こころリワーク:府中こころ診療所

 

当院では、デイケアによるリワークプログラム「こころリワーク」を行っています。これは、

 
  • ●うつ病等で休職中の方への、復帰へ向けてのリハビリプログラム
  • ●平日午前と午後(最大6時間週5回)、様々な集団リハビリプログラムを行う
  • ●復職のみならず、ストレスへの対処力を上げて再燃予防を目指す

ものになります。

こころリワークとは?

こころリワークは、うつ病、適応障害などこころの不調で休職中の方への復職訓練(リワークプログラム)です。原則として週5回(1日最大6時間)、集団で様々なリハビリプログラムを受けていきます。定期的に通所、リハビリを行うことで復職への体力や生活リズムを獲得することのみならず、認知行動療法・ストレスマネジメント・表現練習などのプログラムを通じて、自らのストレス対処や思考・行動パターン、対人交流などへの振り返りと改善を図ることで、復職後の再燃予防力の育成も同時に図っていきます。

このプログラムを通じて、万全な状態での復職を行うことはもちろん、復帰後の各種ストレスへの対処力を養成しての再燃予防を図ります。そして我々としては、様々な内省や改善の試みを通じて、「うつ病で休職した」という経験を、「失敗の体験」ではなく、「未来へつながる経験」と定義していただけることを、最大の目標としていきたいと考えます。

プログラムの概要

こころリワークは、週5日、月曜日から金曜日の午前および午後に、各3時間、計6時間実施されます。プログラムは、曜日、時間帯ごとの11の内容(集団認知行動療法、ストレスマネジメント、内省プログラム等)で構成されています。

午前は主に「ストレス対処技術」獲得のプログラム、午後は主に「活動性改善」を目標としたプログラムになります。

対象となる方

うつ病、適応障害等で仕事復帰を目指している方が対象になります。具体的には

  • ●休職が長期化し、しっかりしたリハビリが重要になった方
  • ●復職後の再燃が反復し、しっかりした再燃予防の対策が必要な方
  • ●復職に必要な外出や生活リズムの安定に課題がある方

のほか

  • ●できるだけ短期間で、再燃予防の準備をしつつ復職を希望する方
  • ●休職中に、考えのくせや対人関係などを見つめ直し再燃予防を図りたい方
  • ●退職後短期間で、再燃予防に注意しつつ再就職を目指す方

などが対象になります。

なお、現段階では、「当院受診中」の方が対象になります。(包括的なリハビリの観点から、他院通院中の方は当院への転院が原則必要になります)また、離職期間の長い方、就職経験のない方に関しては、より時間をかけたプログラムのある「就労移行支援事業所」の活用をお勧めいたします。

こころリワークの目標

①スムーズな状態改善と復職
休職の中期以降は、薬物療法に加えて、段階的なリハビリが、復職を目指すうえで重要になります。定期的にプログラムに参加することで、生活リズムの獲得と維持、負荷への耐性の獲得などを行い、復職に耐えられる状態のスムーズな獲得を目指します。
②再燃予防、ストレス耐性の獲得
プログラム内容自体は、むしろ復職後の再燃予防に大きな意味を持ちます。当プログラムでは、ストレスに効果的に対処していくために、思考・行動・対人交流など、多面的にストレス対策の方法論を学んでいきます。それを仕事という実践の場で活用することで、ストレスにより柔軟に対処できる状態を確立することを目指します。
③仕事への動機の維持と改善
復帰はしたものの、仕事への動機をなかなか持てなかったり、「うつでの休職」の経験から、自信を失ってしまっている方もこれまでいらっしゃいました。もちろん、復職と再燃予防が直接的な目標なのですが、より根本的な目標は、この「うつになり休職した」という経験を、より前向きな形で未来につなげてもらうことにあると考えます。プログラムでのグループ活動を通じ、交流・思考・ストレス対処・過去の振り返りなど、様々な角度から仕事と自分の関わりを振り返り、「うつで休職したからこそ見えた何か」を、その人なりの何かを、つかんでもらえることが、このプログラムの根源的な目標と考えます。

こころリワークの参加について

当院受診中の方については、主治医と相談のうえ、参加の有無について決定していきます。(集団プログラムには相性があるため、その点も含め検討します)これまで他院受診中の方は、まず当院外来を受診し、その際に当院担当医と相談のうえ、参加を決めていくことになります(集団全体との相性、相互作用を踏まえ、参加の適性につき、当院で検討することがあります。ご理解のほど、お願い申し上げます)

費用について

健康保険の適応になります。半日プログラムの場合は3割負担で約1200円(1割負担で400円弱)、全日プログラムの場合は3割負担で約2150円(1割負担で700円強)が目安です。回数が比較的多くなることが想定されるため、自立支援医療を希望される方は、主治医にご相談ください。なお、全日プログラム参加の方には昼食が提供されます。

具体的な「こころリワーク」の活用法

基本的には、はじめは少ない回数、時間から始めていき、慣れていき次第、徐々に回数・頻度を増やしていき、復帰に備えていきます。

状態や課題によって、望まれる参加の仕方が変わってくると思われます。代表的な例を、以下に示します。

(例1)休んでも、だるさ等活動しにくい状態が残る場合

この場合は、「負荷に耐えられる状態」を徐々に作っていくことが重要になり、そのための「段階的な活動性の改善のリハビリ」が大事です。

そのため、まずは午後のプログラム(活動性改善)に参加し、慣らしつつ徐々に頻度を増やして週5回にしていきます。その後、復帰を目指して午前のプログラムも追加していき(週5回全日)、復帰準備性の獲得を図ります。

(例2)仕事のストレスへの反応の要素が強い場合

この場合は、休職後早期に状態が改善しますが、復帰後のストレスに備えての再燃予防・ストレス対処技術の獲得が重要になります。

そのため、早期(休職1か月ほど)から午前のプログラム(ストレス対処技術)にできるだけ週5回参加し、復帰1か月前を目安に、午後のプログラムを追加し(週5回全日)、復帰準備性も形成していき、スムーズな復帰と再燃予防を目指します。

(例3)再燃・休職が複数回になっている場合

この場合は、再燃予防のために細心の注意が必要であり、また、職場からも客観的な「復帰準備性」の獲得を求められます。

そのため、慣れ次第、週5回、全日のプログラムを継続していき、活動性・ストレス対処技術の双方から「復帰準備性」を獲得することが重要です。

具体的なプログラムについて

具体的には、以下のような11のプログラムで構成されます。午前のプログラムは各プログラムごと、週1回、8回で1クールですが、1回ごとに完結しており、途中参加が可能です。(途中で終わる場合は、資料等でフォローの方向です)

<午前:ストレス対処技術獲得のプログラム>

①集団認知行動療法

薬物療法と並び、うつ病の改善、再燃予防に効果があるとされる「認知行動療法」を集団で学習します。「考え(認知)」や「行動」のくせが、ストレスのたまりやすさやうつ状態の発症、再燃のリスクとなる場合があります。そのくせを見つめなおしつつ、そこを調整することで、症状の改善、再燃予防を目指します。

②ストレスマネジメント

ストレスのかかり方、・蓄積とうつ病・適応障害などの精神不調・症状は大きく連動します。逆に言えば、ストレスへの適切な対処(ストレスマネジメント)が身につけられれば、症状改善、再燃予防に大きな効果を持ちます。ここでは、自分のストレス対処の方法や弱点を振り返り、改善を繰り返していくことで、復職後ストレスがかかっても再燃しにくい状態の獲得を目指します。

③内省プログラム

復職する場合、しばしば同じ職場に戻ることになり、仮に転職や配置転換をしても類似した場面に出会うことはしばしばあります。そのさい不調を繰り返さずやっていくために、以前の振り返りを行っていきます。また、自らの長所・短所を振り返り、復職後にどう長所を生かし、短所をカバーするかを考えていくことで、再燃予防と仕事への動機づけを図ります。

④コミュニケーションスキルアップ(疾患教室と隔週で実施)

多くの仕事において、対人交流は避けられない部分になりますが、その身につけ方やくせは様々です。そしてその技術やくせが、ストレスの蓄積や再燃のしやすさに大きな影響を与えます。とかく「センス」等で語られがちな分野ですが、振り返りと、反復練習でカバーできる部分は多いと我々は考えます。ここでは適切な自己主張(アサーション)や「聞く・考える・伝える」の3段階の技術などを練習し、対人交流の技術を改善し、対人ストレスでの再燃の予防や、対人面に関わる自己肯定感の獲得を目指します。

⑤疾患教室(コミュニケーションスキルアップと隔週で実施)

うつ病や適応障害といった、自分のころの不調について知ることは、その対策を日々行っていくために有効です。このプログラムでは、うつ病・適応障害について、概念や治療法から始まり、周りへの説明法や社会資源など、周辺の事項も含めて学んでいきます。

⑥生活習慣改善プログラム

こころの状態とからだの状態は、特に各種臓器に走っている「自律神経」を通じて密接に結びついている面があります。そのため、生活リズムや食事など、生活習慣をより良い方向に持っていくことで、間接的にこころの状態の改善も図っていくことが期待されます。このプログラムでは、生活習慣を改善するための様々なコツについて扱っていきます。

<午後:活動性改善のプログラム>

①Laughプログラム

うつ状態になると、物事の辛い面に目が行きやすくなり、楽しめることを忘れてしまい、悪循環にはまることがあります。そのため、認知行動療法の一つである「行動活性化」においては、やりがいのある行動、楽しめる行動を増やすことで、うつ状態の改善を図っていきます。このプログラムでは、楽しめることをすることに集中して、忘れかけていた「楽しさ」などの感情を思い出していくことを試みていきます。

②運動理論プログラム

活動を増やす「行動活性化」は、症状改善、復帰準備性のほか、復職後の再燃予防にとっても重要です。そのために適度な運動はうってつけです。しかし一方で、運動に関して苦手意識があったり、急に動きすぎる等でかえって不調になったるする方もいらっしゃるかも知れません。

このプログラムでは、運動の持つ本質的な意義と、実際にどのようにすれば継続して、無理なく運動を生活に取り入れられるかを学んでいきます。この学習を通じて、(競争ではなく)自らの心身の健康維持のために継続的な運動を取り入れていくことを目標とします。

③運動プログラム

「運動理論プログラム」の説明であるように、習慣的な運動が大事だとわかっていても、なかなか一人で実際に行うことは、特にうつ状態で本調子でないときは、なかなか難しい場合もあるかと思われます。

それであれば、みんなで行っていきましょう。

このプログラムでは、行動活性化の一環として、実際に様々な運動をグループで行っていきます。運動理論プログラムで学んだことを片隅に置きながら行っていくと、相乗効果が期待できるでしょう。

④オフィスワーク

当院のプログラムでは、活動性やストレス対処など、「基本」にこだわったプログラムを重視していますが、やはり会社への復帰を考える場合には、仕事場面に類似した技術の練習も同様に重要です。

このプログラムでは、グループごとにテーマを決め、内容を調べたり、内容をまとめて発表するといった仕事類似の活動を実際に行います。その中で、頭を使う活動に慣らしていくとともに、集団で話すことなど、仕事の中での自分の在り方を見つめ直すヒントにしていくことを目標とします。

⑤個別作業

当院のプログラムでは、対人交流からの振り返り、対人面のトレーニングに比較的比重を置いています。しかし一方で、その人ごとに、個別の課題がいろいろあり、その改善を図っていく取組みもまた重要です。

このプログラムでは、うつ状態でダメージを受けがちな作業能力の回復など、個人ごとに、改善のために課題になる点を見つけ、その改善のためのトレーニングを個別に行っていきます。また、必要時はスタッフとの面談を行い、現状の把握と、今後に向けての目標設定などを行っていきます。