うつ病等で休職のさい、復職へ段階的リハビリを要するほか、復職後再燃を防ぐことが重要です。
この2つのための総合的なリワークプログラムです。活動に慣らすほか、復帰後に備えてのストレス対処力改善をを目指します。
徐々に回数(負荷)を増やしていき、最終的には週5回6時間のプログラムを継続し、会社復帰につなげていきます。
リワークプログラムとは、うつ病等で休職している方が復職のために行う、定期的に通所して行うリハビリのプログラムです。うつ病等で休職している方の治療としては、抗うつ薬などの「薬物療法」と、初期の休養から、中期以降次第に活動を増やしていく「活動指導」の2つがありますが、外来診察のみでは、特に「活動指導」の面で、ご本人の自主性に任される点が多くなり、その結果休職が長期化したり、復職で急に負荷が増える事から再燃する恐れが高くなることがあります。
その弱点をカバーするために、診察と組み合わせて行うリハビリのプログラムが「リワークプログラム」になります。定期的に通いながら1日数時間の活動を行うことで、「活動を増やすこと」「ストレス対処法を身につけること」などを行っていき、確実な職場復帰につなげるとともに、ストレス対処の方法論などを活用して復帰後に「再燃せず」仕事を継続できることを目指します。
都心部と比べて、多摩地域では、特に診療所でのリワークプログラム提供は十分とは言えない現状があると考えます。このプログラムを通じて、多摩地域の働く方のこころの問題への貢献ができればと考えます。
復帰後、ストレスがかかっても再燃しない状態を作るためには、負荷に耐えられる状態(復帰準備性)を作っていくことが重要です。
リワークプログラムに定期的に通所することにより、他者との交流・思考・運動など総合的な「活動量」に慣らしていき、かつ日中活動を土台としての「生活リズム」の確立を図ります。
そして、活動を続けていくことを通じて、復帰後負荷がかかっても大丈夫と思える「自信」をつけていくことを目標とします。
ともすると、うつ病の治療やリハビリは、相談しにくい面もあり、孤独な取り組みになってしまいがちです。
その点、リワークプログラムに定期的に参加することで、担当スタッフと定期的に相談し、方向性を見定めていけることが見込めます。
また、同じ悩みや葛藤を抱えつつ努力している「仲間」にあうことで、自分の状況を相対的に眺め、安心感を持ちつつ、復職という大きな目標への取り組みの継続を図っていけることを期待します。
卒業後は、定期的に、リワークを卒業された方の集まりもあり、復帰後の心の支えになるとのお声も聴いています。
職場復帰は大きな目標ですが、より重要なのは、復帰後ストレスがかかっても再燃せず、仕事をやりがいを持ちつつ継続していくことです。
そのために、負荷に注意しつつも以前を振り返り(内省)今後のあり方に生かしていくことが重要ですし、復帰後かかってくるストレスへの対処法を身につけていくことも有効です。
これらをリワークプログラムの中で行っていきます。
「リワークを受けたいけど、これまでの主治医との関係が切れてしまうことが心配」との声を多く聞きます。
当院「こころリワーク」は、他院通院中の方でも、後述の手続きを踏んだうえで、外来を転院せず、主治医を変えずに参加していただくことが可能です。(ただし、病状が不安定等の場合、外来とリワークの連携の観点から転院をお願いする場合があります)
もちろん、当院受診中の方の利用も可能です。
特に専門機関のリワークプログラムでは、より深くプログラム行うこと等を背景に、開始までに時間がかかり、期間も半年など長期に場合が少なくありません。
一方、多くの復職をめざす方にとって、より「素早く」「集中して」取り組むことが重要とも思われます。
。当院では、より幅広い「復職を目指す方」に貢献するため、ご相談後早期のリワーク開始と、2か月を1周期とした短期集中でのプログラムに取り組んでいます。
リワークプログラムの目標として「確実な復帰」は重要ですが、それ以上に「再燃しない中での仕事継続」が重要と考えます。
その観点から、「ストレス対処法の獲得」「振り返りと今後への反映」を主体にしたプログラムを多くしています。具体的には、院長監修のもとでの、「認知行動療法」「ACT(アクセプタンス&コミットメントセラピー」「マインドフルネス」等のプログラムに力点を置いています。
また、その中で、様々な視点、意見を取り入れるための集団作業(グループワーク)にも重点を置いています。
こころリワークは、週5日、月曜日から金曜日の午前および午後に、各3時間、計6時間実施されます。プログラムは、曜日、時間帯ごとの11の内容(集団認知行動療法、ストレスマネジメント、内省プログラム等)で構成されています。
うつ病、適応障害等で仕事復帰を目指している方が対象になります。具体的には
のほか
などが対象になります。
なお、離職期間の長い方、就職経験のない方に関しては、より時間をかけたプログラムのある「就労移行支援事業所」の活用をお勧めいたします。
当院受診中の方については、主治医と相談のうえ、参加の有無について決定していきます。(集団プログラムには相性があるため、その点も含め検討します)
これまで他院受診中の方は、以下の流れで、ご参加いただけます。
ご希望の方は、まず見学のご予約をお願いします。ここで、見学、説明会の日程を設定いたします。
その際は、当院の電話ではなく、下の「リワーク専用電話」にお電話ください。
リワーク電話施設見学、当院のリワークプログラムの説明、関連する制度などの説明を行います。
この際、かかりつけの先生への診療情報提供書用紙をお渡しいたします。③当院初診予約までに、診療情報の準備をお願いいたします。
診療情報ができ次第、当院代表電話042-319-7887に、リワーク希望での初診予約を行います。
そのさい、「リワーク希望であること」「リワーク個別説明会をすでに受けていること」「診療情報の作成がすんでいること」をお伝えください。
当院電話当院医師が診察を行い、症状の回復度合い、活動量などを診察します。そのうえで、当院リワークプログラム利用が適しているかを判断します。
(集団プログラムとの相性や回復度など望ましくないと判断された場合は、利用をお断りする場合があります。)
④でリワーク適応と判断の場合、リワークオリエンテーションを行います。
当院リワークスタッフと、実際の利用頻度や目標などを相談し、メンバー登録を行い、初回利用日を決めます。
実際にリワーク利用を開始します。
はじめは週2回半日など、少ない量で慣らしていき、相談しながら徐々に回数、時間を増やしていきます。
健康保険の適応になります。半日プログラムの場合は3割負担で約1200円(1割負担で400円弱)、全日プログラムの場合は3割負担で約2150円(1割負担で700円強)が目安です。回数が比較的多くなることが想定されるため、自立支援医療を希望される方は、主治医にご相談ください。なお、全日プログラム参加の方には昼食が提供されます。
基本的には、はじめは少ない回数、時間から始めていき、慣れていき次第、徐々に回数・頻度を増やしていき、復帰に備えていきます。
状態や課題によって、望まれる参加の仕方が変わってくると思われます。代表的な例を、以下に示します。
この場合は、「負荷に耐えられる状態」を徐々に作ることが重要であり、「段階的な活動性の改善のリハビリ」が大事です。
そのため、まずは午後のプログラム(活動性改善)に参加し、徐々に慣らし週5回まで頻度を増やします。その後午前のプログラムも追加(週5回全日)、復帰準備性の獲得を図ります。
この場合は、改善は早い一方復帰後の再燃リスクあり、予防としてのストレス対処技術の獲得が重要です。
そのため、早期(休職1か月ほど)から午前のプログラム(ストレス対処技術)に週3-5回参加し、その後午後のプログラムを追加し、復帰準備とします。
この場合は、再燃予防のために細心の注意が必要であり、また、職場からも客観的な「復帰準備性」の獲得を求められます。
そのため、慣れ次第、週5回、全日のプログラムを継続していき、活動性・ストレス対処技術の双方から「復帰準備性」を獲得することが重要です。
具体的には、以下のような12のプログラムで構成されます。(時期等で、一部変更になる場合があります)
薬物療法と並び、うつ病の改善、再燃予防に効果があるとされる「認知行動療法」を集団で学習します。
「考え(認知)」や「行動」のくせがストレス蓄積やうつ発症・再燃のリスクとなるため、そのくせを見つめなおしつつ調整することで、症状の改善、再燃予防を目指します。
ストレスとこころの不調・症状は強く連動します。逆に、ストレスへの適切な対処(ストレスマネジメント)が身につけば、再燃予防に大きな効果を持ちます。
ここでは、自分のストレス対処の方法や弱点を振り返り、改善を繰り返していくことで、復職後の再燃予防を目指します。
復職する場合、しばしば同じ職場に戻ることになり、仮に転職や配置転換をしても似た場面にしばしば出会います。その時の再燃を防ぐため、以前の振り返りを行います。
また、自らの長所・短所を振り返り、復職後にどう長所を生かし、短所をカバーするかを考えていき、再燃予防と仕事への動機づけを図ります。
多くの仕事において重要な対人交流、とかく「センス」等で語られがちな分野ですが、振り返りと、反復練習でカバーできる部分は多いと我々は考えます。
ここでは適切な自己主張(アサーション)や「聞く・考える・伝える」の3段階の技術などを練習し、対人交流技術の改善・自己肯定感の改善を図ります。
うつ病や適応障害といった、自分のころの不調について知ることは、その対策を日々行っていくために有効です。
このプログラムでは、うつ病・適応障害について、概念や治療法から始まり、周りへの説明法や社会資源など、周辺の事項も含めて学んでいきます。
こころの状態とからだの状態は、特に各種臓器に走っている「自律神経」を通じて密接に結びついています。そのため、生活リズムや食事などの生活習慣から、間接的にこころの状態の改善を図ることが期待されます。
このプログラムでは、生活習慣を改善するための様々なコツについて扱います。
うつ状態になると、物事の辛い面に目が行き、楽しみを忘れ悪循環になります。そこで認知行動療法の一つ「行動活性化」では、やりがい・楽しみのある行動を増やすことで、うつ状態の改善を図っていきます。ここでは楽しめる「遊び」を実践、忘れかけていた「楽しさ」を思い出していきます。
活動を増やす「行動活性化」は、症状改善のほか、復職後の再燃予防にも重要です。そのために適度な運動が有効ですが、苦手な方も多いと思われます。
このプログラムでは、運動の持つ本質的な意義と、実際の継続のコツ等を学び、復帰後も含め生活に運動を取り入れることを図ります。
集団認知行動療法では、定型的な認知行動療法を全般的に学びますが、実生活にどう生かすかもまた重要です。
このプログラムでは、「睡眠」「疲労・ストレス対処」「他者や過去とのかかわり方」「人生設計の再検討」をテーマに、より具体的な形で認知行動療法の生かし方を模索します。
復職後、残念ながらすべての人が、うつ状態やこころの不調に理解あるわけではなく、その中で生き抜いていくことが必要になります。
このプログラムではアドラー心理学をもとに、他者に影響されすぎず軸をもって生きていく方法論などを模索します。
復帰後、やりがいを失わず仕事を続けるために、様々なストレスに柔軟に対応する「こころの柔軟性」が重要です。
このプログラムでは、マインドフルネスを活用した新しい認知行動療法「ACT(アクセプタンス&コミットメントセラピー)」をもとに「こころの柔軟性」の獲得を目指します。
現在、精神医学に加え様々な分野で「マインドフルネス」が言われます。一方、この分野は理論のほか、実践することが大事です。
ここでは実際にマインドフルネスを実践しつつ、リラックスにつながるアプローチを行い、復職後もマインドフルに生活、仕事を行っていく事を目指します。