってきます。
障害者枠は、特性を知ってもらったうえでの雇用なので、多くの場合ストレスは少なく、力を発揮しやすい面があります。一方で一種「保護された中での」雇用との見方もあり、やりがい、給与面などでは一般枠の方に分があることが多くなるでしょう。特性の種類や程度、社会適応のしやすさなどを総合して、合う方を選んでいくことになるでしょう。
そして、障害者枠と言っても様々な仕事、職場の雰囲気があり、その中で、ご自身に合う環境を模索していくことが重要になるでしょう。
一般論としては、配偶者ご本人に、受診・診断を受ける意思がある場合に限られるかと思います。別の回答でも述べましたが、「発達障害の診断を受けること」はプラス、マイナスの両方の面があり、特にご本人に診断を受ける意思がない場合は、(ご本人からの視点では)外から診断を半ば「押し付けられる」形となり、マイナス面が大きくなってしまう危険が大きいと思われます。
こうした場合の現実的な対策としては、発達特性が目立つ具体的な場面などを、感情的にならず事実ベースで話し合って、ご本人が自発的に「もしかしたら発達障害があるかもしれない」と気づくよう働きかけることが選択肢になると思われます。
まずは、「相手の特性と対応の方向」を知ることだと思われます。
たとえば、(診断の有無にかかわらず)自閉症スペクトラム的特徴(こだわり、社会的障害)が強い相手であれば、相手の「空気を読まない発言」を「侮辱」ととらえ怒るかわりに、「この特性があるから仕方ない」と、一歩引いて冷静に受け流し、必要時のみ冷静に相手を立てつつ助言するなどして、感情を摩耗させず、建設的なやり取りに近づくことができるかと思います。
もう一つ大事なのは、特に「相手を変えよう」と考えた場合、(特性、困ったことがあっても)根本のところで相手への「敬意(リスペクト)」を持つことかと思います。
仮に良かれと思ってでも、相手への敬意なき要求・批判・助言は、攻撃・支配・見下しなど、暴力的色彩が生じてしまいやすくなるように思われます。相手に変化を求める助言をする際は、相手のいい面を見ることができているか、逆にどこかで見下してしまってはいないか、今一度見つめ直してから、実際に助言するか決めるのがいいのではないか、と思います。逆に、相手の方が支配的など、「現実的に敬意を持ちにくい状態の」場合は、別の解決策を検討した方がいいかもしれません。
おつらいことと思います。まずできることは、別の回答でも述べましたが、「相手の(発達特性からの)特徴を知り、対処法を知り、実践する」ことになるかと思います。それでも難しい場合、「相手に対し敬意(リスペクト)をもてるか」内省してみるといいかと思います。それが持てるなら、話し合いなど、改善の余地は残っているかと思います。一方、もはや「敬意を持てない」状態だったとしたら、関係を見直すべき段階に来ている可能性があります。
人には相性があり、発達面の「特性が強い」なら、より相性は明確に出やすくなります。どうしても合わない場合には、距離を取るのが望ましいこともあるでしょう。
ミスは、ADHD以外でも生じる場合があります。その例の一つがうつ状態(うつ病・適応障害)です。特に、ストレスがかかってからミスが増えたとき、もしくは他のうつ症状と連動してミス、不注意が出ているときは、ADHDよりもうつ状態の可能性が高いといえるでしょう。
ネットでのチェックリストは、あくまで症状をベースに作られており、ADHD以外が原因でのミス、不注意でも該当することがあります。先の「うつ状態」のほか、自閉症スペクトラム(複数同時、とっさの場面でミスが増える)、負荷が大きすぎる場合(仕事とのミスマッチ)などでも、該当する場合があります。一方で、ADHDがある場合でも同様に該当しますので、一度診断を受け、調べるきっかけにはなるのだと思われます。
「不注意優位」のADHDの場合、仕事を始めてから指摘され、気づかれる場合が少なくありません。これは、学校と比べ、仕事になると、時間等の約束事が多くなること、同時並行で物事を進める必要が出ることがあり、負荷が増えた分、ADHDの特性が目立つようになるため、と推測されます。また、10代までは親のサポートでなんとかなっていたのが、仕事をはじめ自分で行う必要が出てから、特徴が目立つようになることもあるでしょう。
もちろん、立場や求められることの変化に対し、一過的に特性が出て、慣れるとまた改善する場合も少なくありませんが、なかなか慣れず持続する場合は、発達面のことも検討するほうがいい場合があります。
ミスは、ADHD以外の原因でも出るのですが、「注意されて、気を付けても」ミスが続き、減らないことは、ADHDの特性になります。片づけられない、時間を守れない、物をなくすなどに関しても同様になります。
不注意のもとには「集中を続けることが難しい」ことがあるとされますが、それは会話の際に、外から観察される場合もあります。この場合、「実際に聞いていなくてその後ミス等が出る」ことも問題ですが、「相手に不真面目に思われる」ことにも注意が必要です。
「集中を続けるのが難しい」特性のため、「じっくりと集中を続けて取り組む課題」具体的にはレポート等が苦手なことが多いです。苦手意識から、つい先送りにしてしまうことも多く見られます。ただし、自分の興味のあることだと、特性があっても、短期集中でやり切れる場合も少なくありません。
衝動性とは「(本来我慢すべきことも)ついやってしまう」ことを指しますが、その中には「つい、言ってしまう」ことも含まれます。思ったことをそのまま言うことは、見方によっては素直とも取れますが、それが相手の気にしていることであれば、関係を壊すことにつながります。
衝動性は、いい方向に取ると「躊躇せず行動できる」ことでもあるので、友人づくりにはプラスに働くことも少なくありません。一方で「つい言ってしまう」相手が傷つく発言などで、相手が離れてしまうリスクがあります。ご自身の特性と対人面の注意点を理解したうえで、「一呼吸おいてから、言うべきことだけを言う」習慣をつけることが対策になるかと思います。
多動性(動きが止められない)は、大人になると、幼少期であるような「授業中立ち歩く」などの明確な形で出ることは少なくなります。一方で、「頭の中が忙しい」「考えが止められない」など、「脳内活動」としての多動は残ることが多いと思われます。その中の一つとして「休日にゆっくりできない」ことは、診断基準の一つにもある大きな多動の特徴になります。休めないと、人は疲れれてしまいますから、「意識的にリラックスし、休む」練習が重要になってきます。
衝動性は、「ついやってしまう」ことが代表的ですが、「外からの刺激に(抑えが効きにくく)強く反応する」ことも意味します。その結果、外の刺激(ストレス等)によって気分が大きく変化する、一見すると「躁うつ病では?」と思うような気分の波が出ることがあります。もしADHDの診断があった場合は薬の治療が有効な事もありますし、生活面としては感情が動いたときに「一呼吸置く」習慣をつけることが対策になるでしょう。
不注意、多動・衝動性といったADHD特性改善のために、現在、アトモキセチン、メチルフェニデート徐放錠、グアンファシンの3種類の薬が、医師の診察の上で処方可能です。
アトモキセチンは、不注意、多動・衝動性の双方に効くとされ、個人差はあるものの比較的副作用が少ない薬です。ただし、効果が出るまで1-2か月かかり、効果が実感しにくいため、いかに意識を持って継続できるかが重要になります。
メチルフェニデート徐放錠は、やはり不注意、多動・衝動性に効果があり、かつ即効性があり効果を実感しやすいですが、依存性の問題や食欲低下・不眠などの副作用のリスクが比較的大きく、慎重な使用が求められます。
グアンファシンは、2019年に成人でも使用可能になった薬です。主に多動・衝動性に効果があり、依存性なく2週前後で効果が出るとされます。ただし、人によっては血圧の低下などにより、倦怠感や眠気が強く出る場合があり、少量から徐々に増やす方法を取ります。
これら3種の薬に共通するのは、あくまで「飲み続けているときに効果が出る」ものであり、中止すると効果はなくなり以前の特性が戻ってきます。そのため、薬の治療を行う場合は、生活面の対策を並行して繰り返し行い、後日の減薬等に備えることが重要になります。
「二次障害」としての落ち込み(うつ)、対人不安、不眠などに対し、抗うつ薬や睡眠薬、漢方薬などを用いる場合があります。また、「躁うつ病」の合併が示唆される場合には、衝動性の改善の効果も合わせ、各種の気分安定薬を用いる場合があります。
必ずではなく、どれだけ「生活に困っているか」「実際にくすりの効果があるか」で異なってきます。ADHDの薬は、たとえば統合失調症での抗精神病薬のように、使わないことだけで再燃したり、予後が悪化するものではありません。あくまで「生活しづらさを改善する薬」です。そのため、その人にとっての「使う事でのメリット」が「使う事でのデメリット(副作用含む)」を上回ると考えられるときに使用することになります。
数か月、数年は検討したいところですが、必ずしも「一生」は意味せず、ケースバイケースです。理想的には、ADHD治療薬を継続、症状が改善している中で、生活面の工夫や集中訓練などを継続し、各種二次障害の改善も十分に行い、その後に薬を徐々に減らし、最終的に中止することが目標になります。ただし、薬を減らすと、どうしても生活面での困難が強くなる場合もあり、その場合は、メリット・デメリットの双方の面から、服薬を継続するか検討することになります。
「集中の訓練」と「生活での工夫の習慣」の2つが代表的かと思われます。
前者は、「集中はそれる」ことを前提に、集中がそれたことに気づき、気づいたらまた静かに集中を戻すことを繰り返し練習することが例としてあります。この方法は、有効性は実感しやすいとの意見もある一方、疲れやすいとの話もあるので、疲労対策なども合わせ、無理ない範囲で行っていただけると幸いです。
後者としては「メモを取る習慣」「やることをわかりやすい所に貼っておき、繰り返し見る」など様々な方法があります。その人ごとに合う方法、合わない方法があるので、試してみて、自分に合う方法を取り入れるといいでしょう。
忘れることを防ぐためにメモを取ることは有効ですが、メモを取ること自体「集中を続ける」ことが必要であり、ADHD特性がある方には、すぐには慣れにくい場合もあります。まずは、「自分にあったメモのとり方」を模索し、いきなり大量ではなく、始めは少ない量から始め、徐々に慣らして増やしていくことが現実的です。もしそれでもどうしても合わなければ、他のカバーの方法も模索してみるといいでしょう。
「一呼吸置き、一歩引いて冷静になる習慣づけ」の練習が重要と考えます。無意識だと「ついやってしまう」ため、意識的に「一歩引き」特性の中和を図る方向です。あくまで一意見ですが、ヨガ等の「マインドフルネス」の練習が、親和性が高いと思われます。(ただし、苦手な事をやることになるので、負担は大きく、無理ない形で行うことが重要)
特性を踏まえると、ミスしないことを求められたり、地道な繰り返しを求められる仕事に関しては、あまり向いていないことが多いと思われます。一方で、その場での行動が求められる仕事(販売職など)であれば、特性がプラスに働く場合が増えてきます。ただしその場合も、弱点をカバーする取り組み(たとえば販売職でも、日報など、苦手な仕事は入る)は、同時に行っていくことが重要と思われます。
学生の時と比べ、仕事では、「相手に合わせること」「同時に物事を行うこと」「急な変化に対応すること」が、多くの場合増えてきます。これらのことは、自閉症スペクトラムの特性があると苦手であり、仕事についてから、(それまで言われなかった)変化への弱さや段取りの悪さなどを指摘され、障害が発見されることがあります。
少なくともこれだけでは、自閉症スペクトラム(ASD)の根拠にはなりません。「好きなものに凝る」のは、ASDがなくても大いに発生することです。その中で「細かいことにこだわりすぎる」「一度こだわると、生活リズムが崩れるなど実害が出る」などの場合、ASDのこだわりと合致する可能性が上がります。
また、こだわりには「変化を受け入れられず、自分のやり方にこだわる」面があり、とっさの場面の融通が利かないところも、一種のASDのこだわりとみなせうると思われます。
自閉症スペクトラムの「社会性の障害」の中に、「感情交流のむずかしさ」があり、それが外からは「表情が硬い」「無愛想」などという形で見える事があります。それ自体は悪いことではないのですが、どうしても社会的には「愛嬌がある」「表情が豊か」などの方が好まれることも多いと思われる面があり、技術として表情・表現を大きくすることなど「人からどう見えるか」を意識するのも、対策の一つと思われます。
自閉症スペクトラムの「こだわり」の中に、「変化に対応しにくい」「自分のやり方にこだわってしまう」ことがあります。これが外からは「わがまま、頑固」とみられる場合があります。
助言する相手は、暗黙の内に、あなたに「変化」もしくは「変化する努力」を見せることを、多くの場合期待しています。もちろん納得いかなくても無理に変える必要はないのですが、少なくとも「参考にします」等、「助言者の言うことを拒絶はしていない」との合図を出すことが、誤解を防ぐためには有効と思われます。
自閉症スペクトラムの「社会性の障害」の中に、「場の空気が読めない」「相手の思っていることが読み取れない」ことがあります。たとえば学校の勉強では、「問題」に対しては「正解」があり、それを答えれば大丈夫です。しかし集団の場面では、必ずしも正解はなく、かつ集団の共通理解(雰囲気)として、本来の正解と違う反応が求められている場合があります。
たとえば会議の最後で「ご質問はありませんか」と言われる場面を考えてみます。一般には、そこでいろいろ質問することは正しいはずです。しかし次の場合はどうでしょう。その会議は、時間が長くなりがちなので参加者は皆「質問はしなくていい」と考えており、実際に質問は、後で個別に行うこともできる。一方、主催者側も、質問を受ける時間は本来ないが、コンプライアンス上やむなく質問を受け付けている。この場合、主催者・参加者とも「質問はここではしないほうがいい」との共通認識(雰囲気)になっています。その場で、「質問する権利がある」として、長く時間がかかる細かい質問をしたらどうか。質問をすること自体は本来は正しいはずですが、「場の雰囲気」とは真っ向から対立してしまう。その結果、その場からは「空気を読んでいない」との認識をされることになります。こうしたことが続くと、相手から「あの人は空気を読めない」と避けられる結果になります。
これはつらい面も多いのですが、対策を考えるなら、「正論を言う目的」に立ち返るといいと思われます。主張する目的はそれ自体ではなく「相手に要望や意見が伝わる」ことにあります。それであれば、場の雰囲気を(読みにくくても)理論的に推測したうえで「より相手が聞きやすい(もしくは相手に誤解されない)」場面を探り、そのタイミングを見て主張することの方が、誤解も避けられますし、いい結果も出やすいと思われます。
勉強の評価基準と、仕事での評価基準の違いが大きいのだと思います。勉強では、多くの場合、自分で勉強を積み重ねて試験で正しい答えを出すことが求められ、ここでは対人技能や柔軟性はあまり求められません。一方、仕事では、相手との交流技術や、上司と合わせる力など、自閉スペクトラム傾向のある方の苦手な部分が評価に大きく影響してきます。そのために、ともすると「勉強はできるが仕事はできない」的な評価のギャップにつながってしまうと思われます。
ただし、これはあくまでもその人の個性の話であり、それに対しての上記のような「人格否定」的な注意の仕方には疑問が残ります。こうしたやり方での注意を受けた場合、下手に受け入れると、改善よりも「自分の否定」から二次障害につながってしまい、どちらのメリットにもならないのではないでしょうか。聞く方としては、改善点はしっかりと聞きつつも、「人格評価」に関しては、(少なくても言い手に聞き手への「リスペクト」がない場合には)受け流すことが、自分を守り二次障害を防ぐために必要になるでしょう。
自閉症スペクトラム(ASD)の「社会性の障害」の中に、「物事を、文字通りに受け取ってしまう(ユーモアが利かない)」ことがあります。素直なタイプのASDの方の場合、この特徴が強く出て、相手から滑稽に見られ、からかい、「いじり」の対象となることがあります。
対策を考えるときに、互いに「信頼関係があるか」が大きな分岐点です。信頼関係さえあれば、個性と割り切って、その相手との交流を続けて支障ないと思われます。しかし、信頼関係がない状況の場合、その中での「いじり」は、いうなればただの「言葉の暴力」です。その相手との関係ではプラスのことは生まれにくいですから、まずは距離を確保し、影響を減らすことが対策になるでしょう。そして、余りに「見下し、侮り」がひどい場合には、覚悟をもってしっかり主張することも、時には必要になるでしょう。
自閉症スペクトラムの方の「こだわり」の中に、興味、関心の切り替えが行いにくいことがあります。言い換えると、一つのことに集中するのが得意な一方、同時、又はこまめに切り替えて複数のことをするのは苦手といえます。そのため、同時並行などの仕事が増えると、対応しきれず、ミスが増えることになります。
こうした状態になっていると気づいた場合は、同じ仕事を、なるべく自分に合ったやり方に変えられないか、模索していくことが対策になるでしょう。
「ミス=ADHD」的な先入観はしばしばありますが、ミスの原因はADHDだけではありません。その中でも、「同時並行になると、急にミスが増える」場合は、自閉症スペクトラム(ASD)から来るミスの増加の可能性があります。また、ADHDとASDはしばしば合併するため、ADHDのほかに、ASDが実は合併している場合もあります。
自閉症スペクトラム(ASD)には、元の特性以外に「二次障害」としての精神不調が出ることがあります。特性を背景として他者に拒絶されることが続くと、ストレスの持続により二次的に様々な精神不調が出ることがあります。ASDの二次障害として「対人不安」が少なくありません。普通にやっても、なぜか人に拒絶されたり、「いじられたり」することが繰り返されれば、人が怖くなるのも無理はありません。
対策としては、自分が拒絶されない場を見つけ、小さくても「対人的にうまくいった体験」を積み重ねていくことがあろうかと思われます。場合によっては、抗うつ薬(SSRI)が有効な時があります。
拒絶されたり、失敗することが繰り返されると、元の特性に加え「二次障害」として、様々な精神不調が出ることがあります。その中でも目立つのは「どうせやっても無駄」との学習性無力感であり、これがしばしば、意欲低下や抑うつといった「うつ状態」を引き起こします。
対策としてはやはり、自分が受け入れられる場を見つけ、そこで「成功体験」を積み重ねることがあります。対人不安と同様、場合によっては、抗うつ薬(SSRIなど)が有効な時があります。
否定的な体験反復の結果としての「二次障害」として、不安・抑うつといった症状のほかに、イライラ、怒りやすくなるなどの症状が出てくる場合もあります。他者への怒りが習慣化すると、相手への態度にも出て、さらに拒絶され怒りが強まる悪循環におちいる恐れがあります。
こうした怒りや悲しみを和らげることは、容易ではないことも多いと思われますが、大事なことはやはり、「自分が拒絶されず生きていける場」を見つけ、徐々にでも、人に感謝されるなど「他者とつながった、うまくいった」体験を積み重ねていくことかと思われます。
失敗体験の繰り返しは、やがて「どうせやってもだめ」という学習性無力感の考え(スキーマ)を作っていきます。ひとたびその考えが出来上がると、本来は挑戦できる場面でも、その考えが自分自身の行動を止め、身動きがとりにくくなってしまいます。
対策としては、逆説的ですが、「無力感の考え」があってもあえて挑戦をして、できれば成功し、「どうせうまくいかないとの考え」を結果で否定していくことになろうかと思われます。これは認知行動療法の中で「行動実験」と言われる手法になります。その実践のコツとしては、「小さな失敗は目をつぶる」「できたところに目を向ける」ことになろうかと思われます。
ともすると、無力感が形成された「過去」に原因追及することに終始してしまいがちですが、それではあまり今後の改善にはつながりにくいのではないでしょうか。反省は改善につながりますが、後悔は時に未来へのエネルギーを奪うことがあります。現状は現状として見ていったうえで、「これから何ができるか」に焦点を合わせられますと幸いです。
別の質問でも言及しましたが、「治癒はしない(特性は続く)」が、生活、二次障害など「改善できる」と思われます。特に、原因がわからず拒絶され続け、二次障害としての学習性無力感などで方向性を見失った方が、診断によってその原因と改善の方向性がわかり、取り組みを継続して徐々にでも改善していく例を考えると、診断には一定の意味があると考えます。
一方で、診断名の持つ「イメージ」に縛られ、逆に後ろ向きになってしまわれる方も時にいらっしゃいます。そうした事を防ぐため、診断の際には、その後改善していけることや、その方向性についても、合わせてお伝えすることを心がけています。
成人でも、取り組みによって、改善の余地はあると考えます。
確かに幼少期から診断を受け、「療育」サポートを継続して行い、特性の対処や二次障害の予防を図ることは有効と思われます。一方でそうした方でも、成人後の社会適応に関しては、周囲よりも自分自身が主体となり、取り組みを継続することが必要になります。
他方、大人になって受診を希望される方は、仕事や生活の上での困りごとがあり、何とかしたいとの思いの中受診されます。成人の方は、自分が主体となり、改善の取り組みを続けることが重要になりますが、困りごとや「何とかしたい」との思いは、診断後、改善の取り組みを続けるための大きな動機になりうると考えます。
そうした意味でも、成人して診断を受けても、改善の余地はあると考えます。
一つ目は、「自分のこれまで」を整理できることです。診断前は「なぜか拒絶されることの繰り返し」だったのが、診断がつくことにより、原因がはっきりし「腑に落ちる」ことがあると思われます。そうすると「なぜかわからない」から「(大変でも)何とか改善しよう」との方向に移れることもあるでしょう。
二つ目は、「改善の方向が見える」ことです。「こだわり」「社会性」などの特徴を知り、社会一般の対人面などのルールも同時に知ることで、どう改善をはかりつつ、社会適応の折り合いをつけていくか、徐々にでも模索することができるでしょう。
最後に、「必要なサポートが受けられるようになる」ことがあります。特性が強い場合は、改善・適応を心がけても困難が強いこともあります。その場合は、必要なサポート制度を活用することで、さらに適応の可能性を模索することができる場合があります。
細かいコツはいろいろあるでしょうが、要約すると「モデリング」「理詰めでの推測」の2つになろうかと思われます。
「モデリング」とは、うまくできている人を真似することです。服装、話し方、動き方などはかなりこれでカバーをはかれます。
「理詰めでの推測」は、たとえば「その場で何が求められるか」を、無意識で感じ取る代わりに、状況、相手の立場などから「理論的に推測する」ことです。雑談とは違い、仕事の世界での会議や交渉は、自分と相手の求めるものがある程度推測できる中で行われますので、仮に無意識では感じ取れなくても、推測・仮説とその検証・修正の繰り返しで、かなりカバーすることができると思われます。
これらは当然すぐに身につくとは考えにくいですが、反復練習で徐々に高めることを継続できれば、だいぶ違ってくると思われます。
「社会性」と同様、細かいコツは様々にあるでしょうが、要約すると、「視点を変える」練習、「こだわる点を変える」練習の2つになろうかと思われます。
「視点を変える」技法としては、認知再構成(認知行動療法)、マインドフルネスなどがあげられますが、意識的に「他者の視点」「全体を俯瞰する視点」を取ることを練習することです。たしかに「こだわり」は特性なので、自分以外の視点の獲得には困難があるでしょうが、その際、前にもふれたように、「理詰めで相手の立場、全体の状況を推測する」ことが役に立つでしょう。
「こだわる点を変える」こととしては、個人的な結果よりも、関わる全体での結果(全体最適)にこだわるようにすることがあると思われます。こだわり自体が悪いのではなく、こだわる点が細かすぎたり、全体の目標からずれたりする場合に、周囲と不調和になってしまいます。全体を俯瞰したうえで必要な事を見つけ、そこにこだわることができれば、むしろ「こだわり」は(必要な事をやり抜くための)武器になる面もあるでしょう。
端的にいえば、(失敗を繰り返す代わりに)「うまくいった、受け入れられた経験」を繰り返していくことです。
幼少期からの「療育」の大きな強みの一つは、周囲がサポートして、失敗体験を減らし、成功体験を増やすことで、二次障害を予防していくことにあります。もちろん大人になり診断されたときには、すでに二次障害が発生してしまっていることも多いのですが、対策は同様だと思われます。
まずは特性を知り、強みを生かし弱点をカバーすることで「成功体験」を増やす。それも難しい場合は、就労移行支援などのサポートを受け、その中で「成功体験」を増やす。過去の失敗体験は消えませんが、新しい成功体験をくりかえし、いわば「上書き」を繰り返すことで、発生した二次障害も改善が見込めるでしょう。
2019年段階では、自閉症スペクトラムの特性自体を改善する薬はないとされています。ただし、落ち込みや対人不安などの二次障害に対しては、改善を見込める薬があり、相性はありますが有効な場合があります。また、自閉症スペクトラムの方の多くはADHDを合併しているとされ、その改善のためのADHD治療薬が有効な場合があります。
「こだわり」自体は、使い方次第では武器になり、悪いこととは言えないと思われます。ただし、「こだわり」の場所が、細かすぎたり、その場で求められることとずれていたりすると、「勝手な事をしている」等思われ、周囲とうまくいかない原因になります。
こだわりを少なくとも「悪」としないためには、何にこだわる(繰り返しやり続ける)とその場にとってプラスとなるか、自分のいる場の全体像を俯瞰したうえで見極めることが重要です。
たとえば、鉄道の種類を知ることだけにこだわってもなかなか評価されにくいですが、「いい鉄道(システム)を作る」ことにこだわることができれば、そのこだわりの結果、助かる人が多く出てきて、結果評価されるに至るでしょう。
正直、読めないよりは読めたほうがいいのは確かだと思われます。「空気を読み過ぎると身動きが取りにくくなる」「空気を読みすぎず実行した方がいい」などとも言われますが、ここで求められるのは、「まず土台として空気を読んだうえで」「必要な時に「あえて」ずらす」ことであり、ただ空気を読まずやみくもに行動することとは違います。
ただし、仕事の場での「空気」は、雑談のそれと違い、経験やその場での営み・システムの理解など、かなりの部分「理詰め」で代用できる点もあると思われ、仮に自閉症スペクトラムがあっても、カバーできる点は少なくないのではないかと思われます。
よく聞く話で「変化が苦手なので、型の決まった反復作業がいい」というものがあります。確かに間違いではないのですが、できることがだいぶ過小評価されてしまっていないか、とも感じられます。(同じ発達障害でも、ADHDの「発想力があるから、クリエイティブな仕事が向いているかも」等と比べると、見劣りする印象を持つ人も少なくないでしょう)
筆者の印象ですが、自分で一定の責任を持ってやり切る、各種の「個人事業主」の仕事は、相性は悪くないのではないかと感じます。上司や組織に合わせなくてもいい一方で、責任を背負い、様々な雑用も含めて「避けずに(こだわって)やり切る」ことが求められますが、この種の大変さは、自閉症スペクトラムの方は比較的得意とするのではないかと思われます。もちろん、その中で、相手先との「交流」はどうしても生まれるため、一定レベルでの弱点のカバーは必要になります。
メリットは、多くの場合、自閉症スペクトラムに理解のある職場で、特性を生かした仕事形態(対人調整など苦手分野をを最小化し、「得意の」反復することで成立する仕事など)が多いため、ストレス少なく、「認められる」仕事ができる点にあります。一方で、「環境をサポートされての仕事」なので、長い目で見ると出世や収入面などに不利があることも少なくありません。
一般の仕事を工夫して行った場合に、どのくらい困難さがあるかによって、普通枠と障害者枠のどちらがいいか、異なってくると思われます。
いきなり仕事に適応するのが難しい場合に、「就労移行支援事業所」を活用し訓練しながら、障害者枠の仕事を目指す方法があります。大人での診断の場合、幼少期のような「療育」のサポートは受けられませんが、就労移行支援を用いると、(2年の制限はありますが)一種療育に近い形で、時間と密度をかけて「特性の理解と改善」に取り組む事が出来るでしょう。
最大2年という期間は短くはありませんが、長い目で見て、社会とうまく折り合いをつけられる可能性があり、その点では、人によっては大きな意味があると思われます。
スクールカウンセラーは、ほぼすべての公立小中学校で配備されるなど普及するに至っています。ただし、現実的な制約として「ほぼ1人(非常勤が多い)」「学校の一室で行う必要がある」ことがあります。一方で、強みとしては「学校の他の職員と連携できる」「費用がかからない」「学校場面を知った上で助言できる」点があります。そのため、こころの悩みがある場合は、まずスクールカウンセラーと相談してみることが第一歩になると思われます。(そのうえで必要時、心療内科など紹介される場合もあります)
ただし、「学校に行けない場合」「どうしてもスクールカウンセラーと相性が合わない場合」「(学校内のため)ほかの生徒に見られるのがどうしても気になる場合」に関しては、外部の相談機関を検討する必要が出てくると思われます。
21世紀の変化として、「こどものこころ」に注目が集まり、学校のスクールカウンセラーが普及・定着したことがあります。一方で、子供個人のこころのみでは解決が難しく、生活環境などに介入が必要な場合も少なくないことがわかってきています。その対策として、学校に関与する精神保健福祉士等(スクールソーシャルワーカー)の必要性が言われ、配置され始めています。
代表的な役割は、「ご本人のストレスになる生活環境などの調整」になります。本人に働きかけるほか、学校や各種教育関係機関の調整・取りまとめなども行い、こども自身の環境面などの困難の解決・緩和を図ります。
いわゆる「起立性低血圧」です。寝ている状態から起きるときに、血の流れなどが変わってくるのですが、本来は自律神経の作用によって血圧が変化せず不調も起こりません。しかし何らかの理由で自律神経に不調があると、その作用がうまくいかず、起きたときに血圧が下がり、立ちくらみが出たり、だるくなって起きられない状態になることがあります。これが「起立性低血圧(起立性調節障害)」です。
内科で「起立性低血圧の薬」があるのですが、あまり効かないことが少なくありません。なぜなら、ここでの「自律神経の不調」は多くの場合、ストレス等の心理的問題が絡んでいるため、並行して心理面の対策が必要になってくるためです。特に心理面の対策も重要な場合は、心療内科等での治療の適応となります。
定義としては「身体疾患のうち、心理的要素が大きいもの」に限定されます。厳密にいうと、俗にいう「こころの不調が体に出る」ものの一部は心身症には含まれず、「自律神経失調症」もしくは「身体表現性障害」に分類されます。(例:ストレスがあって胃の痛みがあった時。胃潰瘍(身体疾患)があれば心身症、身体疾患が検査で否定的なら自律神経失調症(機能性ディスペプシア、もしくは身体表現性障害となります)
とはいえ、対策の方向性は(内科治療の必要の有無を除き)共通点が多いため、解決のためには、ある程度大まかに「こころの不調が体に出る」症状とまとめたほうが、対策がすっきりするようにも思われます。
「こころの不調が体に出る」症状は様々な場所に出現しますが、原因が内科ではっきりしない場合は、いわゆる「自律神経失調症」を想定します。(小児科などで、「これはストレス(によるもの)です」と言われる場合が、これに該当します)10代までは、ストレスや葛藤を言語化することが苦手なことを背景として、ストレスの反応が、こころの不調より、からだの不調の形で出現する場合が少なくありません。この場合内科的な対応では効果に限界があることが多く、心療内科的な対応が必要になります。
夜尿症(おねしょ)には心理的要素が大きいことが指摘されています。その場合、しつけ等、プレッシャーをかけることが逆効果になることが少なくありません。無理にしつけるよりも、まずは家でリラックスできる(緊張しない)状態を作っていくことが望まれます。
チック症状は、器質的な要素もさることながら、心理ストレスで悪化することが言われています。そのため、無理にやめさせようとすると逆効果になってしまうことが少なくありません。まずは家や学校でのストレスを減らし、特に家ではリラックスできる環境を作っていくことが望まれます。
青少年期には、抱えきれない葛藤などから自傷行為が出ることがありますが、特に「リストカット」は有名で、かつ関わる人を動揺させやすい症状のように思われます。いわゆる「危険信号」のこともある一方、人によっては、抜毛などと同様の、「耐えにくいストレスへの自己治療(痛みの刺激で苦悩から一時自由になる)」の場合もあり、背景は様々です。
心療内科的には、「どんな理由でリストカットを行ったか」その背景と理由を大事にし、他の症状(うつ症状の強さなど)も合わせてみていくことで、リスク判定や対策の模索を行っていくことになります。周囲がざわつくとかえって本人が追いつめられてしまう場合もあるため、なるべく冷静に、一方で必要な対応を行っていければと思います。
抜毛はストレスへの反応のひとつである一方、(痛み刺激で苦悩から一時自由になる)自己治療の側面もあります。また、初期は自己治療でも、次第に習慣(くせ)になってしまう場合もあります。
初期であれば、ストレス環境への介入や、抜毛以外の対処法の模索が重要になるでしょう。習慣になっている場合は、対処法を模索しつつも、「あえて習慣をやらない」(暴露反応妨害法的な)対応が必要になることもあります。背景には、学校生活等での「緊張・ストレス」があるため、リラックス法、ストレス対処技能の獲得が重要になります。
病態等によって異なってきます。10代の方で多い「適応障害圏」の場合は、薬の効果は限定的であり、あくまで補助的に用いるという考え方になります。そのため、効果と副作用のバランスを見て使用・継続の有無を決めていくことになり、使わないという選択肢も出てきます。
ただし、来院される場合の多くは現状が「苦しい」状態のため、その打開のためにくすりが必要と考えられる場面は少なくないともいえ、個別に検討していくことになります。
全般的に「副作用が出やすい傾向があり」「ストレス要素の比重が大きいことが多い」ため、成人と比べ、より「副作用の少ない薬を主体に」慎重に用いていく方向となります。漢方薬や、依存性のないタンドスピロンなどを用いることが少なくありません。ただし、強迫性障害・うつ病・統合失調症など、充分量の薬の使用が必要な病態の場合は、その限りではないと思われます。
10代の特性、ストレス要素が大きい特性を踏まえ、10代では、まず副作用の少ないことが優先されることが多く、その中で、漢方薬は合致する点が多く、特に治療初期では大きな選択肢になります。ただし効果には個人差あり、向こうの場合は、他の薬を検討していくことがあります。
子ども支援の一環として行われている、地域・自治体等が主催して(月1-2回ほど)「無料もしくは低価格の食事を提供しつつ、集まる場」のことです。「子どもの貧困対策」の一つとして行われ、ここ数年で大きく普及してきています。府中市でも数か所で実施されています。
どちらも一長一短であり、その人の個性、状況等によって異なってきます。
普通級の長所は、同年代との幅広い交流があり、他の子どもと同じ学びの機会が提供されることです。一方で、個性の違いから、勉強などが負担になり過ぎたり、同級生のからかい等にあうなどして、いわゆる「不適応」「二次障害」が発生するリスクがあります。特別支援級はその逆で、手厚いケアで「守られる」長所の一方で、同級生たちとの「対人交流」の機会が限られ、進路も一定の制限を受ける可能性があることになります。
「他者にもまれての成長」と「サポートを受けて傷つきを防ぐこと」のどちらを優先すべきか、その人の個性により異なってくると思われます。そして、ご本人の希望が尊重されることが重要と考えます。
「無理して」は原則、よくないと思っていただければと思います。確かに、登校するには「不安に慣らす」脱感作は必要なのですが、慣らす負荷が強すぎると逆効果になります。そのため「無理のない範囲で」「体調を整えて」「本人の意思がある状態」で行うことが重要です。無理に行かせてうまくいかないことが続くと、かえって学校への「予期不安」が強まり、悪循環になりやすいと思われます。
この場合でも体の原因(器質因)の除外は重要と思われますが、学校の前のみであれば、ストレスの反応による「自律神経失調症」の可能性が高いと思われます。この場合は、内科的な治療は効果がないことが多く、その時は心理的なアプローチが重要になります。
ストレスが影響しての「起立性調節障害」の可能性が高いと思われます。内科でも「起立性調節障害の薬」はありますが、心理・ストレス要素が強いと効果が出にくいのが現状です。その時は心理的なアプローチが重要になります。
学校関連のストレスに対しての「適応障害」が一番に想定されます。基本的には無理をさせないことが重要ですが、出席日数などの件もあり、中学か、高校かによって、取るべき対策は違ってきます。
不登校の原因として、学校ストレスへの「適応障害」が多い一方で、ストレスがなくても不調が続く場合があります。器質因を除くと、その場合「うつ病(脳機能の不調)」が想定されます。この場合は薬の治療が有効の場合があります。
学校ストレスへの「適応障害」の中で、背景に、対人面がうまくいかず、慢性的にストレスがたまりやすいことがあり、その場合、生来の「発達障害」の可能性が否定できません。その場合、学校は無理を指せず、一方で、心理検査などを行い、発達面の精査を行うことが有効な場合があります。
スクールカウンセラーは心強い制度なのですが、「一人しか担当がおらず、学校で合う必要がある」制約のため、「合わない」「学校に行けない」等の場合、うまくいかない場合も少なくありません。その場合は、外部の相談できるところを検討していくのが、現実的と思われます。
「圧力をかけない」「根っこのところで信頼する」の2つかと思われます。
(仮に反抗期でしっかり答えないとしても)学校に本当は行かないといけないなどの葛藤をすでに持っている場合が大半であり、そこに正論での「圧力」をかけても、かえって追い詰められ悪循環になってしまいます。また、「学校に行きたいが行けない」こと等により、自己肯定感が揺らいでいることが多いと思われます。そこで家でも「学校くらい行かないと」等、条件がなければ信頼しないとの本音が見えてしまうと、さらに肯定感が揺らぎ、悪循環にはまってしまいやすいと思われます。
環境や外部(同級生など)はコントロールしにくいため、せめて家では、「自分は間違っていない」と思える環境であることが望まれます。
原因によって異なります。うつ病・統合失調症などが背景の場合は、薬の必要性が高く、かつ多くの場合改善が見込まれます。ADHDの場合、元の特性に関し、相性があえば薬の効果が見込まれます。「適応障害圏」の場合は、薬は補助的な役割となり、環境調整など、他の方法を並行することが望まれます。
原因により異なります。うつ病・統合失調症等の場合は使う事が望まれます。ADHD・適応障害圏の場合は、効果(社会適応の改善も含め)・副作用のバランスによります。ただし、現状がつらく、かつすぐの環境調整が難しい場合は、薬により、状態を緩和することが有効な事は少なくないとも思われます。
「圧が少なくリラックスできる環境であること」一方で「生活リズム、活動は維持すること」と思われます。土台として、(外では落ち着かなくても)家では休養でき、徐々にでも改善できることがあります。一方で、生活リズムが慢性的に乱れたり、勉強や活動がなくなってしまうと、いざ改善して学校に復帰したいと思った時に、リズムや勉強の関係でうまくいきにくくなってしまいます。家で罪悪感なく過ごしてもらう、一方で、リズムや活動はできるだけ維持していくことが重要と思われます。
不登校の小中学生の方のための、学校への復帰を目標に、慣らすために中間的に通う教室であり、市長村の教育委員会により運営されています。(府中市では「けやき教室」があります。)学校より少人数であり、かつ小中学生では、参加が「出席扱い」となるため、学校復帰の中間段階の「慣らし」などに活用すると有効な事があります。
不登校の方が通う場所であり、市町村ではなく、NPO法人など各団体が自主的に運営を行っています。野外活動など、様々な活動を行っているところがあります。一方で適応指導教室と違い「学費」がかかり、「出席扱い」と認められるかは、学校側の裁量になります。
市町村(教育委員会)が絡むかの違いが大きいです。
「適応指導教室」は教育委員会が関係しており、費用が掛からず確実に「出席扱い」になること、公立学校側との連携が密に行われることが長所です。一方、活動内容の制限があること、学校復帰が前提であり、人によってはストレスを感じる場合があることが見られます。
「フリースクール」はその逆で、自由な環境で幅広い活動ができうることが長所ですが、学校との連携は少ない場合があること、「出席扱い」かは学校の裁量になること、学費がかかることが弱点になります。
学校側の判断になります。近年では出席扱いと認められる場合が増えていますが、絶対とは言えない面があります。そのため、フリースクール側、学校側の双方に、事前に問い合わせるといいでしょう。
「利用できるか」「出席扱いになるか」の2つの課題があります。市町村により、利用できるかが異なることがあるため、まずは住んでいる市町村への問い合わせをお勧めします。また、出席扱いになるかは私立中学側の判断になるため、その点も事前に問い合わせるのがいいでしょう。
学校に行く意欲はあるが、不安や体の症状などで教室には入れない場合、保健室などに通う「別室登校」を行う場合があります。主には「トラブルがあり教室に通えないとき」「不登校から復帰の前段階」の二つの場合があります。
前者では、別室登校と並び、元のトラブル、ストレスの解決が求められます。後者では、体調を見つつ、無理ない形で段階的に行っていくことになります。中学まででは「出席扱い」になることが利点ですが、一方で、同級生がいる中自分だけ別の行動を続ける事にストレス等が出現する場合もあり、個別に適応を考えていくことが望まれます。
中学ほどは行われてはいないと思われます。背景としては、高校は中学と違い「科目の単位の所得(授業への出席)」が重要であり、別室登校が、科目への出席と認められないことがあります。もちろん「中間段階」として一時的に行うことはあるのですが、進級を考えると、中期的には授業への出席が必要になります。
学校に通う代わりに、主に自宅で学習、レポート提出等を行って学習するタイプの高校です。一部登校(スクーリング)が必要となります。登校日数は学校によって大きく異なり、多い所では週3-5回、少ない所では年1週のみのところもあります。学習を通じ、必要な74単位を所得(+30単位時間の特別活動に参加、3年以上在籍)すれば卒業可能で、「高卒認定資格」を試験で獲得すると、一部の単位が認められます。
制約が少なく、学校に行きにくくても卒業を目指せる一方、自己管理が必要になること、ともすると他者との交流が限られてしまうことが注意点です。全日制高校で出席日数の関係で進級や卒業が難しくなった場合に、通信制高校に転学し、卒業を目指すことがあります。
夜間等の、特定の時間(1日4時間程度)に定期的に通って学ぶ高校です。以前は「定時制=夜間」が大半でしたが、ここ最近では、日中(朝・昼)に行う学校も増えてきています。社会環境の変化や、通信制の選択肢も出てきたこと等を背景として、特に夜間の定時制高校の生徒数は減少傾向であり、統廃合が進んでいます。一方、外国出身の方の学びの場としての意味が、最近では指摘されているようです。
一番大きいのは「通学の義務があるか」です。定時制では原則、学校での定期的な出席が単位所得に必要ですが、通信制はそうではありません。通信制でも「サポート校」などに通学するスタイルのところもありますが、多くの場合義務ではなく、登校困難になったときは、家での学習に切り替えられる場合が多いです。
以前は「大検(大学入学資格検定)」と言われたもので、「高校卒業者と同等の学力があるか」の認定であり、(年2回の)試験により所得します。年度末までに満16歳以上であれば(すでに大学入学資格を持っている人以外)高校在学中でも受験、所得可能です。ただし、16-17歳で所得しても、大学受験は満18歳(いわゆる「高校3年の年」)までは受験できない。高校側の判断によっては、高卒認定資格試験に合格した単位の一部が、高校卒業に必要な単位として認められる場合があります。
「高卒認定資格」はあくまでも「高校卒業者と同等の学力があると認める」資格であり、高校卒業とイコールはありません。この資格で大学を受験、進学できますが、仮に大学を中退となった場合、最終学歴は中卒(ただし、「高等学校卒業程度認定資格合格」と履歴書に書くことは可能)となります。なお、まず「高卒認定資格」を所得したうえで、その後高校卒業することは可能です。