昨今言われる「コロナうつ」とはどんなものか?その特徴と対策について記しています。
2020年3月以降、新型コロナウイルスの影響が世界全体に広まり、日本でも4月7日に緊急事態宣言が発令、本日(5月3日)現在も継続しています。各種の感染予防の対策が言われ、制限の強い生活が続く中、いわゆる「コロナうつ」との言葉が、最近広まってきているように感じられます。
一方で、精神科の診断基準にはまだ「コロナうつ」との言葉はありません。では、精神医学的にはこの「コロナうつ」とはどのようなもので、どのような対策・治療が考えられるのか?その点をまとめていこうと思います。
端的にいうと、「コロナウイルス関連のストレス」を誘因とした「うつ状態(適応障害もしくはうつ病)」のことです。現段階では、大半は「ストレス反応」いわば適応障害と思われます。ただし、長期化すると、「うつ病」に移行する危険も、少なくないと思われます。
対策としては、やはり「適応障害」の対策に準じると思われます。一番には「(コロナ関連の)ストレスへの対処」、そのうえで必要な場合に、くすりの治療の併用も検討することになるでしょう。
では、どのように、「(コロナ関連の)ストレスへの対処」をしていくか?次にその点を見ていきたく思います。
後述するように、コロナ関連では、様々な角度からのストレスがかかることになり、その対処が非常に重要になります。
まず、様々な変化を余儀なくされ、その問題を「解決」していくことが重要になります。解決しない限り問題は残り、放置すれば問題はどんどん増え、対処できなくなってしまいます。
一方で、「解決が難しい」問題も少なからず出てきます。例えば、飲食業の方において、社会情勢上、どう解決に取り組んでも、以前のような来客・収益の確保は困難です。こうした場合、無理に「解決」を図り、実現できないジレンマにはまりすぎると、精神的に過大な負担になる恐れがあります。
では、どうするか。「解決できる問題は解決し、それが難しい問題は受け入れていく」ことになります。ここで重要なのは、その問題が「解決すべき問題」か「受け入れるべき問題」かを見極めていく「選球眼」になろうかと思われます。
コロナウイルス関連のストレスは、病気そのものだけではなく、生活面のストレス、社会情勢の影響など、周辺の様々なストレスも含まれてきます。そしてその人の性格(どんなことが気になるか)や立ち位置(業種、収入状況など)により、どのストレスが大きく影響するかが変わってきます。
大きく分けると、次の4種類に集約されるかと思われます。
これから、この4つのストレスとその対策につき、まとめます。
3月末の、有名なコメディアンの方の急死が、この病気の怖さを強く印象付けたように感じます。これまで元気に活動した方が、ひとたび感染すると急に重症になり命を落とすことがある。確かに、欧米諸国と比べると日本では死者数は少ないとの指摘もありますが、今後のリスクも含め、それ自体が強い不安やストレスを引き起こすと思われます。
また、これまでの災害と大きく異なる面として、この感染症では「自分の危険」のみではなく「他者にうつすことがある」こと、いわば被害者になる危険のみならず、意図せず「加害者」になってしまう危険があることがあります。このことが、他者とのかかわりにおいて、強いストレスをしばしば引き起こしているように思われます。
解決を図る面としては、よく言われるように、「対人距離を取る」「マスク・手洗い等の感染予防をしっかり行う」事の徹底に尽きると思われます。「やれることをやった」ということは、万が一望まれない結果になった際にも、後悔を減らす意味があろうと思われます。
一方で、いくら感染対処を行ってもリスクは0にはなりません。「リスクが0でない」ことにとらわれてしまうと、精神的なストレスも加速度的に増えてしまいます。「打てる手をひととおり打った」ならば、あとは現実・未来を受け入れていくことが、つらいですが、求められてくるのでしょう。
今の段階でも、影響の強い業種、飲食業や舞台芸術関連の方から、強い影響と運営・生活への危機の話が出てきています。もし長期化すれば、自営の方のみならず、労働者の方に関しても、失業の増加など、密接な影響が出ることが懸念されています。今後不況(場合によっては恐慌)の恐れがあることも、先行きへの強い不安になっています。
できる対策としては、業種や仕事内容の工夫(現状への適応)をしていくことや、各種の補助金制度の活用を模索することがあります。新たな業種を模索することも、制度を知り時に複雑な書類に対応することも大変ですが、ストレスの軽減には効果が見込まれます。
立ち位置などによっては、これらの解決策が機能しにくい場合も想定されます。そうした場合に「受入れ」が重要でも、それを求めることは心苦しい面が強くあります。対処を行っても不眠など症状が出る場合は、心療内科への受診も、選択肢の一つかもしれません。
「stay home」の標語が一般化しているように、感染予防の観点から、休日も、家で、人には合わない生活が必要になっています。また、在宅勤務が一般化することで、平日も、家での生活が主になっている方も少なくありません。特に、対人交流やアウトドアでのストレス発散をしていた方にとって、この変化は大きなストレスになっているようです。
まずは、労働や休日の生活のあり方が変わったことに関しては、変えようがないことのように思われます。この点は、受け入れることから始める必要があるようです。
そのうえで、「家にいる」制約の中での、自分に合ったストレス対処法を模索していくことが、解決策になると思われます。日中に活動をしリズムを保つこと、ストレスを発散すること、リラックスした状態になること。これらを、自宅での活動でどう実現するか。身近なことでも構わないので、様々に試していき、その中で「自分に合った方法」を見つけていくことが重要になるでしょう。
コロナウイルスの影響は、マスコミ報道や国民世論にも大きな影響を与えています。テレビでは連日、ウイルス関連の話題が主体になっており、一方、ドラマ等は収録の困難もあり、休止になる事も増えています。
また、世論的にもウイルスの「加害者性のリスク」から、なかなか他の災害後のように「一つになって乗り切る」方向に行きづらくなっていると思われます。社会全体のフラストレーションが、一部の人への強い批判につながることも発生しています。特に「周りの空気に影響を受けやすい人」言い換えると「共感性が高い人」が、影響を受けているようです。
まずは(周囲の声ではなく)自分自身で、今の状況について、ありのままに見ていくことが重要ではないか、と思われます。今起こっていることは変えられませんが、それをどのようにとらえるか(認知)は、変えようがあることになります。
そのうえで、様々にあふれる情報の中で、自分で選ぶべきと思った情報を選んで、影響を受けていくことが重要と思われます。様々な丈夫尾の中には、極端であったり、時には悪意が含まれるものもあります。その中で、未来に前を向くには、どのような情報に「影響される」のがいいのか、見極め、選んでいくことが重要だと思われます。
「コロナうつ」とは、コロナウイルスやそれに関連する出来事へのストレス反応(うつ状態)のことです。病気そのものだけでなく、今後へ不安、変化や制限へのストレス、社会的風潮からの影響も含まれ、性格や立場などによって、どの部分に影響を受けるかが異なってきます。
コロナうつを防ぐためには、これらのストレスに対処し、影響を減らすことが重要です。解決できることは解決しつつ、どうにも解決しにくいことは受け入れることが重要です。そのためにも、何が解決できて、どれは受け入れる必要があるか、その見極めをしていく分析力が大事になるでしょう。