自律神経失調症:内科等で異常の出ない、こころの影響する身体不調:心療内科・精神科の府中こころ診療所

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当院を受診される方でも、「(内科などで)自律神経失調症と言われました」ということをしばしば聞きます。文脈としては、体の不調で身体科(内科、耳鼻科など)を受診し、検査等で異常がでなかった場合、ということが多いようです。一方で、定義があいまいな面もあり、どう考えていけばいいのか、というご質問も受けます。ここでは、いくつかの角度からの自律神経失調症の定義と、治療についてみていきます。   

自律神経失調症:定義1   
文字通りの定義としては、体のバランスを取る「自律神経」の「失調(バランスの崩れ)」を指します。自律神経とは、脳から胃・腸などの様々な内臓等につながっている神経で、運動神経(筋肉などを動かす)のように自らの意思で直接動かすことが難しいものです。自律神経には、次の2つがあり、これが普段はバランスを取って、スムーズに内臓等が活動しています。   
●交感神経:緊張、活動をつかさどる神経   
●副交感神経:リラックス、休息をつかさどる神経      

ストレス等により、この2つの神経のバランスが崩れると(大半は、不安緊張と連動する、交感神経優位の状態です)関係している様々な臓器の機能の不調が起こり、様々な症状が出現します。これが自律神経失調症です。   
このモデルは理解しやすいのですが、指すものが大きすぎて具体性を欠くこと、また、内科的疾患のように検査等で直接特定できないことから、賛否両論あるモデルです。  
ただし、ストレス蓄積→緊張の持続→身体症状(自律神経失調症)の流れには一定の説得力があり、改善の対策を模索していくには有用と考えます。   

自律神経失調症とは:定義2   
この定義とは別に、内科や耳鼻科等で、「自律神経失調症」と診断されることがあります。具体的には「症状はあるが、検査で異常がない等、原因の身体疾患を特定できない場合」に診断されることがあります。症状はあるが、その原因となる体の病気がないため、(検査等で異常の出ない)自律神経の不調によるものと推測する、というロジックです。  
●頻度は多いとは言いにくいが、隠れた身体疾患の存在がありうること  
●いわゆる「消去法」での診断であり、原因、対策ともわかりにくい  
ことから、この定義には否定的見解もあります。 しかし一方で、身体不調→検査→異常なし→再度検査→異常なし、のループにはまってしまう時、際限なく原因を探す代わりに、後述のように「心理的な要因、対策アプローチもあるのでは」と視点を変えるためには、ヒントになりうると考えます。   

自律神経失調症とは3  
ここで視点を変えると、うつ病や適応障害など、こころの病の症状の一つとして、「自律神経症状」があります。うつ病等では、不安や緊張の症状が出ることが多く、これは結果として交感神経優位の状態を作り出し、続くと耳鳴りや胃痛などの身体的な「自律神経症状」をもたらします。  
また、同じくよく出現する不眠の持続でも、リラックスできず緊張が続くようになり、交感神経優位から自律神経症状をもたらします。  
「仮面うつ病」の呼称で最近知られるように、人によっては落ち込みなどの精神的な症状より、様々な体の不調(自律神経症状)が強く目立つ人もいます。その場合は、「自律神経失調症」の診断をきっかけとして、こころの診察を行うことから、診断、治療、改善につながることがあります。   

自律神経失調症:代表的な症状   
自律神経は、幅広い臓器等をコントロールしているため、その失調においては、実に様々な症状が出ることがあります。列挙すると膨大になるため、ここでは、代表的な症状の例をいくつか紹介します。(以下、カッコ内は、関連する身体科)なお、パニック症などでの「パニック発作」は、別名「自律神経発作」ともいい、急に、下記のような自律神経症状が強く出ることが特徴です。  

●頭痛(神経内科、脳神経外科)
画像検査等で特に異常所見が出てこない慢性的な頭痛の場合、自律神経失調症の可能性があります。特にストレスと関連が強い場合は、その疑いが強くなります。  

●めまい、ふらつき、耳鳴り(耳鼻咽喉科)  
ストレスと強く関連するめまいの中で、検査等で異常がない場合、可能性を想定します。また、メニエール病、突発性難聴など、自律神経失調症とは厳密には言いにくいものでも、ストレスの影響が強く示唆されるものもあります。  

●息苦しさ、過呼吸(呼吸器内科)  
緊張、他の身体症状(手のしびれ等)を伴う息苦しさや過呼吸において、検査で異常がない場合(むしろ過換気になっていることも含む)、特に反復し、ストレスと連動する場合は、自律神経の不調の可能性を想定します。  

●胃の痛み、異物感等(消化器内科)  
痛みや異物感などの不調が続くが、内視鏡などでも異常が見つからない場合、「機能性ディスペプシア」の診断がつくことがありますが、これは自律神経失調症の腹部症状と類似と考えられます。また、胃・十二指腸潰瘍や逆流性食道炎が治療しても反復、持続する場合、ストレスが大きく関与する場合があります。  

●下痢、便秘の反復、腹痛(消化器内科)  
下痢や便秘の(特にストレスと連動した)反復があり、かつ内視鏡等の検査でも異常がなく、内科的治療でも効果が薄い場合、「過敏性腸症候群」の診断がつくことがありますが、これは自律神経症状の腹部(腸)の症状と類似と考えられます。  

●体のほてり等、更年期障害と似た症状(婦人科)  
30代までの方で、体のほてりや動悸など、「更年期障害では?」と思われる症状が出た場合は、(ホルモン検査など、婦人科検査での器質因の除外が確定には必要ですが)多くは、自律神経失調症によるものです。逆に言えば、更年期障害の症状と、自律神経失調症の症状では、オーバーラップする点が多くあります。なお、40-50代の場合は、双方の可能性が(合併も含め)考えられるため、まず婦人科で、状況をしっかりと把握し、その結果精神要素が強いと思われたときに、心理的アプローチを検討することが望ましいと考えます。  

●朝起きられない、学校に行こうとすると吐き気など(小児科)  
朝、もしくは登校前に起きづらい、吐き気などの身体症状が出る場合、かつ検査などで器質的なものが否定的の場合、自律神経の不調の可能性も想定します。最近言及されることの多い「起立性調節障害」も、メカニズムとしては自律神経失調症の一種と考えられます。登校困難の原因ともなり、器質因否定後、改善のためには心理的観点からのアプローチが有効な場合があります。   

二つの側面  
自律神経失調症を細かくタイプ分類すると「本態性」「神経症型」「心身症型」「抑うつ型」の4つになりますが、うち後者3つは「ストレス・精神不調の影響が強い」ことを示唆します。もう少し大きくまとめると、自律神経失調症の起こりやすさには、次の2つが関連します。  

●自律神経の不調の起こりやすさ(人による違い)  
人によって、自律神経の不調の起きやすさに違いがあります。幼少期から、体の原因が不明の身体不調が起こりやすかった方は、不調が起きやすい傾向を示唆します。人によっては、生活習慣や体力面などの改善によって、不調が起ききにくくなる場合があり、取り組めることとして重要です。一方、努力を行っても不調が起きやすい方もいますが、不調が起きたら、早めにストレス対策に取り組むなど、影響を減らすためにできる取り組みもあります。  

●ストレスの影響  
ストレスを強く自覚する、そしてそれが持続することが、自律神経症状の発生、悪化要因になります。そして、ストレスの自覚の強さには、ストレスそのもののほかに、「環境との相性」「対人関係」「ストレス対処能力」「健康状態」「ストレスへの考えのパターン」「こころの病の合併の有無」など、多くの側面が影響します。改善を目指す際には、どの要素が強く影響しているかを見定めることが重要です。   

こんな時ストレス等の影響を疑う  
ここまで見ていくと、症状とストレスがあるとすべて「自律神経失調症ではないか」と考えることもあるかもしれません。しかし、各科での身体的疾患のほか、甲状腺機能障害や低血糖など、一見見えにくいものも含めて、体の原因が隠れている可能性は否定できず、少なくとも一般的なものに関しては除外することが重要です。一方で、次のような傾向が見えてきたときは、心理要素が影響している自律神経失調症の可能性が高くなってくるといえるでしょう。  

●様々な診察や検査をしても、身体の異常所見が出てこない  
●症状と、ストレスが強く連動している  
●ストレスを強く感じる状況がある  
●落ち込み、不安などの精神症状と連動が強い  
●様々な症状が入れ替わり生じてきて、固定しない   

自律神経失調症の症状を合併するこころの病  
自律神経失調症の症状がストレスの影響を強く受けるのみでなく、こころの病の症状の一部として、自律神経の症状が出ることがあります。代表的な例は、以下のようになります。  

●うつ病  
うつ病の方で、不安・焦りが強く出る方の場合、交感神経の緊張を引き起こし、自律神経症状が出やすくなります。また、不眠は自律神経失調の悪化要因でもあり、自律神経失調が不眠の原因にもなります。  

●適応障害  
うつ病と類似ですが、よりストレスの自覚の要素が強いといえます。治療としても、ストレス対策の比重が大きくなります。  

●神経症(不安障害など)  
不安・緊張が起こりやすく、ストレスに敏感、ストレスに反応しやすい状態を示唆します。緊張が自律神経症状につながるため、リラックス法や、身体状態の把握などが生活面での対策として重要になります。  

●パニック障害  
パニック発作(自律神経発作)において、急性の各種の自律神経症状が精神症状とともに生じます。また、普段の予期不安(+緊張)に伴って、慢性的に自律神経症状が続く場合もあります。薬物療法、行動療法(系統的脱感作法)などで精神状態を改善することが、自律神経症状の改善にもつながります。   

自律神経失調症:治療の方向性  
「これさえやればいい」という標準的治療はないことが現状です。(ただし、もとに「こころの病」があると診断されたときは、その治療が一種の標準的な治療といえます)一方で、前述した  

●ストレス蓄積→緊張(交感神経優位)の持続→自律神経症状   

の流れを振り返ると、治療としては、そこへの対応を組み合わせることが重要と見えてきます。  

①自律神経症状への治療  

痛みに対しての鎮痛薬や、胃の動きの不調への消化機能改善薬など、症状による対応です。一定の効果が期待できる反面、もとにあるストレス等の影響が強いため、効果は部分的となってしまいがちとの印象があります。   

②緊張の持続への治療  

リラクゼーション(深呼吸など)、マインドフルネスなどの方法が、個人差はありますが緊張緩和に一定の効果が期待できます。繰り返すと有効ですが、有効性を上げるには、反復練習で、技術として身につけることが重要になります。  
抗不安薬は、即時的な効果が期待でき、症状がつらい場合には有効ですが、根本解決ではなく、長期連用での依存の問題があるため、これに頼りすぎず、他の方法を並行していくことが重要です。  
抗うつ薬は、社会不安障害、パニック障害での治療に使われるなど、継続することで効果が期待できる面があります。一方、副作用なども含め相性があるので、使用する場合は心療内科・精神科医と相談し、計画的に行う必要があります。  

③ストレスへの対策  

悪化予防も含め、土台として重要になるのが、緊張、自律神経症状の引き金になっているストレスへの対応です。ストレスと言っても、前述のように様々な側面があるため、その人の個性や状況に合わせたものを組み合わせることが重要です。以下の例があります。  

●環境調整  
職場などの環境、労働環境、人間関係などが大きなストレスと自覚されているときは、その環境を変える事(環境調整)が重要になります。転職、配置転換などのほか、業務量の調整や一時的な休職などを行う場合があります。  

●問題解決  
もし、現実的な、大きな問題でストレスを感じている場合は、その問題を、必要なら専門家など他社の助けを借りつつ、解決することが重要です。この場合の解決は、時には、「望ましい解決をする」以外に、「必ずしも望ましくない解決だが、それを受け入れる」ことも含まれるでしょう。  

●認知療法(認知再構成)  
考えのくせによって自分を責め、追い詰めて、ストレスが増えてしまう場合があります。その場合は、自分の考えのパターンを見つめなおし、必要時それを調整していく認知療法(認知再構成)が有効な場合があります。  

●生活リズム改善、行動活性化  
生活リズムや、日々の行動での充実感や楽しさは、ストレスに大きな影響があります。その点を見直し、改善することで、ストレスの改善を見込める場合があります。  

●体調管理  
体調とストレスの影響には、連動があります。運動を取り入れる等してなるべく良好な健康状態・体力等を保つことも、ストレス対策の一つです。  

●対人技術の習得  
対人交流で、ストレスをためてしまう方も多くいらっしゃいます。特に我慢しすぎることは大きなストレスとなるため、(相手を立てつつも)我慢しすぎず主張する「アサーション」等の交流技術を身につけることが、その場合有効です。  

●ストレス発散法の習得  
社会生活ではあ、工夫しても一定のストレスは付きまといます。それをいかに蓄積させないか、そのためにはストレスの発散法の習得が重要です。状況や体調などに左右されないように、様々な自分に合った対処法を身につけることが有効です。  

●現実を感じ取り受け入れる(マインドフルネス・アクセプタンス)  
現状を受け入れられないことで、慢性的にストレスがかかる場合があります。特に、解決できないことを無理に解決しようとし続けると、その傾向が強まります。その場合は、逆転の発想として「現実を受け入れる」ことが重要になります。まずは自分の状態を感じ取り、受け入れることから始め、徐々に、つらさを伴う、現実の受け入れに取り組んでいく方向になるでしょう。   

当院でできる事、できないこと   
当院は心療内科、精神科の診療所です。そのため、背景にストレスやこころの不調(うつ病、神経症など)があった場合の診察、治療、指導等の対応を得意としています。  
一方、内科的な検査は血液検査(一般的な項目)以外は行うことができません。そのため、まずは、内科・耳鼻科・婦人科等で身体的原因がないかを精査したうえで、それが否定的であり、精神・心理的アプローチが重要とされたときに、受診を検討されることをお勧めいたします。  

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