10代の発達障害

 

発達障害に関する話題が、幼少期、学生時代、成人の各段階で注目されるようになってきています。原則「早期発見、早期対策」が重要とされる一方で、早期には気づかれず、中学・高校で、学校生活などの困難をきっかけとして発見されることもあります。そして、治療・対策の重要な点として「二次障害(二次的な精神・行動面の不調)」を防ぐ事が重要ですが、その予防・対策を考える場合には、10代の時の対策が非常に重要になります。

 

定義・発達障害とは

  

幼少期から、「発達の特性」として症状が出現する障害のことを指します。代表的なものとして、ADHD(注意欠陥多動性障害)、自閉スペクトラム障害があります。(なお、その他、学習障害等が含まれます)共通するのは「能力の偏り、得意と苦手のばらつき」等の質的側面で定義されることであり、全般的な知的機能の遅れである「知的障害」とは区別されます。(ただし、合併することはあるとされ、「知的障害を伴わない発達障害」と「知的障害を伴う発達障害」の双方があります)

知的障害を伴わない発達障害の場合、一見して知的の遅れはないが、こだわりや集中困難などの質的な強い特性によって、学習や社会生活に大きな困難が出現し、援助が必要になります。

  

代表的な発達障害①ADHD(注意欠陥多動性障害)

「不注意」「多動性」「衝動性」を主な症状とする発達障害です。具体的には、次のような症状が目立ちます。

  
    (不注意の症状)   
  • ●すぐに注意がそれてしまう(集中が続かない)
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  • ●不注意によるミスが繰り返される
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  • ●片づけ、整理ができない
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  • ●忘れ物、なくしものが非常に多い
    (多動性の症状)   
  • ●落ち着かずじっとしていられない
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  • ●しゃべりだすと止まらない
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  • ●授業中もきょろきょろしたり、歩き回る
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  • ●会話の話題があれこれ飛ぶ
  
    (衝動性の症状)   
  • ●人の話を最後まで聞かない
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  • ●思ったことを(相手を考える前に)すぐ言ってしまう
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  • ●かっとなって相手をたたいてしまう
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  • ●順番を待てない
  

就学前に多動や暴力などで気づかれることもありますが、小学校進学後、「授業や同級生との会話ができにくい」ことで気づかれることが多いといわれます。ただし、比較的軽度の場合は、「個性・性格」の範囲とされ、10代になってから、対人面や暴力などのトラブルを契機に発見される場合も見られます。

  

代表的な発達障害②自閉症スペクトラム障害

「対人交流・社会性の障害」「こだわり(興味の狭さ)の障害」を主な症状とする発達障害です。具体的には、次のような症状が目立ちます。

  
    (対人交流・社会性の障害)   
  • ●目が合わない、表情が硬い
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  • ●場面、状況に合わない行動をとってしまう
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  • ●相手に配慮できず自分の興味のみを話す
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  • ●あいまいな指示がわからない(文字通りとらえてしまう)
  
    (こだわりの障害)   
  • ●特定のことに興味が強く集中する
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  • ●とっさの判断ができず混乱する
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  • ●話し合いでも自分のこだわりに固執して妥協できない
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  • ●細かいことにこだわり過ぎて全体像が分からない
  

表情の硬さや対人面の特徴などは幼少期から目立つため、特に最近では1歳半検診、3歳児検診など、早期発見されることが多いとされます。ただし、比較的軽度の場合は、「個性・性格」の範囲とされ、10代になってから、孤立・いじめ被害や不登校などから発見される場合も見られます。

二次障害について

  

ADHD、自閉スペクトラムの双方に共通しての症状として「二次障害」があります。これは、元の障害特有の症状とは異なり、不適応などのストレスが反復することによって、「二次的」に出現する症状です。二次障害には様々な症状がありますが、代表的な例は、以下のようになります。

  
    (外に出る二次障害)   
  • ●イライラ・暴言・暴力
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  • ●感情不安定、自傷
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  • ●対人不安、重度の緊張
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  • ●他者に対する敵意・攻撃性
  
    (内側に影響する二次障害)   
  • ●慢性的な意欲低下
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  • ●自己肯定感の低下、あきらめ
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  • ●慢性的な身体症状(心身症、自律神経症状)
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  • ●不登校・引きこもり
  

これらの症状が強くなると、社会生活が困難になったり、事件などに発展するリスクに直結してしまう危険が生じます。一方で、これらは「生まれながらの特性」ではないため、環境の調整や早期対応などで予防を行ったり、発生したとしても改善を図る余地があるといえます。(劇的な効果の薬がないとしても)発達障害の早期診断、早期対応が望まれる大きな理由として、この「二次障害の発生・悪化予防」があります。

発達障害への対策の基本:早期発見・早期療育

発達障害への対策の基本は「早期発見・早期療育」です。

  
  • ●苦手をカバーする行動訓練(療育)は長期の反復が重要になり
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  • ●早期に支持的な環境を整え、失敗・ストレスからの二次障害を予防する
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ことが、その理由になります。

  

一方で、症状が比較的軽度の場合は、発見が10代になるなど、やや遅れる傾向が見られます。ただし、社会生活の上で同級生などとの交流の経験は重要なこと、および二次障害を防ぐ事が重要な目標であることを考えると、「気が付いてから早期に」始める事でも、多くの場合手遅れではないと考えます。

発達障害の薬物療法について

  

発達障害のうちADHD(注意欠陥多動性障害)においては、症状自体の改善が期待される薬がすでに3種類使用可能になっており、相性を見つつ薬を使用することで改善につながる場合が多く見られます。

自閉症スペクトラムについては、直接症状を改善する薬はまだないのが現状ですが、落ち込み、イライラ、対人不安などの二次障害を緩和する薬があるため、状態によってはその使用によって、症状や社会生活の改善を図れる場合があります。

  

行動面のトレーニング(療育)について

  

日々の行動・生活の対策の方向性としては、様々な工夫によって「障害の弱点を最小化し、長所を最大限生かす」ことになります。メモを活用してミスを減らす、常にほかの人は何を求めているか理詰めで検討するくせをつける等、様々な生活上の工夫を行うことが可能です。

  

一方で、弱点をしっかりカバーするに至るまでには、様々な場面を活用して十分な期間をかけた「反復練習」が重要になります。日ごろから、学習場面や生活場面で、習慣的にこうした「反復練習」を行っていける環境が望まれます。

  

発達障害と学校教育

  

発達障害のある子の教育について、「普通学級」にすべきか「特別支援学級」を導入すべきか、しばしば議論になります。双方の特徴は以下の通りです。

  

(普通学級の特徴)

  

同年代との交流が多いため、そこから対人交流などを学べる余地があり、苦しいことも含めての社会経験を得られる。一方で、障害特性への配慮には限界があるため、不適応を起こすリスクがあり、その場合二次障害の発生・悪化が懸念される。

(特別支援学級の特徴)

  

障害の特性に合わせたサポートを手厚く受けることができ、その結果、不適応による二次障害のリスクを減らせることが期待できる。ただし、同年代との交流は、普通学級よりは限られるため、同年代や社会に慣れる際に一定の難点が心配される。

  

双方とも一長一短であるため、本人の障害の程度や、本人と学校の相性などを総合して、その人ごとに検討すべき課題と考えます。ただし、二次障害の発生が強く心配される状況においては、より保護的な対応が求められるといえるでしょう。(なお、小学での「通級指導」は、両者のほぼ中間と考えられます)

学校以外の代表的な福祉サポート

  

発達障害(ADHD,自閉スペクトラム等)の診断が確定した場合には、障害の程度によっては、手続等を経たうえで、学校以外に障害支援サービスを受けることが可能になります。代表的なものとして、児童発達支援(就学前)、および放課後等デイサービス(小学生―高校生まで)があります。

これらは、放課後などに定期的に通所し、前述の行動面のトレーニング(療育)などを行うことが期待されています。相性などもあると思われますが、うまく機能すれば、障害のカバーへの有効性が期待されます。

ご家族の関わりの基本(ペアレント・トレーニング)

  

発達障害支援の要点として「二次障害を防ぐ」ことを強調していますが、その土台として「自己肯定感を下げない」(自信を失わせない)ことがあります。そのためには、「周囲から認められる」ことが重要ですが、発達障害がある場合、その特性上「叱られる」等、「認められていない」反応を受けることが多くなりがちです。

そのため、せめて家では「認められている」状況を作ることが重要になります。それを体系化したやり方が「ペアレント・トレーニング」になります。

詳細は専門書をご参照いただければと思いますが、要点としては、本人の行動を「好ましい」「好ましくない」「危険」の3つに分類して、

      
  • ●好ましいことをしたとき→ほめる
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  • ●好ましくないことをしたとき→無視する
  •   
  • ●危険なことをしたとき→制限する

の対応を徹底して反復することになります。

  

これによって、「好ましくないことで注目を集める」やり方を自然に減らし、かわりに「好ましいことで注目を集める」習慣を作っていくことを目標とします。少しの好ましくない行動は受け流しつつ、いいところを徹底して探し、徹底してほめることを続けて、本人の自己肯定感を守っていきます。

  

各年代での発達障害①就学前・小学低学年

  

この段階では、主に「集団生活ができるか」を基準として診断や、教育環境の調整が行われます。ここでは、診断を受ける事での(主にご家族の)葛藤が大きなポイントになります。「一生涯続く特性」であることからの不安が大きいことが推察されます。

  

ただし、一方で、この時期は、まだご本人の「二次障害」は目立つことは少なく、障害自体の症状に対して適切な環境を選び、適切な治療を受けることが重要になります。また、前述のペアレントトレーニングの技法を活用するなど、なるべく本人の自尊感情を高めることがその後に有効です。

  

各年代での発達障害②小学高学年、中学、高校

  

小学校高学年以降、特に中学以降になると、同級生との関係など、社会的に求められることが増大します。その結果、特に発達障害がある場合、学校や家でのストレスが強まり、二次障害が起こるリスクが増大します。この時期に、いかに「二次障害を最小化するか」が、その後にとって非常に重要です。

  

すでに診断を受けている方も、この時期には、特に心理面に注意を払っていくことが求められます。また、これまで診断を受けていない方で、この時期に落ち込みや不適応、不登校などが起きてくる場合には、発達障害の可能性を考慮し、必要時検査などを受けて診断につなげ、適切なサポートを受けられる状態にしていくことが重要になります。

注:当院での対応年齢について

  

当院では、発達障害(注意欠陥多動性障害(ADHD)、自閉症スペクトラム)の診察、心理検査が可能ですが、現段階で、中学生以上の方が対応になっています。小学生以下の方については、専門医療機関の受診をお願いいたします。