統合失調症:薬を続けつつ、生きがいへの日々を。府中・調布エリアの心療内科・精神科、府中こころ診療所

心療内科・府中

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医学的な概略

 全人口の約1%、100万人がかかっているとされる病気です。いまだ詳細は不明の面もありますが、ほかのこころの病と比べても「脳がバランスを崩す病気」の特徴が強く、治療・再燃予防として薬物療法が大きな柱となります。そして、並行して生活面のリハビリや症状への対策、社会資源(サポート)の利用などを組み合わせていきます。

理解のために

専門書などを見ると、様々な、関連が見えにくい症状が書かれており、「結局どんな病気なのか」全体像をつかみにくいとの声を聞きます。(そしてわかりにくければ、治療やリハビリの意欲にもつながらない)まだ仮説なのですが、診断、治療からリハビリまで一元的に理解するために、次のようなモデルを提示します。
① 脳の不調(原因不明)→伝達物質の乱れ(ドーパミン増加など) →刺激に過敏な状態になる→各種の「陽性症状」の出現
②過敏な(興奮)状態が続く→脳が疲弊して痛む→生活面・感情面の障害が出現(陰性症状群)
やや強引ですが、 音の刺激に過敏になる→幻聴の出現 周囲のサインに過敏になる→被害妄想の出現 などと考えると、多彩な陽性症状も「脳が過敏になる」ことから派生しているとまとめられます。 また、「未治療期間が長いほど生活面の障害が出やすい」との最近の知見も、おおよそ②と合致します。 このモデルを念頭に置くと、症状や治療について、理解しやすいかと思います。

症状

次のように多彩な症状がありますが、大まかに「陽性症状」と「陰性症状群」の二つに分け、前者は①によって、後者は②によって生じていると考えるとわかりやすいです。

(陽性症状の例)

●幻聴→実際にはない声、音が聞こえると感じる
●妄想→「悪の組織に監視されている」等独特な考えに支配され、訂正が困難
●易刺激性→些細な物音などに強く反応し、激昂するなど過剰に反応する
●興奮→寝ずに大声を出さずにいられない等、興奮が止められない
たとえるなら「脳がオーバーヒートした状態」とも言えるでしょう。

(陰性症状群の例)

●陰性症状→自分からやる気が出ない。人とかかわらない等
●認知機能障害→考えたり物事を行うのが、以前より苦手になる
●感情障害→感情が乏しくなる、慢性的に不安や落ち込みが続くなど
車のエンジンもオーバーヒートさせすぎると傷んでしまうように、厳しい陽性症状の時期(急性期)が長く続くと脳にもダメージが来る、とたとえられます。 (だからこそ、ダメージが出る前に、早めに治療を始めたいところです)

診断

米国の診断基準(DSM-Ⅳ)では、幻覚、妄想などが2つ以上1か月続き、かつ社会的機能が以前より低下しているなどが基準となります。この要件をベースとして、それだけでは判断が困難な場合は、より詳細に病歴や症状を聞き、また、同様の症状が出るほかの原因(薬物使用、体の病気など)を除外して診断を行います。

治療

上図の①②とも、もとには「脳の化学物質の乱れ」があるため、そこを整えるための薬物療法(抗精神病薬)が、治療・再発予防の双方にとって土台となります。(残念ながら薬は「化学物質の乱れ」に有効ですがそのもとの「脳の不調」への効果は示されておらず、服用を続けることで再燃を止める必要があります)ただし薬物療法だけでは「生活面の困難」「過剰なストレスによる再燃の恐れ」などは残るため、そこを補うために
●精神科リハビリ→陰性症状、認知機能障害の改善
●幻聴・妄想への認知行動療法→残った症状の影響を弱め、生活改善、再燃リスク減
●落ち込みへの認知行動療法→生活の改善、自殺予防
●各種の社会資源(サポート)利用→負担を減らし、再燃予防と社会復帰促進
●生活技能訓練→対人ストレスを減らし、対処しやすくなり、再燃予防と社会復帰促進
●病気、症状の勉強→自分の状況・対処法を知り、状態のコントロール力をつける
といった心理社会療法を組み合わせていきます。

家族の役割

薬で「過敏になる」ことを抑えて症状を抑えているわけですが、それも完全ではなく、「ストレスにより過敏になり再燃しやすい」特徴は残っています。そのため、ご本人の取り組みとしては「ストレスにうまく対処する」練習が大事ですが、周りの方(特にかかわる機会が多いご家族)がこの病気を理解し、ご本人のストレスをできるだけ減らすことが、病状の安定にとって非常に重要です。可能ならば、「統合失調症とはどんな病気か」「様々な状態にどう対処するか」を勉強できると有効です。 また、この病気は長い付き合いの病気であり、家族だけですべてを抱え込むと「燃え尽き」を招いてしまいます。そのため、ご家族も時には休養など「息抜き」をしたり、また、家族会など、悩みを話し合える場をうまく活用するのも一案でしょう。

病識について

統合失調症を考えるうえで外してはならないのがこの「病識」です。(細かい定義は諸説あるのですが、ここではシンプルに「病気を受け入れ、かつ前を向くこと」と定義します) 薬物療法を継続して再燃を防ぎ、心理社会治療を組み合わせることで光が見えてくるのですが、この双方とも「病識」があって初めて成立します。逆に言うと「病識」がない状態では治療が進まず・非常に厳しい状況に至ります。また、不調の時ほど「病識を見失った」状態に至りやすいとも言えます。 この「病識を欠く」現象が統合失調症特有なのか、ほかの慢性疾患と共通したものなのかは、まだ結論を見ていません。ただ、臨床経験から、「病識を欠く」と言われた人の中に「実はわかっている」けども「受け入れるわけにはいかない」と葛藤している人が少なからずいるのではないか、と考えています。 「受け入れたらもう今後は夢もなく真っ暗だ」 「受け入れたところで結局入院が続くだけ、何もいいことはない」 など、「受け入れても何にもならない」とのイメージが、病識形成を妨げている場合です。この状況は、何とかしなければと思います。そして徐々にですが、変わってきているとも思います。この病気になっても、様々な角度から全力で取り組み、未来を変えていけた人が一人でも多く出てほしい。そうすれば、これまでは「受け入れるわけにはいかない」と足踏みせざるを得なかった人も、「もしかしたら」と次に進めるのではないか。当院でも、その取り組みの一つとして、集団精神療法(みらい塾)、訪問診療・訪問看護を行っていければと思います。

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