10代のこころー思春期外来、府中こころ診療所

 

大人の方の診察をするときに、必ず、幼少期や学生時代(10代)の時の話を聞くことにしています。なぜなら、10代までをどう生きてきたかの経験が、その後の思考パターンや社会でのあり方に大きな影響を与えているからです。たとえば、今はストレスが重なって重度のうつ状態になったとしても、以前に問題をうまく乗り越えた経験や「何とかなる」との自信があったなら、その「強み」を思い出すことから、回復力を導けることも少なくありません。

一方で、10代までの間にうまくいかなかった失敗体験や、認められなかった不認証体験でいっぱいの場合は、そうした回復力を導きにくくなる。人によっては「どうせ何をやっても駄目だ」との固定的な思考が作られて、それが回復を妨げ、うつなどの不調が慢性化してしまうことも見られます。

  

もちろん、大人になってからでも、強い意志と反復練習の積み重ね等で、そうした「自分を追い詰めるくせ」すら乗り越えられることはありうるでしょう。しかしできることならそうしたくせがついてしまう前に、思考や行動が柔軟で、様々な影響を受けられる機会と時間がある10代のうちに、自分を追い詰めて悪循環にはまりこむかわりに、不器用でも前へ未来へ進んでいける状況を作れたなら、その後が大きく変わってくるのではないでしょうか。

つらさが固定してしまう前に、柔軟に対策できるときに、ご相談いただければと思います。

なぜ10代での介入が重要か?

  

一つ目は「まだ、つらさが固定しておらず、変化できやすい」こと、もう一つには「学校や家族などの環境の要素が強く、自分だけではで変わろうとしにくい」ことが理由として挙げられます。本来は変われやすいが、自分だけではそれがやりにくい。だから、第3者がコーチのような役割で入り、助言等を行うことが重要になります。(スポーツ等と同様です)

  

10代のこころの不調の辛さを一言でいうと、「失敗とあきらめ」だと考えます。発達のかたよりや、学校等での不適応など、原因は様々ですが、失敗体験が、思考の中で大きな比重を占め、それが「どうせやっても無駄」等のあきらめにつながり、改善するエネルギーが奪われ慢性化、固定してしまう。するとそれが学業や仕事などにも影響し、社会の中でも悪循環になり、成人後にも重くのしかかることにもなります。この悪循環から「変わりたいが、自分だけでは変われない」とき、第3者がかかわることが、その後に大きな影響を与えることになりえるでしょう。

また、10代の特性として、こころの不調が、学校生活に大きな影響を与えうることがあります。高校であれば、不登校は留年につながり、留年から孤立、否定的思考につながり、その後引きこもりが慢性化することにもつながりえます。また、学歴や失敗しないことを是とする集団においては、こころの不調の体験が、周囲からの「失敗した」との否定的評価につながる場合もあり得ます。不調が長引いて社会的なダメージが重なり、さらに再起しにくい状態になる前に、しかるべき環境調整も含め、早期に介入できることが望まれます。

10代のこころの不調を3つに分類する

  

児童精神医学の本などを読むと、様々な数多くの病名、病態が記載されています。厳密なことはある意味重要ですが、臨床家として大事なのは、「介入してその相手がどう改善するか」と考えます。そのため、介入方法や意義の違いの点から、次の3つに分類します。

  • ① 適応障害圏(ストレスが主に関与しての不調)
  • ② 発達障害圏(生まれながらの特性、生きづらさに伴っての不調)
  • ③ 精神疾患圏(躁うつ病、統合失調症など、10代で発症する精神疾患)

10代の不調①適応障害圏(ストレスが主に関与しての不調)

実際に相談される方が多く、かつ多くの方が状況次第でなってしまいうるのがこの不調です。学校や家などの人間関係、受験の失敗や葛藤などから、落ち込みや否定的思考・イライラなどの精神症状、または頭痛、腹痛などの身体症状などが発生してきます。発達面の問題や脳の不調などがない分軽症と考えられがちですが、長期化すれば否定的思考や身体不調が固定化し、不登校、ひきこもり、摂食障害などに至ることもあり、早期の対応が重要です。

対策の柱はストレス対策ですが、個人ではストレスと距離を取るなどの対策が行いにくいため、受診して状況を整理して、対策を考えていくことが重要になります。その際、10代特有のこととして、学校との関わりがあります。特に高校では、不登校と進学が関連してくるため、その点も含めた配慮、対策が求められます。

10代の不調②発達障害圏、アスペルガー症候群、注意欠陥多動障害(ADHD)など

  

生まれながらの、考え方や行動のかたよりがある発達障害を持っている場合です。その特性により「生きづらさ」が強く、ともすると同年代で孤立したりいじめにあうなどして、失敗体験、不認証体験が反復し、二次的にうつ状態、否定的思考などが固定化してしまうことがあります(二次障害)。早期対応の意義は、(特性自体の改善よりも)特性に合わせたサポートを行うことで、二次障害を防ぎ、特性はあっても長所を生かし、社会と、その人なりの使い方(仕事、生活等)を確立していくことにあります。

10代の不調③精神疾患圏(統合失調症、躁うつ病など)

10代は、大人の精神疾患(躁うつ病、統合失調症など)が初発しやすい時期でもあります。これらの疾患は、研究により「いかに未治療期間(発症から治療までの期間)」を短くするかが、予後(治療後の症状の安定性や認知機能など)に影響するとされます。そのため、早期に診断し、治療することが重要です。10代の特性として、症状が非典型的で診断が難しいことも多いのですが、その場合はストレス等の対策を取りつつ慎重に経過観察を行い、診断が確定した段階で本格的に治療を行うことになります。

10代のこころ:当院の心がけ

  

10代の方のこころのケアを行うに当たり、当院では次の点を重視しています。

  • ① 薬は必要なものだけ、最小限に
  • ② 各種心理検査による、迅速な診断と見立て
  • ③ 精神保健福祉士による、関係機関との連携

当院の心がけ①くすりは最小限に

多剤、大量療法の危険性は、最近伝えられることが多くなってきていますが、特に10代は発達の途中であり、かつ精神状態への薬の影響も大きいことから、投薬に関してはより慎重に、最小限を心がけています。ADHDに対するストラテラなど、精神医学的に効果が明確に期待できるものや、不登校の脱却に対しての少量の薬剤など必要と判断するものに関しては、理由や副作用、対策などをお伝えしたうえで、慎重に副作用を観察しつつ使用することがあります。

 

当院の心がけ②各種心理検査による、迅速な診断と見立て

10代までの方(児童・思春期)の診療の際、数か月など、予約待ち期間の長さが問題になっています。一方で学校などの現場では、そこまで待つことが難しく、ご本人やご家族が板挟みになってしまうことも少なくありません。当院では、なるべく迅速に初診、心理検査、診断までのプロセスを踏むことで、現場でのお悩みに素早くお答えする所存です。

 

当院の心がけ③精神保健福祉士による連携

  

10代の方の成長には、医療機関のみでなく、学校や教育センター等、様々な機関が関わっています。こころの不調とその対策には心理的、環境的な影響は切り離せないことが多く、その際の状況の把握と連携が重要です。当診療所では、医療と福祉や教育の連携に特化した資格である精神保健福祉士の有資格者が複数おり、スムーズな連携に尽力いたします。

 

受診にあたっての注意点

上記のように、当診療所では、ご本人の悩みと関わりに重きを置く関係上、現段階では原則として中学生以上の方を診察対象といたします。ご理解のほど、お願い申し上げます。