躁うつ病(双極性障害):気分の波といかにつきあうか。府中市の心療内科・精神科、府中こころ診療所

心療内科・府中

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医学的な概略

 ある時は落ち込み、ある時は気分が高ぶりすぎる、といった具合に、周期的に気分の波が大きく出現し、それによって社会生活に支障をきたす疾患。脳内物質レベルでの変化が大きいため、治療、再燃予防ともに薬物療法が柱になる。再燃を防げれば生活能力のダメージは少ない一方で、特に躁状態になると誤解を招き人間関係や金銭面がこじれてしまうことも少なくないため、長期的な生活を考えると再燃予防が非常に重要といえる。

症状

次のような「そう状態」と「うつ状態」が繰り返される。

① そう状態

一般の範囲内を超えて、度を超えて「気分が高ぶった」状態になる。軽度の場合は「気分が爽快になる」「アイデアがいろいろ浮かぶ」など、少なくとも自覚的には気分がいい状態になる。しかし重度になると、「大金を突発的に使う」「眠らず動き続けてしまう」「他者を大声で怒鳴り続ける」など、社会的、経済的に問題となる行動が繰り返されるようになる。その結果周囲が疲弊したり、実際にトラブルに至ってしまう場合も見られる。(なお、社会的トラブルまでは引き起こさない程度のそう状態を「軽躁状態」という)

② うつ状態

うつ病と同様のうつ状態に至る場合がある。(一般には、躁状態の期間より、うつ状態の期間のほうが長い)抗うつ薬が効きにくいのが特徴。

③ 混合状態

時として、「自分はすごい(そう状態)けども体のことが不安で仕方ない(うつ状態)」といった具合に、そう、うつ双方の状態が混じった状態になることがある。この状態は危険が強く、早めの対処が必要。

原因

今のところは不明だが、「脳内物質のバランスが崩れる」ことが大きな要素になっており、うつ病とは違うメカニズムが推測されている。

診断

そう状態およびうつ状態を1回以上ずつ経験することで診断されます。なお、躁状態が1回でもあると双極性障害Ⅰ型、軽躁状態のみ(うつ状態の強さは問わない)の場合は双極性障害Ⅱ型と分類されます。

鑑別疾患

① うつ病

特に双極性障害Ⅱ型の場合、軽躁状態が目立たず、かつうつ状態が目立つ場合が多いため、「うつ病」と診断されることがあります。抗うつ薬が無効だったり使用後そう状態になってしまう場合は積極的に双極性障害を考え、かつて軽躁を思わせる出来事はなかったかなど詳細な面接を行う等して診断につなげます。

② パーソナリティ障害

躁状態のタイプによっては、他者に批判的になったり情緒不安定になるなど、パーソナリティ障害と似た症状が目立つ場合があります。この場合「気分と症状が一致しているか」に着目します。そう状態・軽躁状態のときのみ上記の症状が出ているとしたら、双極性障害を積極的に疑います。

③ 統合失調症

躁状態、もしくはうつ状態の重症時には、幻覚が見えたり、「自分は首相の一族だ(誇大妄想)」「自分はごみ同然だ(微小妄想)」などの妄想が出現し、混乱した状態になるなど、統合失調症の急性期と似た状態になることがあります。この場合も、「気分と症状が一致しているか」に着目し、症状と気分の変化を詳細に見ていくこと等から診断を確定していきます。

治療

治療は、急性期(躁状態・うつ状態)の治療と、再燃予防(安定期)の治療に分かれます。ただし、脳内物質の乱れが影響するため薬なしでは再燃予防が困難で、かつ再燃のダメージが大きいため、薬の治療自体は中止せず継続することが必要です。

①	急性期(躁状態)の治療

(薬物療法)

興奮を抑えるための薬(抗精神病薬)をおもに使い、気分の波を抑える薬(気分安定薬)を原則併用します。抗精神病薬が即効性があるため、可能ならコントロール困難になる前(軽躁状態)から抗精神病薬を開始し、重症化の予防と状態の改善に努めます。

(休養)

軽躁状態・躁状態は、「脳がオーバーヒートした状態」といえ、刺激に非常に敏感になり、刺激→興奮→悪化の悪循環になりやすくなっています。そのため、(動きたいけれども)あえて休んで、悪循環を断つことが有効です。

②	急性期(うつ状態)の治療

(薬物療法)

一般のうつ病に使う抗うつ薬は、効果の乏しさや躁状態になる危険から、少なくとも単剤では使いません。代わりに、気分安定薬(ラミクタールなど)を使用し、不安や焦燥感が強い場合は一時的に抗精神病薬を併用します。

(休養)

症状が重い時は、考えすぎる→さらに悪化する悪循環になっているため、まず頭をしっかり休ませるために休養します。 なるべくは家(外来)で治療して悪化防止に努めたいところですが、他者への危険(躁状態)、自殺・自傷の恐れ(うつ状態)が差し迫っている場合は、安全確保、しっかり休養できる観葉での治療のため入院が必要になることがあります。

③	安定期の治療(再燃予防)

治療をしっかり行えると、急性期の状態の多くはしばらくすると収まってきます。その後は、いかに再燃を防ぐか、そのために以下に治療を続け、自分の疾患の特徴を知り、自分で自分の病状をうまく整えていくかが、非常に重要になります。

(薬物療法)

再燃予防のための薬物療法の継続が必要です。主には、1-2種類の気分安定薬(リチウム、バルプロ酸など)での治療を継続します。中断すると重度の再燃が起こる危険が非常に強く、注意が必要です。 そして、長くこの病気と付き合うために、次のような心理的な働きかけが重要と考えます。

(行動の調整)

安定していても、多少の気分のぶれは訪れます。そこを、生活を調整して未然に整えることが非常に重要です。基本は、「あえて逆をすること」具体的には、
●うつ気味なら→(おっくうだが)あえて動いてみる
●そう気味なら→(動きたいが)あえて休養する
ことが有効です。

(病気について学ぶ)

「なぜ治療を続けるのか」期間が長くなるほど、こうした葛藤が出てくるのは自然なことです。再燃予防は効果が目に見えにくいからこそ、自分で病気のことを勉強し、「なぜ治療を続けることが必要か」理解しておくことが有効です。

(病気を受け入れる)

「なぜ自分だけが」という葛藤は、やはり自然に出てきます。葛藤が強まりすぎると「いっそ治療をやめようか」となってしまいがちです。難しい課題ですが「なぜこうなった」との過去思考から、「これからどうするか、何ができるか」との現在・未来志向に、移していくことが、その後の病状安定、生きがいの発見につながっていくと思います。そのために、徐々にでも「今、この疾患を持っている」ことを受け入れていくことが課題です。

(慢性的な不全感を越える)

安定期の状態は、躁でもうつでもない状態か、ややうつ気味の状態です。すくなくとも軽躁状態の時のような爽快感や全能感はありません。一度軽躁状態を経験してしまうと、どうしてもその時と今を比べてしまうことは、よく起こってきます。その結果、大きく落ち込んでうつに至ったり、「軽躁までなら大丈夫だろう」と薬を中断してしまう危険が出てきます。(実際、一度軽躁状態になると、その後躁状態になることを止めるのは困難です)ここを越えるには、「病気を知る」「病気を受け入れる」に加え、「生きる支えを見つける」ことが大事です。たとえば家族が一番大事として、家族のために今治療をどうするか、葛藤をどうするか。ぶれる時ほど、支えを思い出し、自問自答することが大きな力になります。  

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