不登校:学校に行けない、発達障害合併の確認や精神科的治療:心療内科・精神科の府中こころ診療所

心療内科・府中

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10代のこころを考えるうえで、「不登校」は大きな課題です。今現在の苦悩もさることながら、長期化した場合の心理的、社会的影響や、その結果としての引きこもりへの移行のリスク等を踏まえると、できるだけ早い段階での解決への取り組みが望まれます。不登校の原因、誘因は多岐にわたりますが、適応障害(ストレス反応)、精神疾患(うつ病等)、知的障害、発達障害といった「こころの不調」が影響している場合も少なくなく、その場合に心療内科・精神科での診断・見立て等が重要になります。

不登校とは   
理由を問わず「一定期間通学しない状態が続いていること」を指します。この言葉自体はご本人の心の状態や不調の原因等を定義していないため、「自分の意思で学校に行かない」人から、「重度のうつ病で学校に行こうとすること自体が危険な」人まで、非常に幅広い人たちが含まれることになります。原因や状態、環境によって、取るべき解決策は大きく異なってくるため、その見立て、診断(必要時)等を行っていくことが重要です。

学校に行かない、いけない   
見立ての第一歩として、「学校に行かない(意思)」なのか、「学校に行けない(身体症状など)」なのか、を見極めることが重要になります。   

<学校に行けない例>   
●朝起きられない(起立性調節障害)   
●夜眠れなくなり、朝に不調   
●学校の準備の途中で動けなくなる   
●学校の準備、登校で体の症状(吐き気など)が出る   

「学校に行かない」場合、その理由は本人の中にあるため、まずはその理由や状況を話し合うことなどから始めることになるでしょう。一方で、「学校に行けない」状態が発生している場合は、ストレス反応も含めた精神・身体症状が出現していることが推測されるため、医療的な対応も検討することになるでしょう。   

不登校の要因   
不登校の要因は多岐にわたりますが、対応の方向性から分類すると、「ストレス反応」「発達障害・知的障害」「精神疾患(うつ病など)」の3つになります。   

不登校の要因①ストレス反応   
不登校の状態にいたる原因の多くを「ストレス反応(適応障害)」が占めます。とはいえ、本人にとってどのような状態や環境がストレスになっているか、本人のストレス対処の特性はどうかなど、人によってその状況は千差万別です。ストレスの要素を、「外部環境」「(個人の)ストレスの感じやすさ」「対人関係でのストレス」の3つに分けると、分類しやすくなります。以下に例を示します。   

<外部環境のストレスの例>   
●学校全体の雰囲気からのストレス   
●クラスの人間関係でのストレス(いじめ含む)   
●先生との関係でのストレス   
●部活の人間関係のストレス   
●家庭環境でのストレス   
●受験関連のストレス   

<ストレスの感じやすさの例>   
●対人不安の強さ   
●細かいことが気になりやすい   
●ストレス対処法が少ない   
●考えすぎて悪循環にはまりやすい   
●生活リズムが乱れている   

<対人関係でのストレスの例>   
●同級生(個人)との間でのストレス   
●対人関係で我慢してしまう   
●対人関係を広げ過ぎて、対応しきれない   
●よく同級生などに利用されて、嫌な思いをしてしまう   
●場の空気を読めず、孤立してしまう   
●衝動的に発言などしてしまい、友人が減っていく   
●親に萎縮してしまい、悩みを話せない   

どのストレスが主かによって、有効な対策が変わってきます。大まかにいうと、以下のようになりますが、実際は複合することが多くなます。   

<主な対策>   
●外部環境が主体→環境の調整、問題解決を試みる   
●ストレスの感じやすさが主体→認知行動療法など、考えや行動の調整   
●対人関係ストレスが主体→対人面の技術の練習   

ここで重要なのが、「背景に発達障害・知的障害や、精神疾患がないか」を見極める事です。こうした、背景の障害や疾患がある場合は、ストレスの対処のほか、傾向や疾患の精査、対策や治療が重要になってきます。   

不登校の要因②発達障害(ADHD、自閉スペクトラム)、知的障害   

不登校に至る背景として、発達障害や知的障害の存在が隠れていることが少なくありません。これらの障害が背景にあることで、対人面や外部環境からのストレスが多くなったり、対処が難しくなり、ストレス反応が出るリスクが強くなります。具体的には、次のような特徴があります。   

<注意欠陥多動性障害(ADHD)>   
注意の障害、多動傾向、衝動性を主な特徴とします。注意の障害のため授業に集中できなかったり、遅刻・ミスが増える等して、学校でのルールを守りにくく、ストレスが増えます。また、衝動性のため、思いついたことを言ってしまう等から、同級生や先生との人間関係が悪化し、ストレスが溜まってしまうことがあります。そして、ストレスへの反応が(衝動性などから)強いため、ストレスの結果情動不安定や自律神経症状の出現に至り、登校できなくなることがあります。   

<自閉症スペクトラム(ASD)>   
対人交流や社会性の障害、こだわりの障害を主な特徴とします。対人的な交流が苦手で、相手の気持ちを読み取りにくいため、同級生との関係がうまくいかず、時にいじめにあうこともあり、強いストレスがかかることがあります。また、こだわりの一方で、状況に合わせての柔軟な反応が難しいため、学校での様々な場面や課題に対応しにくく、ストレスがかかります。そして、嫌な出来事があった場合の気分転換・ストレス対処が難しいため、慢性的なストレス状態に至り、その結果精神、身体的な不調をきたして登校できなくなることがあります。   

<知的障害>   
重度の知的障害は幼少期に判明しますが、軽度の場合は発見が遅れる場合があります。その場合、学年が進むにつれ、複雑化する勉強や対人関係に次第についていきにくくなり、学校生活でのストレスが増えていきます。そして、ストレス対処の方法論を構築することが難しく、そのために、ストレス状況が持続し、精神、身体的な不調をきたして登校できなくなることがあります。   

この場合に重要なのは、早い段階で発達障害・知的障害の可能性を検討し、精査して診断を確定することです。診断の確定、生活での重症度の特定ができてくれば、そのために必要な援助・環境調整を検討していくことができますし、放課後等デイサービスなどの療育援助を受けることも可能になります。また、ADHDの場合は有効な薬があり、その他の障害の場合も、不安・うつなどの二次障害に薬が有効な場合があります。   

不登校の要因③精神疾患(うつ病、統合失調症など)   
たとえば、家で休んでいても落ち込みが続いていたり、一人で話しているなど、ストレス反応のみでは説明がつかない精神状態になることがあります。うつ病、躁うつ病(双極性障害)、統合失調症などのこころの病は、10代に発症することがあり、その症状や前触れ(前駆症状)のために不登校になることがあります。この場合は環境調整のみでは解決が難しく、心療内科・精神科を受診、診断を受けて、治療を行うことが重要です。   

不登校の経過について   
典型的には、細かい定義の違いはありますが、おおむね以下のような経過を取るといわれています。   
第1期 前駆症状期(身体の不調などがではじめる)   
第2期 不登校初発期(不登校が始まる)   
第3期 連続的不登校への移行期(不登校が持続、情動・身体不安定)   
第4期 閉じこもり期(引きこもり、昼夜逆転、ネットに没頭など)   
第5期 家庭内適応期(生活リズムが戻り、家では安定する)   
第6期 回復初期(徐々に外出など、長時間は疲弊する)   
第7期 社会適応開始期(通学などを段階的に再開していく)   

途中までは不調が持続・悪化して経過するが、その後徐々に改善に向かっていく流れであり、このモデルをもって、ご家族には「焦らず、じっくり見守る」ことが推奨されることが見られます。ただし、原因や環境、問題解決状況、本人の特性などによって経過も大きく異なってくるため、必ずしも上記の段階を取るとは限りません。そのため、上記はあくまで参考として考えていただくことが望ましいのではないか、と考えます。   

解決のために①正確な診断、診立て   
まずは、その人の不登校の要因や本人の適性など、ご本人及び環境面の診断および見立てを行うことが重要になります。特に、背景に発達障害やその傾向があるかどうかは、今後の予想や、環境調整、療育を行っていくために非常に重要であり、実際の診断のためには心療内科や(児童)精神科での診察や検査等が必要になります。   

解決のために②環境調整   
学校との相性や特定のストレスなど、外部環境の影響が強い場合は、その解決・調整を図ることで、早期解決を行える場合があります。また、スクールカウンセラーや教育センターなど、相談できる関係機関が複数あるため、そうしたサポートを用いながら、ストレス対処法なども含め、整理していくことも有効な場合があるでしょう。そして、背景に発達障害や知的障害がある場合は、特別支援の導入や、放課後等デイサービスなどのサポートの導入など、サポートのための環境調整によって、改善を図ることができるでしょう。   

解決のために③精神科的治療   
うつ病や統合失調症などのこころの病がある場合は、薬物療法等の精神科的治療の継続が必要になります。また、発達障害のうちADHD(注意欠陥多動性障害)の場合は、症状の改善に有効な薬があるため、同様に精神科的治療により改善を図れることがあります。また、自閉スペクトラム障害や知的障害、もしくは適応障害の場合も、不安、不眠、うつなどの症状に対して、精神科的治療が有効になることがあります。   

解決のために④生活面の対策   
不登校が長期になった場合、「学校でのトレーニングを長期行えなかった」状態となり、復帰を目指したときに「勉強についていけない」「体力が持たない」等の理由で、復帰がうまくいかないことがあります。この対策としては、不登校の時期も(特に一定の改善があったときには)、心身の状態を保つことが重要です。   
学校の機能を大まかに定義すると、次の3つになります。   

①トレーニング機能(勉強・運動等)   
日々、勉強を継続することで、徐々に複雑な内容にも対応できるようになります。また、体育や図工など、運動(体力)や手先の技術等を訓練することも並行し、総合的にその子の成長・進歩を導いていきます。   

②同年代、集団との交流技術訓練   
学校は同時に、同級生との集団生活・対人交流の場であり、校則や時間割などの社会ルールに従うことに慣らす練習の場でもあります。その中で、同級生との交流技術や、集団の中での適したふるまい方、集団と個性の折り合いのつけ方等を学んでいきます。   

③生活リズムの維持   
また、学校には、生活リズムを守るための機能もあります。日中に勉強や運動などの活動を定期的に行い、夕方以降に休養することで、習慣レベルで生活リズムを維持していくことが可能になります。   

状態が許す範囲でになりますが、不登校の場合でも、日中にできる範囲で運動や勉強は行うようにして、話せる相手の交流は大事にしながら、生活リズムを保てると、復帰後がスムーズに行いやすくなります。   

中学まで(義務教育)での注意点   
中学までは義務教育の時期です。そのため、一般的には、欠席が続いても卒業できるため、欠席日数は気にしすぎず、状態を戻すことに集中することが可能です。一方で、高校以降と比べると、学校は原則一つに決まっているため、学校環境に不適応が起こった場合の環境調整に難しさがあります。適応指導教室(教育センター内)やフリースクール(最近では、出席日数に認められる場合もあるようです)を活用することが現実的ですが、その通学も難しいことがあります。その場合は家での生活になりますが、先ほどの日中の活動や交流の維持や生活リズムの確保に注意を払うことが必要でしょう。   

なお、高校は、後述のように、チャレンジスクールや通信制高校など、近年、不登校の方が対応しやすい選択肢が増えているため、その点も参考に、進学先を検討することになります。   

高校生の時の注意点   
高校は義務教育ではありません。中学と違い、一般の高校のほかに、通信制高校やチャレンジスクール等、柔軟に対応できる形の高校があることが特徴であり、またこの時期には、アルバイト等で、学校以外の人間関係の構築も可能になります。その点で環境不適応への対策は取りやすい傾向があります。   

しかし一方で、登校日数と進級の問題が大きくなります。中学までと違い、不登校で出席日数が足りなくなると、「進級できない」状態になってしまいます。留年以外にも通信制高校等への転入、高卒認定試験の活用など対策はあるのですが、それぞれ弱点もあり、影響は避けられません。そのため、出席日数や進級のことを検討しつつ、治療等を行っていくことになります。   

当院でできること   
●診断と見立て、診察と心理検査等   
当院では現在、中学生以上の方の診察を行っています。診察、心理検査等を組み合わせることにより、診断と見立ての提供に努めてまいります。   

●こころの病やADHDへの精神科的治療   
うつ病、統合失調症などのこころの病が疑われる場合、およびADHDの診断があった場合には、そのための精神科的治療(薬物療法等)を継続的に行ってまいります。   

●合併する症状(不安、不眠など)への治療   
いわゆる「こころの病」は否定的でも不安や不眠などの精神症状がある場合、自閉症スペクトラムに二次障害(うつ、対人不安など)を合併している場合には、その治療を行い、状態の改善に努めます。   

当院では難しいこと   
●学校や家庭の環境調整   
学校での環境や指導計画などについては、教育機関の範疇となります。また、家庭の問題がある場合には、福祉等の機関が主にかかわることになると思われます。   

●養育環境や経済面の問題   
養育環境や経済面の問題は、確かに精神状態にも影響を及ぼし、不登校の背景となる場合がありますが、これは福祉の面の範疇となります。この対応のために、スクールソーシャルワーカーが近年は配置されており、相談することが有効な場合があると思われます。

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